ABCにっき(司法試験受験ブログ)

司法試験合格を目指している受験生のブログです。2019年予備試験合格

まずはTOPからどうぞ。 http://abc-sakana.com/top

0.司法試験・予備試験の論文答練に参加しよう

司法試験・予備試験では、どちらも論文式試験が課されます。
司法試験ではおよそ2倍、予備試験ではおよそ5倍の倍率となる試験で、どちらにおいても対策の中心となっているものです。
出題形式は、特定の事例問題に対して、文章で解答するもので、その試験形式や思考方法に慣れるには、一定の対策が必要であると言われています。


その一つの方法として広く使われているのが、予備校が主催している論文式試験の答練(答案練習会)です。
本番の論文式試験に近い環境で、他の受験生とともに、新作の問題を解くことから、論文式試験対策に有用であるとされています。
効果的に答練を受講することで、試験の合格に近づくかもしれません。
この記事は、論文答練の特徴をまとめ、その受講の要否と受講にあたっての注意点を指摘することを目的としています。



いずれの試験においても、公開の答練として有名なのが伊藤塾のコンプリート論文答練(コンプリ)と辰巳法律研究所のスタンダード論文答練(スタ論)です。
私は、予備試験に最終合格した年に両方の答練を取っていたため、多少なりとも両者の特徴がわかっているつもりです。
そこで、独学等と比較した答練の特徴を指摘する際には、両答練の比較も同時に指摘するようにしています。
項目によっては別ページにまとめているものもあるため、適宜参照してみてください。



論文答練の受講の是非、受講する答練の決定に役立てば何よりです。



(なお、答練としては他にもアガルートアカデミーのものも存在します。こちらも予備試験合格者で受講していた方は一定数いるように思います。ただ、オンライン添削で教室受験がなく他の答練と系統が異なることと、何より私自身が受講をしていなかったことから、比較対象から外しています。アガルート生を中心に根強い人気があり、こちらもいい答練であるように聞いています。)






1.答練の特徴

予備校によって主催されている答練には、演習書等を用いて独学をする場合と比べて、以下の5つの特徴があると言われることが多いように思います。

    • 他人からのコメント・添削を受けられる
    • 相対評価の相場観がわかる
    • 本番に近い環境で練習ができる
    • 値段が安いとは言い難い(奨学生・割引制度がある)
    • 問題作成・解説が予備校によってなされる

答練の特徴に上記のようなものがあることから、これらの点に着目して答練の受講の是非・選択をしていくことになるでしょう。
以下では、それぞれの点について検討してみます。


2.他人からのコメント・添削を受けられる

答練の一番の特徴であり、メリットは、他人からのコメント・添削を受けられることにあります。
論文式試験においては、自分が提出した答案のみで評価がなされます。
そのため、自分で試験に必要な知識をインプットできているつもりでも、それが採点者に理解・評価されるように表現できなければ、思ったような結果に繋がりません。
そこで、司法試験等に合格した、一定の理解を有する方に添削をしてもらうことで、アウトプットの質を高めることができます。
後掲のリンク先にある通り、一定の点数が示されて返されることから、絶対的な実力評価を得ることができることも、そのメリットの一内容です。



このようなメリットは、他人に添削してもらえる機会がある方には、あまり魅力的には思えないかもしれません。
たとえば、同じく法曹志望の友人と自主ゼミを組んでいる場合や、大学や法科大学院で答案練習会の機会や法律レポート等を出す機会が設けられているような場合、です。
しかし、特に前者で現実にあり得る懸念として、知り合いに自分の答案を見てもらうことが恥ずかしいと思うような場合や、他人の答案に口出しすることに抵抗がある場合があるでしょう。
また、演習する教材や、その具体的な採点基準等がない場合は、うまく自主ゼミが機能しないこともありえます。
そういった場合には、予備校の答練を利用してみることが考えられます。
(逆に、答練を受講する中で答案作成に慣れてきたのちに、受験生同士で自主ゼミを組むようにする、というのもよさそうです。身の回りにもそういう方は一定数います。)



伊藤塾のコンプリと辰巳のスタ論を比較するにあたっては、その採点表の差が挙げられます。
答練では、採点の質を担保するために、採点の目安となる採点表が設けられています。
そこで、添削・コメントも、ある程度その採点表に拘束される向きがあるため、その比較にあたっては採点表の特徴を比較するのが良いでしょう。


コンプリでは、各答案の特徴を総合的に評価できるよう、おおざっぱな採点表が設けられています。
そのため、それぞれの答案の特徴を捉えた添削がなされる傾向にある一方、添削者によってその内容がピンキリである印象があります。
一方スタ論は、かなり詳細な採点表が設けられています。
そのため、採点表を通じて書くべきポイントを学ぶことができる傾向にある一方、相対的に硬直的な採点が行われる印象があります。


どちらの答練を取るかは、その好みによって分かれることになるでしょう。


詳しくは、下記のリンク先を参照してみてください。
参照: (添削編)伊藤塾コンプリ答練・辰已予備スタ論の答練の比較



3.相対評価の相場観がわかる

次に挙げられる特徴としては、同じ問題を多数の受験生で解くことになるため、その相対評価の中での自分の立ち位置が把握できることが挙げられます。


司法試験・予備試験の論文式試験は、共に相対評価で点数がつく試験です。
(参照: 予備試験論文の採点方式)
もちろん絶対評価で適当な点数を得ることを目指すことが妥当な努力の方向ではあると思いますが、その要求ラインの推定にはどうしても母集団の把握が必要です。


答練の受講は、この母集団の把握による相対評価の相場観の形成を促します。
これは先に挙げた自主ゼミでは得難い利点で、人数の多い答練で、どれほどの問題に対してどのような点数分布となるかを把握することができます。
相場観が形成されると、おおまかには、判例や学説に関するかなり的確な理解が求められており、それを書けなければ書き負けるのか、現場で思考する問題として何かしら自分の考えが書けていればよいのか、というような判断が一定程度できるようになります。
この判断なしに分量や内容が不適切な記述をしてしまうと、相対的に低い評価になってしまうことがありえ、重要な判断だといえます。



伊藤塾のコンプリと辰巳のスタ論は、回にもよりますが、いずれも数百人規模の答練です。
そのため、相対評価の相場観を養うのにあまりに十分な人数がいるといえます。
そして、全体の点数分布が公表されることや、最上位の答案が見本として公表される点も共通しています。


差があるのは、次のような点です。
  • 予備スタ論では、順位表が出ないため、自分の具体的な順位はわからない。
  • 司法試験スタ論では、本番でなされる得点調整がなされるため、 採点者による偏りが是正される。
つまり、予備試験の答練においては、順位表が公表される点でコンプリが勝る一方、司法試験の答練においては採点者の偏りが是正される点で、より本番に近い相場観を養いうるスタ論が勝るといえそうです。




4.本番に近い環境で練習ができる

決まった時間を計って、大勢の中で集中して答案を書ききるのは、試験慣れした人でなければなかなか簡単なことではありません。
予備試験では1日に最大6時間、司法試験は1日に最大7時間答案を書くわけですから、これはかなり大変です。


予備校に行って答練を受ける場合には、大勢の人の中で、本番と類似の時間割で答案を書く練習ができるため、この訓練になります。
これも自主ゼミ等ではなかなか互換しづらいところではあります。
とはいえ、場慣れだけのために電車で往復して予備校に通うことに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。
個人的には、その点を補って余りあるメリットがあると感じています。



この点については伊藤塾と辰巳で差はほとんどないでしょう。
個人的には、辰巳東京本校のパイプ椅子が五反田の論文会場のそれと似ていて、安心して試験に臨めたようにも思いますが、誤差かもしれません。

5.値段が安いとは言い難い(奨学生・割引制度がある)

答練が明確に独学等に負けるのは、その費用の高さです。
具体的には別記事に任せますが、答練は通常料金でだと1問あたり2000円前後します。
学者による解説がついた演習書は、何十問も掲載されて3000円前後であることを考えると、なかなか難しいところです。
たとえば、いずれも受験生から人気のある刑法事例演習教材は48問で、事例演習刑事訴訟法(いわゆる古江本)は33問で3000円台です。
添削の有無を差し引いても、演習書による独学はかなり割安に思えてしまいます。







答練からするとこのビハインドを埋めることはなかなか困難ですが、奨学生制度や、割引制度を用いることでかなり金銭的負担を軽減することが可能です。
特に、全額免除となった場合にはこのデメリットを完全になくすことができます。
誰にでもチャンスがあるものなので、まずは奨学生試験を受けてみるところから始めてから検討するのでもよいかもしれません。
詳しくはリンク先から確認してみてください。

参照: (奨学生・値段編)伊藤塾コンプリ答練・辰已予備スタ論の答練の比較

6.問題作成・解説が予備校によってなされる

最後に、演習素材が予備校によって作成されている点は、良くも悪くも特徴といえそうです。
具体的には、予備校の問題や解説を読むよりは、実際に民事訴訟法の問題を作っている勅使河原先生の解説書等を読んだ方が勉強になるのではないか、というような懸念は、批判としてありえそうなものです。
逆に、事例問題の解決に直接に役に立つかわからない本を読むよりは、試験問題を解くことに特化した予備校の教材を使った方が、学習効果が高いのではないか、というような意見もありえるでしょう。


この点については、やや乱暴ですが、好みとしかいえないように思います。
より問題作成委員の問題意識に近いのは学者の先生が書いたような本かもしれませんし、実戦的な知識や書き方が学べるのは予備校の教材かもしれません。
個人的には、どちらか一方に限る必要はなく、いろいろ試してみながら、自分に合う学習方法を見つけ出せればよいのかな、と考えています。



この点についても、伊藤塾も辰巳も大きな差はないでしょう。


(ただ、伊藤塾のコンプリ答練は、その名が、伊藤塾の論文向け講座である論文マスターを補完するという意味でコンプリートとつけられている通り、やや分野に偏りがある印象です。比較材料にするには不確実にもほどがあるので、この点につき感想がある方がいたら教えてください。)





7.おわりに

以上の通り、答練に参加することには、いくつものメリットがあります。
特に、独学では得がたいメリットである本番類似の環境等には、大きな価値があると考えます。
一方で、コスト等の懸念点が存在することも事実です。
まずは、答練の奨学生試験を受けるなどして、実際のコストを把握することで、うまく重要視している事項を検討できそうです。


答練の受講の是非を適切に検討して、いい結果に繋がることを願っております。



★関連記事
試験日程延期を受けての直前答練追加まとめ(予備試験・司法試験)
(奨学生・値段編)伊藤塾コンプリ答練・辰已予備スタ論の答練の比較
(添削編)伊藤塾コンプリ答練・辰已予備スタ論の答練の比較


にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.コンプリート論文答練と予備スタ論の値段の比較

予備試験を受けるにあたって、論文の答案練習会(答練)の受講を検討する方が多いと思います。
基礎講座を受講しているかどうかを問わず、大勢の受講生を一挙に集めて答練を行っている予備校として、伊藤塾と辰已法律研究所があります。
予備試験最終合格者のうち、答練を受講していた人の多くは、伊藤塾のコンプリート論文答練か辰已の予備試験スタンダード論文答練を受講しているようです。


論文答練の比較シリーズのうちの一記事です。
(参照: 論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験))
今回は、この二つの答練の値段の観点から比較をしてみようと思います。




1.基本的な価格設定

どちらの答練も、通学部であれば10月頃から12月頃にかけての第1ターム、1月頃から3月頃にかけての第
2タームの2期制をとっています。



伊藤塾のコンプリート論文答練(コンプリ答練)は、各タームに、論文式試験で問われる科目のうち一般教養科目を除いた9科目を、各4問ずつ解くことができます。
そのため、第1タームと第2ターム合わせて36問×2で合計72問を解くことになります。
2020年度対策であれば、第1タームと第2タームをあわせた全科目セットだと、121,900円となります。
目安として1問あたり約1,700円になります。
(参考:2020年度の講座案内 https://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/kouza/19A34021.html)



一方、辰已の予備試験スタンダード論文答練(予備スタ論)は、一般教養科目が各タームに2問付属します。
また、第2タームは民事系の科目が各科目6問になります。
そのため、第1タームと第2ターム合わせて合計82問を解くことになります。
2020年度対策であれば、第1タームと第2タームをあわせた通学部の全科目セットだと、207,800円となります。
目安として1問あたり約2,500円になります。
(参考:2020年度試験向けの講座案内 https://tatsumi-ws.com/items/?code=B9084H)


なお、どちらの講座も好きな科目のみ受講することができます。
セット販売の方が1問あたりの額が安くなっているため、それぞれご参照ください。
スクリーンショット 2020-05-03 01.42.40


このように考えると、特に割引がない状態だとコンプリ答練が割安であるように思えます。
一方で、いずれにせよ演習書が1冊3,000円前後で買えることを考えると、どちらも割高にも思えます。




実際には、多くの受講生が奨学生制度や各種割引を利用して受講しているため、額を考える際には割引後の値段を参照することになります。

2.伊藤塾のコンプリ答練の奨学生試験制度・値引き

伊藤塾では、各種講座の期間前に、当該講座を対象とした奨学生試験が設けられています。
(参考: 2020年予備試験向け特別奨学生試験 https://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/kouza/yobi/pg16296.html)
(なお、厳密には対象講座を含むパックが、対象講座の割引の分だけ減額、というような仕組みもあり、当該講座の受講のみにしか使えないというわけではないようです。)


講座にもよりますが、最大で受講料全額無料が予定されている回もあります。
ただ、私が予備試験受験生だったときは、3割から7割程度の割引の方が多く、受講料が全額無料になるケースはかなり少なかったように記憶しています。
その基準や割合は公表はされていないようです。


奨学生試験は、回にもよりますが、答練と同様の形式の問題を数題解き、その点数を中心にして割引率が判定されるようです。



なお、奨学生試験以外にも、模試の受講やその成績等による割引券の配布もなされることがあります。
また、予備試験論文式試験に不合格だった場合に、一定以上の順位だと割引がなされることがあるようです。



以上のように、伊藤塾での答練の割引は、原則として講座単位のものを予定していることがわかります。
つまり、奨学生試験は、コンプリ答練の受講費のみが減額されます。



今年度に関していうと、コンプリ答練自体ではありませんが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響から、論文直前答練の奨学生試験がなくなりました。
その代わりに希望者全員に40%割引クーポンが配布されることとなっています。
(参照: https://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/kouza/yobi/pgyobisho.html)


3.辰巳の予備スタ論等の奨学生試験制度・値引き

一方で、辰已では、例年6月頃に、全講座を対象として一定の割引がなされる奨学生を募集しています。

Ddr3GtpV0AA6dtC
(参照ページのリンクが切れていたため、画像で失礼します)

こちらは、論文答練である予備スタ論に限らず、あらゆる講座が一定の割合で減額されるものです。
そのため、答練以外の複数の講座を受講する場合には、とりわけお得なものになります。


試験内容は、短答・論文・アンケートからなり、それぞれの内容を考慮して割引率が決まっていました。
私の身の回りには5割・全額の奨学生が多かったように思います(そもそも、こちらは受験者がかなり少なかったため、なんとも言えませんが)。
そのため、生涯一度しか受けられないという制約はあるものの、積極的に受けてみる価値があるように思えます。
なお、奨学生による紹介制度があった年度もあるようなので、身の回りに奨学生の方がいらっしゃれば声をかけてみるのもよいでしょう。


このように、論文答練以外の講座の受講も想定した奨学生制度であることがわかります。


それ以外では、伊藤塾と同様、模試等の結果に応じた割引を行なっています。
また、他の講座とのセットでの割引もなされています。
(参照: https://www.tatsumi.co.jp/yobishiken/tokusetu/190726_yobi_waribiki/)
このような制度からも、他の講座とのセット受講が想定されていることがわかります。


なお、2020年の奨学生試験についてはまだ発表されていないようです(2020年5月3日現在)。
例年6月中旬に試験があることから、実施するとすればそのあたりでしょうが、昨今の状況下だと事情が異なるかもしれません。

4.まとめ

上記のとおり、結局のところ答練の値段は割引率に大きく依存します。
そこで、まずはどちらの奨学生試験を受験してみることから始まるといえるでしょう。
特に、辰已の奨学生試験で全額免除が取れた場合(そして伊藤塾のそれより免除の可能性が高いと言われてはいます)、1年間の学習における学費の心配がかなり薄れるため、まずはこちらを受験するのが得策でしょう。
一方、こちらで思うような割引率が得られなかったとしても、伊藤塾では複数回にわたり割引のチャンスがあるため、日頃の学習の成果を試す意味でも奨学生試験を受験してみることをオススメします。



読んでくださりありがとうございました。



関連記事:
論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験)
(添削編)伊藤塾コンプリ答練と辰已予備スタ論の比較



にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.基礎マスターや総合講義を終えたら

大学やロースクールの授業、基本書等での自習、予備校の講座で一通りインプットを終え、予備試験に挑戦しようと考えたとき、まず最初に立ちはだかるのが短答式試験です。
第一段階目の試験である短答式試験は、倍率が5倍前後にもなり、あなどれません。
受験者が年々増えていることから、最近は予備校の短答向け講座もかなり充実してきています。
そのようなことから、勉強する素材には事欠きません。


にもかかわらず(それゆえ)、勉強の方針を定めるのが難しいことも確かです。
知識をあらかた入れたと思っても、思いの外点数が取れないこともしばしばです。
様々な教材や講座があるので、方針がブレてしまわないように、何が求められているのかを見失わないようにしましょう。


ちょうど先日後輩からの相談にぼんやりと回答した内容があるので、記事にしてみました。
かなり基本的な方針についてのみ書いてみたので、短答対策の第一歩に悩んでいる方は参照してみてください。






1.予備試験短答で求められる能力

予備短答の問題は、解答の仕方に種類こそあれ、いずれもある文の正誤判定です。
たとえば、次のような問題です。
スクリーンショット 2020-04-30 20.37.46
(平成30年司法試験予備試験短答式試験 民法)

それぞれの選択肢では、条文か判例の判断に関連する記述がなされているのが一般的です。
ごく単純ですが、これに解答するためには、条文知識と判例知識をインプットしていくことが必要になります。


(厳密には、条文か判例だけでなく、学説に関連する知識があると解きやすい問題も出題されます。しかし、現状では、与えられている二文が対応しているかが問われる、というような論理パズル調の問題が出題されるにとどまり、特に学説知識をインプットする必要はないだろう、と考えています。)



2.やるべきこと

とはいえ、ひとくちに条文知識と判例知識といっても、いずれも膨大な量があります。
ある程度メリハリをつけて学習をしていかなければ到底終わりませんし、うまく記憶に定着しません。

そこで、ひとまず一般的に優先度が高いとされている対策を挙げてみます。

・過去問を中心に、市販の問題集を解く。
・頻出の分野や切り口についてまとめる。
・毎日問題に触れる。

以下では、それぞれどのような素材を用いて学習することになるのか、これらの対策がどのように条文知識と判例知識と関連するのかについて書いていきます。


3.短答の過去問・問題集の利用

まず第一に、短答の過去問・問題集を解くことです。

過去問で登場した選択肢が再び登場することが往々にしてあります。
そこで、同じ選択肢が出題された場合には確実に正解できるようになっておくと、点数が取りやすくなるはずです。
また、複数回出題された選択肢は、前回出題されたときより明らかに正答率が高くなっていることもあり、多くの人が行なっている対策のはずです。ここで差がつくのは勿体無いので、できる限り触れておくことが望ましいところです。
このように、過去に出題された問題は、受験生が最低限暗記すべき判例知識や条文知識の範囲を示す役割を果たしています。
そのため、過去問を解いていくことは、必要な知識が何かを把握する意味で必須のこととなります。



使うと教材としては、公式HPで確認できる問題を逐一読む場合を除けば、大きく分けて、
・選択肢単位で正誤を問う問題集の「辰已の肢別本」(俺はこれを使いました)
・問題単位(本番と同じ問われ方)の「短答過去問パーフェクト」等
があります。


どちらを使うかは好みですが、個人的には、全く同じ問題のまま出題されることはないだろうことから、選択肢単位でインプットができる肢別本がオススメです。
肢別本は、旧司法試験時代も含めた相当数の年度にまたがる過去問の選択肢をまとめた問題集です。
選択肢ごとに正誤が学べるため、個別の知識をインプットするのに便利でした。
その場合、出題形式に慣れるために模試等で練習することが必要になりそうですが、後述します。





なお、厳密には私は肢別本のアプリを用いていました。
スマートフォンやタブレットで利用できるので、確認してみてください(iPadでの学習についてはこちらから)。

iPhone・iPad: https://apps.apple.com/jp/app/2020-%E8%BE%B0%E5%B7%B2%E3%81%AE%E8%82%A2%E5%88%A5-%E5%8F%B8%E8%A9%A6-%E4%BA%88%E5%82%99-ls/id1451572532#?platform=iphone

Android: https://play.google.com/store/apps/details?id=ltd.co.tatsumi.AshibetsuApp&hl=ja


一方短答過去問パーフェクト(通称「短パフェ」)は、本番で問われた問題の形式(複数選択肢を一度に問うもの)で、分野ごとにまとめ直した問題集です。
こちらを使う場合、本番と同様に問題を解く感覚が養われるため、これも有用でしょう。




ただ、これらの問題集は、予備試験の過去問のみならず新司法試験や、旧司法試験の問題も含むことがあるため、量が膨大です。
たとえば肢別だと全科目合計で8000肢強あるので、どこまでできるかわからない状況では、年度単位で予備試験過去問を解いていく、というような方法が現実的かもしれません。


4.短答知識をまとめる

前述のような問題集を解いていると、どうも複数回同じようなことが問われていることに気がつくはずです。
頻繁に出題されるため、そこについて知識を固めておくだけで、その配点が確定するような分野があります。
例を挙げるなら、行政法の処分性、刑事訴訟法の公判前整理手続の概要、のようなものです。
これらの分野にかかわる判例の結論だけでもまとめておくと、容易に正誤判定ができるようになる問題があります。



分野に限らず、問われ方の切り口についても同様のことが言えると思います。
たとえば、民法で善管注意義務を負う場合と自己の物と同一の注意でよい場合の差は、逐一暗記していくにはなかなかしんどいような気がします。
どちらかというと後者の方が限定的なので、それをまとめておくと正誤がわかりやすい、のような感じです。


もっと単純に、丸暗記しておくことが有用であることもありえるでしょう。
たとえば、連帯債務の絶対効の語呂合わせのようなものです。
「あべ(弁済)そうさい(相殺)コンドーム(混同)つけずにこうかい(更改)」の4つです(どこで拝見したか忘れてしまいました、原案者の方は教えてください)。



このような対策は、過去問等が条文知識や判例知識の範囲を画するものだとすれば、条文知識や判例知識を本番で使えるように整形してインプットすることにあたります。



まとめる方法としては、ノートや、暗記用アプリにまとめることが考えられます。
あとは、先ほどあったような条文知識や判例知識について既にまとまっている「判例六法」に書き込みを加えるという方法も、短答合格者の中ではメジャーな気がします。
本番までどれくらい時間があるかわからないので、どれを使うかは試しにいくつかまとめて考えるのがよいかもしれません。



5.毎日問題を解く(答練や模試を活用する)

最後に、単純ですが、とにかく問題を解くことが挙げられます。



その目的は、本番同様の集中力を養うことにあります。
本番は、全選択肢を検討する前提なら、科目にもよりますが1選択肢あたり20〜30秒しか考えることができません。
しかも、それを60分ないし90分集中力を保ってやることになります。
これはなかなかしんどいことなので、過去問でも、先ほど挙げたような問題集でもよいので、1日に何問も解く習慣をつけるのが大事だと思います。
何周かしたあとで反復しやすかったということもありますが、私自身は予備試験に合格した年は4月以降毎日最低500肢は解くようにしていました。そこまででなくとも、毎日数を決めて解くようにするべきだと思います。


また、多くの問題数をこなすことは前述の2つの対策の重要な前提にもなります。
前述の通り、過去問や問題集には無数の問題が載っており、これを全て消化するのはなかなか骨が折れることです。
定着するまで反復するとなればなおさらです。
また、どのような知識をまとめれば点数の向上に繋がるのかが的確に見えてくるまでにはどうしても多くの演習が必要になります。
このように、演習は、条文知識や判例知識の範囲・整形のために必要な前述2つの対策を実効的なものにするために、絶対に必要な行為です。



演習の素材としては、前述の過去問や問題集を解く以外には、答練や模試が挙げられます。
自学自習ではなかなか緊張感をもって時間を計って演習ができないという場合には、答練や模試はとても良い機会です。
また、過去問が一部非公開であったり、問題集が充実していない一般教養科目の対策が一部可能である点も優れています。
一方で、最低限受験生が把握しておくべき知識の範囲を画する過去問に手が回っていない状態ででも優先して解くべきものかどうかはなんとも言えません。
私は伊藤塾と辰已法律研究所の模試のみ受験し、短答答練は受講しませんでした。


とにかく、どんどん問題を解いていくのです。


6.まとめ

このように、短答対策はとても単純です。
多くの受験生が取り組んでいる過去問等を誰よりも定着させ、適宜必要な観点から知識のインプットをする。
そのために、決めた教材をとにかく解く。


この繰り返しであることは、程度の差はあれ多くの合格者と共有できる感覚なのではないかな、と思います。



ごく単純な方法論なので、より優れた対策方法等があればこっそり教えてください。適宜加筆します。




ここまで読んでくださりありがとうございました。




なお、対策が遅れがちな一般教養科目の対策について書いているので、参照してみてください。
http://abc-sakana.com/archives/21774199.html



にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.予備試験論文式試験の一般教養科目

以前予備試験短答式試験の一般教養科目の解き方についての記事をあげた際に、思った以上の反響がありました。
(記事はこちらから http://abc-sakana.com/archives/21774199.html)
具体的には、その内容いかんというよりは、一般教養科目への対策をすることが可能ということ自体への感想を多く見かけたように思います。



同じことは、論文式試験における一般教養科目についても妥当すると考えます。
多くの予備校は基礎講座としては一般教養の講座を用意していません。
また、一般教養は2021年の試験を最後に廃止されることが決定しており(参照:https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/13/1413769_01_1.pdf)、今後も対策する講座が出されることは考えづらいでしょう。
そのようなことから、どんなに対策をしている人でも過去問の解説講座や答練の受講に止まり、具体的な方法論を煮詰めている人はほとんどいないのが現状です。



そこで、同じく対策が手薄になりがちな論文式試験の一般教養科目についての考察を書くことにしました。
私自身は、予備試験本番でA評価を得たことのほか、日頃の答練でも40点前後を取ることが多く、一般教養を得意としていました。
具体的な方法論について煮詰めたわけではありませんが、それでも相対的に上位が取れていたことから、その理由について考えた点を述べています。
具体的には、判例を読むように読み、射程問題を解くように書くことで、まずまずな答案が完成することについて指摘しています。
一受験生の粗雑な方法論に過ぎませんが、対策の一助に、またそもそもごく簡単な対策が可能なことに思い至るようになる助けになれば幸いです。



なお、限定的な範囲の単発の知識をインプットする講座を除くと、方法論に関する対策講座があまり存在しない短答式試験とは異なり、論文式試験の一般教養科目については方法論の講座や解説が存在しています。
この記事を読んだのちに、わずかでも時間を割いて対策することにしたのならば(それが望ましいかはさておき)、そのような講座を受講することもありえると思います。
参考のリンクは最後にいくつか載せておきます。




1.予備試験論文の一般教養科目の概要

予備試験論文式試験は、500点満点の試験で、合格最低点は4割強です(直近3年間は245点→240点→230点と推移)。
一般教養科目は、そのうちの50点分を占めています。



一般教養科目は、いわゆる大学入試の小論文のような形式を取ります。
課題文が与えられて、それにまつわる設問を解いていくものです。
他の科目と異なり、直接的には法律に関する知識を問われることはありません。
具体的な問題の分類はのちに詳述しますが、課題文中の考えに関する説明、課題文の要約、意見論述の3つに分かれます。
課題文は著作権の関係上公表されていない年度も多くありますが、設問についてはホームページから参照することができます(参照 令和元年予備試験論文式試験 一般教養科目)。


このように、事前に論証パターンと言われるような書く内容を一定程度用意しておくのとは異なり、その場で書く内容を考えて、論述をすることとなります。
そのような特質を捉えて、「対策をする必要はない」というような主張をよく見ます。



たしかに他の科目に費やすような長時間の対策をする必要がないという点には同意します。
しかし、他の法律科目に対して圧倒的な長い時間の対策をしておきながら、他の科目と同一の配点を有する一般教養科目についてはなんらの対策もせずに博打を打つというのが、合理的な判断かはなんともいえないところです。


たとえば、令和元年における論文式試験の合格最低点は230点です。
仮に一般教養で他の平均的な受験生より10点劣るとした場合、他科目で10点分カバーをしなくてはならないことから、240点を取る人と同様の法律科目の得点が必要となります。
240点を取った場合は350位ほどとなるため、本来の合格者が500人程度であることと比較すると門がいくぶん狭くなってしまったことがわかるでしょう。
10点下がるというのは、たとえばC評価上位からF評価上位(2600人中700位→1500位程度)まで落とす程度の差で生じる点差です(参照:ロボたいしょう様 司法試験予備試験の順位ランクと推定される点数について http://sitake.seesaa.net/article/470956709.html
現実的に起こりうる下落であり、合否にもある程度絡むことが伝わるでしょうか。


なお、実際には一般教養でF評価(1500位以下)で論文試験に合格している人も一定程度存在します。
法律科目で実力をつけるという勉強の方向性は、完全に正しいものです。
ただ、その事実をもって一般教養で問われる能力が予備試験合格と関係がないものと早合点するのは誤りではないか、というのが今回の趣旨です。
後述の通り、一般教養で問われる能力は法律科目で問われる能力と大きく異なるものではないため、そのような人たちもある程度対策ないし意識をすれば余裕のある点数を獲得していたのではないかと考えています。



2.試験の意義

そもそもなぜ論文式試験に一般教養科目が存在するのでしょうか。
予備試験が実施される際のヒアリングには、以下のような記述があります。

予備試験で評価・判定すべき能力は,司法試験法第5条 第1項で,法科大学院の課程を修了した者と同等の学識等と定められていること,法科大学院に入学するためには,大学卒業又はそれと同等の学力を有することが要件と なっていること,大学では一般教養科目は存在するが,法科大学院では典型的な一般教養科目,それに特化したものは教えていないこと,これらを考慮すると,大学卒業程度の一般教養というものを基本とすべきではないかということになった。 (有識者に対するヒアリング 抜粋)

このように、大学卒業程度の学力の証明のために一般教養科目を設置したとしています。
またヒアリングでは触れられていませんが、沿革としては、旧司法試験の論文試験に一般教養科目が存在したことと対応していることが挙げられるでしょう(参照 日本弁護士連合会声明)。


そして、ヒアリングでは求められる具体的な能力の内容についても言及しています。

大学卒業程度の一般教養のレベルを基本としながら, 知識だけを問うようなことになってはいけない,思考力・分析力・表現力等も判定できなければいけない,法科大学院の教育も踏まえなければいけない,という趣旨を盛り込むこととしたものである。(有識者に対するヒアリング 抜粋)

このように、具体的な知識を問うことではなく、思考力・分析力・表現力を問うことを目的の試験であることが明記されています。
法律科目で求められるような具体的な知識から離れて、そのような能力を問う点に、その具体的な意義があるといえます。


そのことに対応して、解答に際しても、そのような能力を有していることを示す論述を意識することになります。


3.出題形式と大まかな解答方針

毎年、一般教養科目には設問が2題出されます。
その内容はまちまちですが、おおむね次の3種類に分類ができます。
以下、年度と設問をR1①(令和元年 設問1を指す)のように示します。

・課題文への言及を求めるパターン(H30①、H28①・②、H26①・②)
課題文で与えられた概念についての説明や、それにまつわる説明を行うものです。
特定のキーワードに関連した説明や論述を求められることが多く、課題文から読み取った内容を解答に反映していくことになります。
年度によっては、自分で考えた具体例を付加することが求められることになります。
筆者は,本文中で,社会正義の実現のための手段として,「再配分」と「承認」の2つを挙げている。それぞれの特徴について,具体例を挙げつつ,15行程度で述べなさい。(H30①)


・課題文の要約を求めるパターン(R1①、H29①、H27①、H25①、H24①、H23①)
課題文の要約を行うものです。
課題文の全体かあるキーワードについてかはさておき、その論旨を論述することになります。
出題がなされた場合には必ず設問2で意見論述の問題となっていることから、意見論述の前提となっています。
本文における著者の主張を,10行程度でまとめなさい。(R1①)

・意見論述を求めるパターン(R1②、H30②、H29②、H27②、H25②、H24②、H23②)
課題文の内容に対して、自由な立場で、または設問が求める立場からの意見論述を行うものです。
多くは要約や記述をした設問1の内容に関連して、場面を変えた場合に受験生がどのように考えるかの記述を求めるもので、設問1での正確な読解を前提とする点に特徴があります。

20 世紀末の社会主義体制の瓦解後,市場機構は,名実ともに世界経済の中心的・主導的な機構となった。その一方で,それが,各種の社会問題の温床となっているとの批判もある。これに関連して,経済社会の在り方をめぐって,以下の2つの理論的立場が想定される。
A:市場機構に,社会的な規制を加える必要はない。
B:市場機構に,社会的な規制を加える必要がある。
ここで,仮にBの立場を取るとすれば,その正当性はいかに主張できるであろうか。具体的な 事例(Bの主張の論拠となる事例)を取り上げつつ,15行程度で立論しなさい。(H27②)




以上の3類型が存在し、それぞれについての解答をしていくこととなります。


今回述べたいのは、この3類型に共通する解答方針があることです。
それは、いうまでもありませんが、この試験で求められる思考力・分析力・表現力を示してやることです。
では、具体的にはどのような方針を取ればよいのでしょうか。
先ほど示したヒアリングをもう少し読み解くと、この能力について次のような記述が存在します。

......法科大学院においては一般教養に特化した科目はないが,法曹養成に特化した教育を行うことで,思考力・分析力・表現力といったものは大学卒業時点から更にかん養されている面がある.......
......思考力・分析力・表現力等も判定できなければいけない,法科大学院の教育も踏まえなければいけない......(有識者に対するヒアリング 抜粋)

これらの記述と、法科大学院が法曹を養成する施設であることをあわせて考えると、思考力・分析力・表現力が求められる行為が、法曹を養成するプロセスの中に組み込まれていることが考えられます。



私は、それは判例の射程を考えることだと考えました。
法律資格に向けた勉強に際して必ず行われる、ある文章の骨子を理解し、ある立場から文章を考えて記述する行為は、判例の射程を考え、特定の事案とそれが合致するかどうかを考えることにほかならない、と考えました。
もちろんそれは法科大学院で行われる学習の一側面に過ぎないであろうと推測しますが、後述の通りある程度は辻褄が合うことや、法律を学ぶ方には比較的伝わりやすい感覚だろうと考えています。
そこで、以降は以上の3類型を、課題文を判例を読むように読み、判例の射程を考えるように解いていくことについて書いていきたいと思います。


具体的には、判例を読む際には、具体的な事例・法律論とそれにより導かれる結論・それが妥当である理由づけの3つに着目することになると思います。
また、判例の射程を考えるときには、判例と実際の事例の異同に着目しながら、理由が妥当し、結論が正当かについて考えていくことになります。
設問の3類型について、判例と向き合う際に求められる能力の側面が登場します。



4.一般教養出題形式その①:課題文への言及

まず、課題文への言及が求められるパターンがあります。
一定の長さの課題文を読んで、課題文中に登場する概念やキーワードについての論述をする必要があります。
課題文は、司法試験委員会が用意した短いものであることが大半です(H28①・②、H26①・②)。
指定行数が多いわけではないほか、私見を問われていないことが多く、ある程度形式的にあてはめを行うことで答案が完成します。


判例を読む際との対応で考えると、結論が抜けた判旨に、適切な判旨を付与する作業であるといえます。
文言解釈を行う前提となる理由づけまで書いてあるので、結論を付与してやればよいのです。


例えば、H28①を解いてみましょう。
課題文はリンク先から読んでみてください(平成28年度 司法試験予備試験論文式試験 一般教養科目)。


設問は次の通りです。
一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには,何が求められるであろうか。学問に おける専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ,15行程度で論述しなさい。

「学問的知識」とは何かを、専門家集団の役割に触れつつ、記述する問題です。
判例でいえば、条文の文言解釈を行なっていることに対応します。
同様の作業は、判例を読む際には必ずやったことがあるはずです。
たとえば、最判昭和49年9月26日の次のような理由づけを読んだとします。
民法九六条一項、三項は、詐欺による意思表示をした者に対し、その意思表示の取消権を与えることによつて詐欺被害者の救済をはかるとともに、他方その取消の効果を「善意の第三者」との関係において制限することにより、当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至つた者の地位を保護しようとする趣旨の規定である
このような判例の理由づけから、民法96条3項の「善意の第三者」の文言解釈を導くことは、受験生が慣れ親しんでいる行為だと思います。
なるほど、「善意」とは意思表示が有効でないことに対して必要で、「第三者」とは新たに利害関係を有するに至った者なのだな、という判例の規範定立を導くことができます。


課題文に言及する設問も、おおまかには同様のことです。
たとえば先述の「学問的知識」については、本文中に「知識」については直接記述があることから、「学問的」と「知識」についてそれぞれ文言解釈を施していくことになるでしょう。
(なお、本問については、設問の「学問に おける専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ」という箇所から解き進めていくことも考えられます(参照 http://study.web5.jp/160821a.htm)。こちらもいわゆる現代文的解法で、慣れ親しんでいる方も多そうです。)


以下、簡単に解説を付しますが、自分で解いてみたい方は先に次の類型に飛ぶといいでしょう。








まず、「知識」とは、問題文によると、
「知識」と「情報」を概念的に区分することに固有の関心=利害(interest)を持つ人々も,いまだに存在する。
という記述から、固有の関心・利害を持つ人により「情報」から概念的に区分されたもの、であることが分かります。


そこで、「知識」のうち、「学問的知識」とはどのようなものなのかを考えていくことになります。
文章中で、「学問的知識」について述べているのは次の一文です。
すなわち研究者は,「斯界の権威」として学問的知識の生産や流通にコミットし続けている。
「学問的知識」は、研究者によって生産・流通されていることがわかります。
つまり、「学問的知識」における、固有の関心・利害を持つ人ないし「情報」から概念的に区分する人は研究者であることがわかります。


ここまでで、「学問的知識」とは、固有の関心・利害を持つ研究者により「情報」から概念的に区分されたものである、という大きな枠組みが見えます。
ただ、このままでは設問の要求である、学問における専門家集団の役割を明らかにしたとは言えません。


そこで、専門家に関する議論を追っていくと、
......専門家が一定の条件下で知識を独占的に運用し続けている......
......ここの学問分野において研究者が果たしている役割も、基本的にこれと同じである......
とあります。
あとは、先ほどの大きな枠組みの「専門家」に、この記述を代入してやれば解答の枠組みが完成します。
ごくごく単純に見えますが、再現答案を見るとこのような話の大枠を掴めていない答案が多数あります。
課題文から大きく離れた持論を書いているものや、要求されていないにもかかわらず過大な分量を具体例の提示に割いているものです。


もしここに書いたような文章の読解をしていなかったという自覚があれば、判旨を読むときのように、結論に対応する理由づけを順繰りに読んでいくという読み方をするだけで、いくぶんか改善すると思われるため、参考にしてみてください。
これくらいならできる、と思った方はある意味健全で、本番で筆が走らないように気をつければ大きくつけ離されることはないのではないかと思います。


5.一般教養出題形式その②:要約

次に、課題文の要約を求められる場合があります。
要約が要求される場合には、課題文に言及する場合と異なり単純で、課題文自体に結論と理由づけが(明示されているといえるかまではさておき)全て書いてあります。


そこで、課題文の結論を丁寧に探り、その結論を支える理由づけにはどのようなものを挙げられているかを抽出し、筆者の意図に沿うように解答してやれば一定の解答が完成します。


課題文が公表されている年度がないため、考え方の例は割愛します。

6.一般教養出題形式その③:意見論述

最後に、意見論述を求められる場合があります。
設問1で課題文の結論や理由を抽出する要約問題を解いたのち、少し事例を変えた場合にどう考えるかの私見を述べるものです。


これは、自ら抽出した判例の結論と理由づけをもとに、判例の射程が及ぶかを考えるものにほかなりません。
同様に考えていくことになります。
具体的には、設問1で理由Aから結論αが導かれると解答した場合、設問2で条件を変えたとしたら、
・理由Aが同様に当てはまるので、結論αである。
・理由Aが当てはまらないので、結論αではない。
・理由Aが当てはまるが、特段の事情Bから、結論αではない。
・理由Aが当てはまらないが、特段の事情Bから、結論αである。
の大きく4パターンの解答の方針がありえることになります。
理由づけが当てはまるかどうか、結論の修正が必要かどうかを説得力のある形で書けるかどうかで差がつくことになるのでしょう。
結論がどちらになるのでもよいことはもちろん、思考力・分析力・表現力を問うという試験の目的からすれば、理由に挙げる具体例がマニアックな知識であることも特に求められないでしょう。



ためしに、令和元年の問題を例に考えてみましょう。
課題文が公開されていないため、代わりに私の設問1での解答の骨子を読んだ上で、設問2を考えてみてください。

理由①:法律のようないかなる拘束もない状態では、弱い者がより強力な者により抑圧され、強力な者も団結した弱い者による復讐を受けうる、万事闘争の状態になる。そこで、万人がこのような紛争を仲裁する権力を希望する。
→仲裁権力としての政府が求められる。
理由②:社会のメカニズムに、すべての要素を均衡状態に保つ自己調整原理が存在する。
→社会のメカニズムに対する政府の関与は求められていない。
理由③:人為的干渉である立法等は、物事の自然なバランスを破壊し、むしろ多くの害悪を生じさせる。
→政府の役割は限定されるべきである。
結論:人々が政府を求めるのは、仲裁権力として正義の執行を行うことに限られる。そのため、政府の任務はそれに限られるべきである。

これに対する設問2の問題文は、以下の通りです。

 本文を著者が記したのは1840年代前半である。当時,イギリスにおいては義務教育も国営鉄道も存在せず,教育や鉄道事業は政府以外の機関・団体によって行われていた。 本文における著者の主張は,今日の社会においてどのように評価し得るか,25行程度で論じなさい。 なお,論述に当たっては,以下のテーマのうち一つを取り上げ,それに対する政府の関与の在 り方について,自らの見解を提示すること。
① 商業の規制
② 教育
③ 道路・鉄道の建設
(令和元年 司法試験予備試験 論文式試験 一般教養科目 設問2)

いずれかのテーマについて、前述の理由があてはまるかどうか、結論はどのようにすべきかを、考えてみてください。
なお、私は①をテーマに選びました。





























いかがでしょうか。
前述の通り、結論のいかんはどのようになってもよいと思うので、考えてみた骨子と私の考えてみたものを比較しながら読んでみてください。
(なお、どのように考えてみたか興味があるので、コメントやメッセージ等で教えてくださる方がいらっしゃれば光栄です。)


私は、まず前述の理由について、それぞれ次のように考えました。

理由①:法律のようないかなる拘束もない状態では、弱い者がより強力な者により抑圧され、強力な者も団結した弱い者による復讐を受けうる、万事闘争の状態になる。そこで、万人がこのような紛争を仲裁する権力を希望する。
→仲裁権力としての政府が求められる。

➡︎現代においては妥当するとは限らない。

財政面・影響力の点で、国家にも比肩するようなGoogleのような巨大企業が登場した現代においては、強力な者が弱い者による復讐を恐れるとの構造があるとは限らない。それどころか、巨大企業が革新的な技術やサービスを考案した企業を傘下にするなど、強者がその階級を固定・助長するような働きをすることすらある。

そのため、政府が求められる前提となる、万事闘争状態は常に生じるとはいえない。



理由②:社会のメカニズムに、すべての要素を均衡状態に保つ自己調整原理が存在する。
→社会のメカニズムに対する政府の関与は求められていない。
➡︎現代においては妥当しない。

自己調整原理がうまく機能しない場面がある。各人の自由な経済活動に任せておくことによる需要と供給のバランスが決定されるというアダムスミスの「神の見えざる手」は、カルテル等により潜脱されてきた。また、先述のような圧倒的な強者による階級の固定・助長が、自然に解消されるとは考え難く、その論拠に乏しい。

そのため、商業活動においては、社会のメカニズムに対する政府の関与が求められている。

理由③:人為的干渉である立法等は、物事の自然なバランスを破壊し、むしろ多くの害悪を生じさせる。
→政府の役割は限定されるべきである。
➡︎現代においても(少なくとも一部)妥当する。

人為的干渉によりバランスが適切に調整されるとは限らない。社会経済政策が常に成功してきたわけではない。

そのため、政府の役割が無制限でよいとはいえない。




以上の通り、現代の商業規制の場面でも、理由①・②が妥当せず、理由③は妥当すると考えました。
そこで、考えられる主な解答は、

・理由①・②が当てはまらないので、同様の結論ではない。
・理由①・②が当てはまらないが、理由③が妥当し、それが極めて重要であるという特段の事情から、同様の結論である。

のいずれかです。
理由③が妥当することをいかに評価するかによって結論が変わります。



私は、商業の規制に関する立法による害悪は、完全に避け得なくとも、裁判所による違憲審査のような三権分立のような仕組みにより是正可能であることから、重視すべきでないと考えました。
そこで、理由①・②にまつわる事情の変動に伴う政府の後見的な介入が必要であるとして、現代においては筆者の主張には賛成できないと結論づけました。





このように、設問1で抽出した理由に対する妥当性を逐一検討して、合理的な結論を導けば、十分に評価されるものです。
たとえば、訴訟上の相殺に対する再相殺が許されないのに、訴訟外の相殺に対する裁判上の再相殺が許容されるのは、前者の理由が妥当せず、その結論で妥当だからです。
要約さえ終われば、あとは順繰りに考えていくことで一定の結論を出すことができます。

7.おわりに

長くなってしまいました。
以上の通りに設問の類型ごとに、判例の射程を考えるように解いていくことができることが伝わったでしょう。


全文を読んで、「大したことがないなあ」と思われた方は、おそらくは現代文や小論文の素養があった方で、望ましいことだと思います。
もしくは、法律を学習する上で求められる力を適切に伸ばすことができた方で、それもまた望ましいことでしょう。
以上に述べたような力が求められていることを忘れずに問題に向き合い、本番も足を引っ張らない点数を取ることを祈っています。


一方で、何か参考になったと感じる方は、このようなある種単純な指摘で改善を見込めるにもかかわらず、特に理由なく一般教養科目の対策を一切行なっていない者と比較して、幸運で、賢明です。
以降新たに多少の対策をするでもよし、以上の記事を読んで一定の理解をしたと感じて法律科目の対策に戻るのもよし。
いずれにしても一般教養科目に対する形のない不安が薄れたものとして、総合点数が向上することを願っています。


このように「対策の必要がない」とされている一般教養科目についても、一定の対策は存在します。
短答の一般教養についても触れているため、参照してみてください。
(記事はこちらから http://abc-sakana.com/archives/21774199.html)



新たに対策をするとすれば、市販の参考書を読むか、予備校の講座を取ることになると思います。
市販の参考書としては、過去問の再現答案集であるぶんせき本か、形式は違えど法科大学院入試向けの小論文の参考書が有用だと考えます。


なお、今年度版のぶんせき本は4月下旬に発売予定のようです(2020年4月24日現在)。
http://blog.livedoor.jp/accstatsumi/archives/9598109.html

今年度版のぶんせき本はこちらから。




受講するとすれば、以下のような講座が存在しています。

辰已法律研究所の講座
https://tatsumi-ws.com/items/?code=19731W

同所のYouTube講座
https://www.youtube.com/watch?v=8mNtxAVz4PY




以上です。読んでくださりありがとうございました。





にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.司法試験・予備試験本番の六法を使う

4月1日に、令和二年度向けの司法試験用六法が発売されました(詳細はここで書きました)。
司法試験においても、予備試験においても、論文式試験においては当日各人にオリジナルの六法が配布され、それを使用することになります。


個人的には、本番と同様の六法を用いることが効果的だと思っています。
いざどのような違いがあるのかと指摘してみると、以下のとおりかなり地味ですが、このいずれも実際に慣れておかないことには本番での条文の引き心地はかなり異なるためです。
お持ちでない方は周りにいる方に見せてもらうのもよいかもしれません。

ひとまず違いを列挙しておきます。




1.レイアウトの違い

司法試験・予備試験向けの六法と市販の一般の六法の最大の違いは、そのレイアウトの差にあります。
具体的には、①法令参照の不存在②条文見出しの不存在③1項の記載の不存在の3つが特徴です。

IMG_5624
(ポケット六法 令和2年度 p.437)

一般的な六法は、このように参照する他の条文が示されていたり、太字で見出し(債権者代位権の要件、のようなもの)がついていたり、1項の先頭に①がついています。
このように、引きやすくなっている点に工夫が凝らされています。


IMG_5626
(司法試験予備試験用法文 p.569)

少しみてもらえばわかる通り、参照性という観点からは本番の六法は最悪です。
他の条文の参照がなされていません。
また、条文の見出しが太字になっていないため、目に飛び込んでくるのは条文番号のみです。
さらに、1項であっても最初に①と付されていないため、2項以降があるかどうか確認しなければ条文引用を間違ってしまうことがあります。

このように、かなり参照性が低いことに留意が必要です。


2.刑事訴訟法の条文名

さらに問題なのが、刑事訴訟法です。

IMG_5625
(司法試験予備試験法文 p.1175)

司法試験・予備試験用の法文には、刑事訴訟法に条文見出しがついていません。
そのため、知らない条文を参照する際にはかなり骨が折れることになります。
たとえば、少し見辛いですが上の画像から領置の条文を探し出してみてください。
条文見出しがついていれば即座に目に飛び込んでくるものも、多少探し出すのに時間がかかってしまうはずです。

3.ひもの活用

一方で、司法試験用六法も悪いことばかりではありません。
司法試験用六法は、あまりに分厚いため、しおりひもがついています。
そのため、ひもを適宜挟み込むことによって複数の条文を行き来する際に活用することができます。


予備試験用六法は、司法試験用六法と比べると厚くないためか、しおりひもがありません。
そこで、ペン等をはさみこんでしおりにしている人が多くいるように思います。


個人的なおすすめは、多色ボールペン用のリフィルです。
試験中には当然文房具以外の持ち込みができないため、しおりとして持ち込めるのはペンかその替え芯程度です。
もちろん使っているペンの替え芯を挟むのでもよいですが、一般的なペンの替え芯はやや太いです。
それに対して多色ボールペン用であれば、かさばることがない点が良いです。
多色ボールペンの形状からしおりのような形の突起がついているほか、複数の色を用意できる点が優れています。


パイロット フリクションボール スリム多色用 リフィル 0.5mm 替芯セット 黒、赤 青 LFBTRF30EF-/3C/3B
㈱パイロットコーポレーション




4.入手法

では、司法試験用六法をどのように手に入れればよいのでしょうか。
例年であればメルカリ等で昨年度版を購入するにとどめる人も相当数いたように思いますが、今年は民法が改正された影響で、昨年度のものが使えません。

そこで、株式会社ぎょうせいが出版しているものを購入することになるでしょう。
例年は第一法規が出版していましたが、問い合わせたところ今年は出版しないようです(2020.4.1現在)。


(2020.4.6追記)法科大学院修了生サービスのTKCから1割引送料無料で司法試験用六法が発売されていました。
サービス利用者はこちらから購入するのが良さそうです。
以下、リンクです(うまく飛べなければホームページから参照するのが良いかもしれません)。
https://sp.lawlibrary.jp/lgsbin/OrderItem.aspx






一方予備試験用六法については、確認したところ出版がありませんでした。
そこで、メルカリ等で改正民法未搭載のものを購入することになるでしょうか。
会社施行規則や地方自治法、警職法など、使用することも多少ある搭載法令が載っていない点に差はありますが、法科大学院試験六法とレイアウトはほぼ同一なので、そちらを購入して参照するのも悪くないかもしれません。







これらの六法を実際に参照することで、本番さながらの練習ができることを願っています。



にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.予備試験・司法試験論文答練の採点・添削

予備試験・司法試験を受けるにあたり、論文式試験に向けての練習の機会が重要なのは、明らかです。
そしてその練習の機会として予備校が提供しているのが、答練(答案練習会)です。


予備試験・司法試験の両方で有名な答練として、伊藤塾と辰已法律研究所のものがあります。
基本的には自分が基礎講座(法律の基本的な知識を学ぶ講座)を受けた予備校で答練も受ける人が多いようですが、両者にはそこそこに差があります。
私は縁あって両方の答練を参加したため、その簡単な比較ができれば幸いです。


論文答練の比較シリーズのうちの一記事です。
(参照: 論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験))
今回は、一旦答練の採点や添削に絞って紹介・比較します。






1.比較対象・内容

伊藤塾と辰已にはそれぞれ独自の有名な答練が存在します。
伊藤塾はコンプリ(コンプリート論文答練)、辰已にはスタ論(スタンダード論文答練)と呼ばれるものが有名です。
それらをはじめとするそれぞれの答練について比較してみることにしましょう。


前提として、いずれの答練も添削や採点は人によりけりで、コメントの内容等も予備校間で差があるというよりは、添削者ごとに異なるというような印象です。
そこで、添削内容や採点自体を比較しようにも、予備校間の差を感じることはあまりありません。

そのため、今回は採点の制度を比較していくこととします。


IMG_5100
人生で初めて書いた予備試験型の答練の添削です(赤字)。とても丁寧なコメントをくださり、奮起したのを覚えています。

IMG_5102
一方、到底真面目に読んでいるとは思えないようなものもあります。予備校ごとに悪名高い採点者がおり、そこは答練のリスクともいえるところなのかもしれません。


2.辰已(スタンダード論文答練等)の特徴

まずは、辰已法律研究所の答練の採点表です。
辰已の答練の採点表の特徴は、とにかく細かい採点項目が決まっていることです。

IMG_5106
(規範定立・具体的なあてはめの両点において具体的な検討内容が示されています。2019年度スタンダード論文答練より)

写真のように、1点単位で採点基準が細かく定められています。
そのため、採点者ごとの裁量があまりなく、機械的に点数が出される傾向にあるのが特徴といえるでしょう。
また、自分でも容易に自己採点ができるのが特徴であるほか、辰已の採点表に沿って日頃の答案構成をすることが可能になるため、緻密な答案構成ができるようになる効果も見込めるでしょう。


予備試験型であれば50点満点中40点分の採点基準が用意されており、残りの10点のうち5点が基礎点、もう5点が裁量点となっています。
司法試験型であればいずれもが倍になります。
裁量点の部分で、採点表で拾いきれなかった加点要素を加味することもあり、個別の点数調整がなされるようになっています。


IMG_5104

(模範解答と異なる解答筋に対して1+2点が与えられている。2020年スタンダード論文答練より)

厳密に採点表が用意されているとはいえ、硬直的な採点がなされるとは限らず、このように別筋の解答が一切評価されないわけではありません。
ただし、採点者によってこのような採点を行うかどうかには差があるようで、あまり柔軟でない採点に不満を感じる方はいるかもしれません。


このように、厳密な採点基準が用意されているのが強みである一方、個別の事情をどこまで斟酌してくれるかわからない点に弱みがあると言いうるでしょう。

3.伊藤塾(コンプリート論文答練等)の特徴

次に、伊藤塾の答練の採点表です。
伊藤塾の答練の採点表の特徴は、ファジーな採点基準と双方向性にあります。

IMG_5103
(配点がおおざっぱに振られています。また、自己評価(黒ペン)と採点者評価(赤ペン)がABCの3段階でなされています。司法試験過去問答練より)

論点単位で配点が振られており、それぞれの配点が大きいことがわかります。
例として出したのが司法試験過去問でしたが、予備試験においても同様です。
どのような記載により減点・加点がされたかが一見してはわかりませんが、実際には個別の事情を書いたか否かで採点されているとは限らず、本番の採点に即しているとの見方もあるでしょう。

予備試験型であれば50点満点中30点分の採点基準が用意されており、残りの20点のうち10点が基礎点、もう10点が裁量点となっています。
司法試験型であれば100点満点中70点分の採点基準が用意されており、残りの30点のうち10点が文章表現力、10点が答案構成力、もう10点が裁量点です。
このように、採点全体を通して採点者の裁量を重視しており、採点者の個性が色濃く出ることとなります。


もう一つの特徴が自己評価を答案と一緒に提出すると、採点者評価が付されて返却されることです。
画像のように、ABCの3段階で自己評価・採点者評価がなされます。
これにより自分が書けたと思っている主観とどのように書けているのかの客観の差が浮き彫りとなり、復習のきっかけとなります。

4.比較

採点の制度には概ね上記のような特徴がありました。
厳密な辰已と、裁量の伊藤塾、というようなところでしょうか。
採点の内容がはっきりとわかることを重視する場合は辰已、様々な解答筋を多様に認めてもらいたい場合は伊藤塾、というように傾向の差が生じるところでしょう。

また、双方向性を重要視したい場合には伊藤塾にすることも考えられますが、コメントを書き込んでおくと辰已においても添削の内容としてコメントが返されることがあるため、ここについてはあまり差がなさそうです。

5.おわりに

上記のように、採点の制度を見るだけで両答練の態度の差が浮かび上がってきます。
また折に触れて他の観点からの比較も試みてみることとします。

読んでくださりありがとうございました。


関連記事:
論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験)
(値段編)伊藤塾コンプリ答練と辰已予備スタ論の比較



にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.予備試験短答の一般教養の対策

予備試験の最初の関門、短答式試験には、一般教養科目があります。
全42問から好きな20問を選んで解く形式です。
1問につき3点の配点で、計60点と、他の法律科目2科目分の配点があり、合否を左右しうるものと言えるでしょう。
しかし、42問は社会科学、自然科学、論理問題、英語等の複数の分野からなり、好きなものを選べるとはいえ、高得点を取れるとは限らない科目です。
全体の平均点は25点前後で、配点の4割超となっています。


難易度がセンター試験レベルから大学低学年レベルのものが多いとされていることから、センター試験で複数科目を受験した国立大学の学部生が有利であると言われています。
大学受験で社会理科を2科目ずつ受験科目とした私も、3回受けた本番と、複数回受けた模試で、40点を切ったことはなく、得点源としていました。
そのような状況を捉えて、予備校でも「一般教養科目は捨てるべき」「予備試験短答は法律科目だけで受かることを目指せ」というように指導しているのを度々見かけます。
これは、ある一面においては真実かもしれません。
法律の試験にもかかわらず、どういうわけか一般教養と題された簡単ではない問題を解かされて、気分がよくないことの裏返しからこのような過激とも思える主張に傾くこと自体には、一定の共感を覚えます。



しかし、以前同じく一般教養科目を得点源としていた友人たちと話していた際に、共通の認識としていたこと点がいくつかありました。
その中心となるものは、一般教養科目の解き方は、集中して勉強をしてきた他の法律科目とは異なる、ということです。
その点を無視して、一般教養は捨て、適当に解く、と割り切ってしまうのは、試験対策上、受験指導上、決して適切ではないと考えます。
ここでは、誰にでもでき、そして一読するだけであり方を変えられるその考え方の一例を紹介できればと思っています。


あくまで素人たる受験生同士の感想なので、絶対の正解であるとは思いません。
それでも、勉強の一助となれば幸いです。



1.一般教養は捨てられない

前提として、一般教養科目が捨てられる科目とは限らないことを確認します。


司法試験予備校の中には、一般教養が対策不要である旨述べるものがあります。
そして、その主な論拠は①法律科目のみで合格が可能であること②範囲が広く対策が困難であること の2点です。
このうち②については次の章以降で触れるとして、①は本当でしょうか。

スクリーンショット 2020-03-13 22.21.47
(資格スクエアのブログの一部抜粋 元記事のリンクはこちら)


私見では、仮にそれが本当なら、受験者比での合格率が20%強にとどまることなどありえないと考えるため、明らかに誤りであると考えていますが、念の為計算をしてみましょう。


予備短答の合格最低点は270点中160点から170点ほどで、昨年(2019年)は162点でした。
その配点のうち、60点を占めるのが一般教養科目で、残りの210点が法律科目です。
法律科目のみで合格点の162点を取ることは、どれほどの難易度なのでしょうか。



典型的な出題形式として、3つの選択肢の正誤を答え、そのうち3つが正解で3点、2つが正解で1点が入るというものがあります。
この試験形式を前提にすると、期待値が合格点の162点を超えるには、選択肢ごとの正答率が91%弱になる必要があります。
運転免許を取るための学科試験は、正答率が90%以上で合格となることを考えると、条文数で比較すると六法だけで考えても30倍もの量のある予備試験短答でそれを実現するのが困難なことは明らかでしょう。
仮に期待値ではなく70%以上の合格率を望むなら、選択肢ごとの正答率は95%前後が要求されます。
これは、科目ごとで2選択肢までしか間違えられないことを意味し、異様なプレッシャーの元の受験をすることとなります。
(なお、この出題形式は他の出題形式と比べ著しく期待値が低く出るものではないほか、この出題形式が多く出る憲法の科目別平均点が他の科目より低いということはありません。)



仮に一般教養で平均点の25点前後が取れるとすれば、選択肢ごとの正答率は85%弱で足ります。
数字が大きく変わらないように思えますが、1.5倍強の誤答が許容されることとなると考えれば、その差はかなり大きなものとなります。
誤答を半分近くまで減らす努力をするよりは、それが論文試験に一切役立たないとしても、一般教養科目にほんのちょっとのリソースを割く選択をすることが決定的に愚かな選択だとは考えがたいところです。
一度でも受験を経験した方なら想像ができるでしょうが、9割近くまで正答を選べるようになってから、正答率を1%伸ばすのはおそろしく大変なことです。



このように、「一般教養科目が0点でも合格する」というのは誇張がすぎ、法律系予備校のポジショントークにすぎないと見るのが妥当でしょう。

2.一般教養との向き合い方・出題形式

そこで、一般教養科目においても一定の点数を取ることを目指すべきです。
しかし、前述の通りセンター試験レベルかそれ以上の難易度の問題が多いことを前提とするならば、新たにイチから勉強をすることは骨が折れます。
そのため、具体的な勉強方法を考える以上に、現場での考え方で改善することができないか考えることになります。
具体的には、以下のような類型に問題を分けて、それぞれごとに対策が考えられそうです。

1)前提知識を要さない問題
2)前提知識を要する問題
2ー1)そのうち手持ちの知識が十全で、選択ができる問題
2ー2)知識が十分でなく、一つに絞り込むことができない問題

大きく分けて、上の2つに、前提知識を要する問題はその中でも2つに分けられることになります。
そしてその大半は前提知識を要する問題なので、まずは前提知識を要さない問題を探し出すところからはじまります。


まず意識すべきは、このように分けられること自体です。
解答用紙が回収されていくのを見ると、そこそこの人数の人が前から20問に1をマーク、のような形で提出しています。
これは明らかにもったいないことです。
以下のように類型ごとに考えて、解答できる問題を厳選すべきです。


なお、仮に勉強する時間が取れるとしたら、どのように勉強すべきかはこちらで書いています。

3.落としてはいけない問題

前提知識を要さない問題は、絶対に落としてはいけません。
先述のように、センター試験レベル以上の問題が出る以上は、わからない分野の問題は基本的にはピンとこないことが大半です。
そこで、論理問題や国語の問題にすぎない問題は、なんとしてでも死守することになります。
具体的には、ほかに時間をかけるような箇所がないことから、1問に10分以上かけてでも正解を出すことすら推奨されるほどだと思います。


スクリーンショット 2020-03-13 23.23.41
(令和元年 予備試験短答式試験 一般教養科目第10問)

具体的には、上記のような問題がそうです。
その場でルールが示されて、それに基づいて考えてみるような問題です。
令和元年のものでいえば第9問、10問がこれにあたります。
例年必ず2問は出題されており、年によっては3問以上出題されていることすらあります。



また、現代文の問題があります。
著作権の問題から公表はされていませんが、令和元年でいえば第7問がこれにあたります。
これも同様に、例年必ず1問出題されており、迷う部分もありますが、死守すべき問題です。


まずはこの最低3問を正解することから、一般教養科目ははじまります。
もし難易度が高く感じるのであれば、後述の通り過去問や公務員試験のテキストで勉強するのもありでしょう。

4.前提知識を要する問題

次に、前提知識が必要な分野の問題を解いていくこととなります。
先ほど分類した通り、必要な前提知識を有している場合と、有していない場合があります。
先に、前提知識を有している場合の問題を使って解いていきましょう。


ここは、多くの人にとり解ける分野が異なるため、詳述は避けます。
念のため書いておくべきこととしては、英語の問題は決してセンター試験レベルのものばかりではないということです。
一般教養の英語の問題も、著作権の関係で問題文が公開されていません。
そのため、その難易度については様々なことが言われます。
客観的にいえることとしては、語彙レベルとしては東大受験向けの英単語帳である鉄壁未掲載の単語が問題文中に複数登場すること等が挙げられます。
それゆえ、難関大学受験者であっても決して得点を期待できるとは限らないのが実情です。
身の回りのTOEIC900点以上の方や、国連英検を取得されている方でも、出題される問題全てを選択・正解していることはあまりないことからも、その難易度が伝わるかと思います。
伊藤塾をはじめとする短答模試の英語が例年比較的簡単めに作成されていることから、ここから点数の稼ぎ頭として英語を想定する方が毎年一定数いますが、本番で面くらわないよう、注意しておくのがよいと考えます。



前提知識があることから、サクサクと解き進めてしまいましょう。

5.前提知識が不足したまま解く問題

前提知識で点数が取れるところが終わったら、いよいよ前提知識が不足した状態で解いていく時間が始まります。


ここからが本番です。
一般教養で比較的高得点が取れる人の多くは、60点近くを取る人を除いては、ここからの絞り込みでどれだけ期待値が積めるかに長けた人です。



まずは、前提知識があることを想定されてはいるものの、問題文の立て付けから現場で考えることができる問題を探していきます。
具体的には、ほとんど論理問題同様にルールが提示されている場合か、選択肢中に一般常識に照らして明らかな誤りを含むものを指します。


前者としては、次のような問題があります。
スクリーンショット 2020-03-14 00.09.03
(平成29年度 予備試験短答式試験 一般教養科目 第15問)

経済の問題です。
本来は、前提知識としてネットワーク効果について知っていれば説明書きを読むことなく考えることができそうです。
しかし、この問題では丁寧にネットワーク効果の説明がなされているため、これに当てはめながら考えていけば解くことができます。
選択肢2は、電気自動車の値段が下がろうが「既にその製品を利用している消費者」にはもう関係がないため、明らかにネットワーク効果と関係がないことがわかります。
他の選択肢が正しいかどうかはよくわかりませんが、選択肢2が誤りであることがわかるので、これで正解です。



このように、ルールに則り読み進めるだけで正答となる問題が少なからずあります。
出題者の想定としては前提知識を要する問題の分類だったはずが、容易に解けてしまうような場合です。



その双方の要素を含む問題として、次のような問題があります。

スクリーンショット 2020-03-13 23.57.07
(平成30年 予備試験短答式試験 一般教養科目 第5問)

模範的な考え方としては、セメント産業が主要な消費地に近接するのは、セメントが固まりやすく長期の輸送に向かないから、という知識から、5を選択するものが考えられます。
しかし、現場においても、主原料が鉄鉱石等の鉱石である鉄鋼業は原料地に近い(選択肢2)のに、同じく鉱石である石灰岩は消費地に近い(選択肢5)というのは、ルールに反するのではないかと疑うことが考えられます。
そうすれば、「石灰岩の単位重量当たりの輸送費が安価」というのが誤りなのではないか?ということに思い至る可能性があるでしょう。




このように、長々とルールが書いてある問題は、その場でルールを適用して考えることが可能な場合があり、前提知識なくして推理を進めていくことが可能です。
例年1問か2問出題があり、点数源となりえます。


一般......とまで言えるかはわかりませんが、自らが有している常識的な知識を応用することもできます。
スクリーンショット 2020-03-31 23.08.24
(平成30年 予備試験短答式試験 一般教養科目 第33問)

知識としては知りませんでした。
表面の汚染により質量が変動することが問題なら、酸化等しづらい金か白金が答えなのだろうと考え、後述の二択に持ち込みました。
ただ、私は万年筆を収集するのが趣味で、ペン先の合金がイリジウムと白金からなることがあるというのを知っていました。
そこで、イリジウムとの合金といえば白金だろうと早合点して、それが答えとなりました。

そのような答えの出し方が妥当かは別として、明確に答えがわからずとも、自らが有している知識から自由に答えを考えてよいのが短答式試験で、とりわけ一般教養科目ではそのような傾向が顕著です。




前提知識が十分でない場合であれば、解答には至らなくとも、数択に絞り込むことができる場合があります。
それは、組み合わせ型の選択肢の場合です。
スクリーンショット 2020-03-14 00.28.28
(平成30年度 予備試験短答式試験 一般教養科目 第21問)

恥ずかしながら、ほとんどわかりません。
しかし、光が屈折するのは、光が通るものによって速さが変わるからである、というようなぼんやりとした知識から、イが誤りとわかれば、選択肢4か5に絞り込めます(正解は4です)。
あとはコインでも投げて決めたとしても、単純に5択をあてずっぽうで考えた場合よりも2.5倍の期待値が見込めます。


このように、組み合わせ型の設問で、1つでも絞り込めそうな選択肢がないかを注視しながら残りの時間を過ごすこととなります。
幸い、組み合わせ型の設問は毎年複数出題されており、令和元年であれば英語の4問を含む12問、平成30年であれば英語の5問を含む20問が組み合わせ型です。
このうちのいくつかでも絞り込むことができれば、格段に点数の期待値が高まります。


一般教養科目が得意な人たちには、少なくない割合で、これらの「前提知識がないまま解く問題」の期待値をせこせこと高める能力が高い人が含まれます。
このような努力は、意識づけ次第で本番ぶっつけでも可能なものなので、彼ら彼女らの特権とせず、試験日最後の90分で限界まで点数に執着する態度を見せることをオススメします。

6.一般教養を勉強するとしたら

以上のことをふまえ、仮に法律科目の勉強が煮詰まった場合に、一般教養科目の勉強をするとしたら、いかなる勉強が考えられるかについて触れます。
前述のことから、勉強の方針は次の3つが考えられます。
1)前提知識がいらない問題を解く練習をする
2)前提知識が必要な問題を解くため、前提知識を確認する
3)組み合わせ型の問題で選択肢を切るため、新たな前提知識の獲得を試みる
1)について、先ほど挙げたような問題に苦手意識を感じる場合には、ひとまず友人等と一緒に過去問の該当問題を解いてみて、得意な人がどう処理しているかを眺めることが考えられます。
それでも足りないと感じる場合には、就職活動で用いられるウェブテストの論理問題を練習することや、公務員試験の同様の問題で練習することが考えられます。
いずれも本屋等で立ち読みをすると良いでしょう。





2)3)については、基本的には確認対象が膨大となってしまうため、あまりオススメはしません。
しかし、中には比較的短時間で点数を挙げられる確認内容が想定できます。


2)に関連するところでいけば、日本史・世界史の年代並び替え問題に対応するために、大まかな時系列をざっと確認する参考書を参照すること等が挙げられるでしょうか。
手持ちの高校時代等に用いた資料集を用いるのでもいいですし、専用の安価な参考書を購入するのもいいでしょう。
私は速攻で確認する用の参考書を持っていたため、それを用いました。





3)に関連するところでいけば、頻出分野か、組み合わせ型の出題が多い科目であれば、わざわざ対策することが考えられるかもしれません。
頻出の題材としては、経済の価格弾力性にかかる出題は平成27,28,30年に出題されたほか、文系にも馴染みやすくほぼ毎年出題されている地学の気象分野が挙げられます。
経済の財に関する出題も複数回の出題があり、簡単なウェブサイトでの解説を読むことも考えられるかもしれません。
地学は例年組み合わせ型の出題がとても多く、公務員試験レベルの選択肢をざっと確認する程度であれば勉強時間を割く価値があるかもしれません。





過去問集はあまり充実しておりません。
そこで、基本的には公式HPから問題を取得して、解いてみることになるかと思います。
私は利用していませんでしたが、少し古い版については一般教養の過去問テキストが存在したため、参照してみても良いかもしれません。





いずれにせよ、法律科目の学習の妨げにならないことを前提に行うべきでしょう。
「法律科目だけで受かる」ことが大半の受験生にとって現実的ではないと感じる一方、法律科目のみで受かるだけの実力をつける方向性での学習は、論文式試験や、それ以降との関係で完全に正しいもので、それが最優先であること自体は明らかなためです。


7.実際の点数の取り方の例

参考までに、私が本番で選択した問題の例を載せます。
私は、令和元年の予備試験短答では、
前提知識を必要としない→第5,7,9,10問
前提知識を有するor一般常識に照らして解いた→第2,25,27,36,37,38,40,42問
二択から選んだ→第3,11,14,28,29,33,39,41問
で、確定36点+9点で45点になりました。

正解したうち前提知識を有していた問題の分野は、世界史・生物基礎・物理基礎・数学・英語でした。

二択に持ち込んだのは世界史・政経・地学基礎・化学・英語でした。
一般的な傾向を提示するのは困難ですが、一般的にはこれらに経済を加えた分野は二択に持ち込みやすい印象があります。




このように、知識を有していた部分からさらに9点を上乗せすることができました。
8問を闇雲に選択すれば期待値は1.6問分しか望めませんが、二択に持ち込む意識で解くことで期待値を4問分にまで上げることができました。



前提知識なしで選べるのが3問、前提知識を有していたのが2問だったとします。
平均点の27点を獲得するには、15問中あと4問の正解が必要です。
闇雲に5択を選択すれば、正解問題数の期待値は3問であり、24点しか望めません。
一方、二択に持ち込む問題を4問選べれば、期待値は4.4問となり、無事期待値が平均点を超えることになります。
このように、「二択に持ち込む問題を探し出す」という意識は一定の効果を奏しうるものです。
模試や答練、本番を通じて、なんとか点数を稼ぎ出すことができるようになれば合格に少し近づくかもしれません。

8.おわりに

ここまで一般教養科目との向き合い方について書いてきました。
一学生の不勉強なままでの文章であるため、不十分な点が多々あると思います。
その中でも、参考になる点があれば幸いです。

また、可能な限りより改善をしたいと思っているため、何かお気付きの点があればコメント等でおしらせください。


ここまで読んでくださりありがとうございました。


★関連記事
予備試験論文の一般教養の対策・解き方
初学者の予備試験短答式試験の学習の指針






にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.法学部生のカバンは重い

法学部生の特徴に、「なんだか重いカバンを持ち歩いている」というのがあります。
大学や試験の勉強のためになんだか色々なものを用意する必要があるのは事実で、最初のうちはこれに悩まされていました。
しかし、これは、ちょっとした工夫で解決できるものであることを知り、大学時代の後半はスカスカのカバンで登校できるようになりました。


そう、iPad学習をするのです。


1.カバンの中身

そもそも一般的な法学部生のカバンの中身はどうなっているのでしょうか。
多くの場合、基本書と呼ばれるような参考書、判例百選、ポケット六法、問題集、授業のレジュメ、予備校のテキスト等が入っていることになります。
これら全部が入っている日には、我慢できないほどカバンが重くて、大学に行くのが億劫になったことがある人も多いでしょう。

これらのものは全て持っていく必要があるのでしょうか。

2.iPadアプリで代替

結論から申し上げると、ほとんどがiPadアプリで代替可能です。
(他のタブレット端末でも実現可能です。今回はiPadの例を紹介します。)



まずは、参考書、百選等の書籍についてです。
これらは全てスキャンしてPDFデータにしてしまえば、iPadのPDF表示アプリで参照可能になります。

IMG_6578FED97A09-1

(刑事訴訟法判例百選 第10版 p.4)

iPadの画面サイズで表示が見えづらいことはほとんどなく、快適に読み進めることができます。
こうした書籍を全て持ち歩く必要がなくなるとすれば、それだけで一気にカバンが軽くなるはずです。



大学で配布されるレジュメ等も、当然同様にスキャンしてやればiPadで参照可能です。
そもそも大学では、レジュメのデータがあらかじめ配布されることも少なくなく、印刷して持ち歩くよりもデータの管理するのが簡便なはずです。



六法についても、当然に対応しています。
法令とPDFデータを同時に参照することも可能であるほか、六法アプリなら条文の検索等も容易なので、通常の六法を扱う場合より便利に使うことができるかもしれません。
IMG_02F1CDD7D188-1
(画像のアプリはこのリンクから取得できます)




問題集に至っては、一部はアプリになっています。
例えば、辰已法律研究所の有名な予備試験・司法試験の短答式問題集である肢別本はアプリとして発売しています。
IMG_8EE017058E30-1

正答率の管理等が容易なほか、書籍で買うよりも安価に購入することができ、いいことづくめです。




以上のように、iPadアプリで容易に代替が可能なのです。


3.iPad学習でさらにその先へ

しかし、このままでは単にiPadで参照することができるのみに思えます。
紙媒体で学ぶことにも一定のメリットがあるとされる上、大学の試験や司法試験本番でiPadが持ち込めるわけではないことから六法等は紙で慣れておきたいという需要があるのも納得できます。
また、持ち歩きが簡便であるためだけにiPadを買うのは......という気持ちにもなってしまうでしょう。



そこで、iPadを利用することにより紙媒体では簡単にはできないことが実現できる例をいくつかご紹介します。



iPadでの学習が圧倒的に優れているのは、編集の容易さです。
当然紙の参考書等も書き込みは容易なのですが、余白には限界があるほか、紙は加工を重ねるごとに劣化していってしまいます。
そのため、あまりダイナミックな加工はできないでしょう。


その点iPadでの編集の場合にはそのような限界はありません。
私は、学習のため、一元化教材として趣旨規範ハンドブックを採用して、iPad上で編集しています。
IMG_0187
(趣旨規範ハンドブック民事系 p.435を加工したもの)

同一の書籍の他の部分が参照された場合にいちいちページをまたぐのは大変なので、このように貼り付けてしまうことができます。
数タッチでこのような加工ができるため、気軽に編集ができます。




IMG_1A4A1C167E75-1
(趣旨規範ハンドブック 民事系p.495に書き込みを加えたもの)


他の参考書を読んだときに見つけた大事な書き込みを保存しておくこともできます。
この例にはありませんが、出典を書いておくことで元の文献にあたることも容易でしょう。


IMG_0186
(趣旨規範ハンドブック 民事系p.491に民事訴訟法判例百選 事件44の判旨を貼り付けたもの)

貼り付けは同一書籍のものに限りません。
他の参考書の一部抜粋を貼り付けておくことができます。
もちろんこれも数タップで実現できます。
紙媒体でやろうとすると、コピーは面倒で、しかも貼り付けた紙はシワシワになってしまいます。


IMG_878A41792952-1
(趣旨規範ハンドブック 民事系に北斗の合格論証集 民法 及び 伊藤塾基礎マスターの記載を貼り付けたもののサムネイル)


こうなってくると何がなんだかわかりません。
各種書籍のスキャンしたデータがそれぞれ有用で、一箇所にまとめておきたい場合は、このように互い違いに読み込んでしまえば、一挙に参照できます。
紙媒体で実現することも一応できるでしょうが、私は到底やる気がしません。




さらに大きい利点としては、検索機能があります。


IMG_79D793E1DE47-1
(趣旨規範ハンドブック民事系 p.65)

特定のキーワードを入れると、きれいにスキャンした場合はスキャンした教材の文字や自分で入れた書き込みから、横断的に検索が可能になります。
これも紙媒体ではできない、圧倒的なメリットです。
付箋まみれの参考書を持ち歩く必要などないのです。




また、音声・動画を流すこともできます。
アガルートなど一部の予備校では、講義データをmp3形式で配布しており、耳で聴きながら学習することを推奨しています。
iPadでも当然それらを聴くことができるため、先ほどのようにスキャンしたテキストデータをiPadで参照しながら、音声をiPadで流す、という使用方法が考えられます。
もちろん動画形式の講義を聴く際も同様で、複数ページを同様に見ながら作業をすることができます。
その他、ウェブページを参照しながら学習をしたい場合もあるでしょう。
IMG_04786625C98D-1




このようにして、勉強するときはiPadだけ持っていけば大丈夫!という態勢が完成します。
しかも、紙媒体をたくさん持っていくよりも、iPadだけを持ち歩いている方が断然参照性が高い状態になったことがわかったかと思います。

4.iPad学習の用意

では、iPad学習の環境を整えるには何が必要でしょうか。
大きく分けて、①PDFファイルの用意②iPadとアプリの用意③PDFファイルの読み込み④関連アイテムの用意 が必要です。


まず、①PDFファイルを用意する必要があります。
PDFファイルを作成するには、書籍をスキャンすることになります。
逐一見開きのページをスキャナーでスキャンすると、きれいにスキャンができないほか、かなり手間がかかるので、あまりオススメしません。
キンコーズ等の印刷業者で「背表紙を断裁してください」とお願いすると、教材をスキャナーで高速スキャンしやすい状態に加工してもらえるので、試してみるとよいでしょう。


スキャナーは大学の自習室等に置いてあるコピー機の機能として使える場合も多いため、確認してみるとよいと思います。
例えば東京大学では、法学部自習室の1階のコピー機にUSBメモリを挿すと無料でスキャンが可能です(2020.2.5現在)。


自ら持っている教材を断裁することに抵抗がある方は、次のどちらかの手段によってPDF化をすることになります。
一つ目の手段は、メルカリ等で断裁済みの書籍を購入し、それをPDF化することです。
もう一つの手段は、(先ほど否定したものですが)逐一スキャンしていくことです。
スキャナーを使う以外では、スキャンアプリはかなり優れたものも多いため、こちらを使う手段もあるでしょう。
Microsoftが出しているスキャンアプリがかなり高性能なOCR(文字の読み取り機能のこと)を実現しているため、こちらをオススメします。
https://apps.apple.com/jp/app/microsoft-office-lens-pdf-scan/id975925059?ign-mpt=uo%3D4







次に、②iPad側の用意です。
まずはiPadを購入します。
どれでも構わないのですが、後述のApple Pencilを購入する場合には、最新のApple Pencilに対応するバージョンが限られているため、確認してみることを推奨します(私は使っていません)。


Apple Pencil(第2世代)
Apple(アップル)
2018-11-07





そして、先ほどのPDF表示アプリを購入します。
無料のものもありますが、有料アプリの方が圧倒的に便利であるため、多少の出費を厭わずに購入してしまうことをオススメします。
この記事で使っていたアプリはGoodNotesというアプリで、上記で示したような機能が980円で全て使用できます。
https://apps.apple.com/jp/app/goodnotes-5/id1444383602?ign-mpt=uo%3D4


また、データを管理するためにクラウドサービスを利用するのもいいでしょう。
Googleドライブ等を用いると、管理に便利なほか、次のところで読み込むのにも便利です。



あとは、③PDFファイルを読み込む必要があります。
①で作成したPDFを、パソコンで保存したのちに、iPad上で表示できるように読み込みます。


大きく分けて二つの方法があります。
一つは、iPad内に保存する方法です。
GoodNotesには、iPad内に保存されているファイルを読み込む機能があるため、iPadにPDFファイルを保存しておくとそのままアプリで表示できるようになります。



もう一つは、クラウドサービス上で保存しておく方法です。
クラウドサービスに保存しておき、そのサービスのアプリをiPadにインストールしておくと、このように読み込むことができます。

IMG_201A77AEF6FF-1

(画像はDropboxを利用した場合のものです)


管理も簡単なので、私はこちらをメインで用いています。





さらに、④関連する備品を購入するのもアリでしょう。
具体的には、書き込みを入れるために、手書きペン(Apple Pencil等)や、Bluetooth対応のキーボードを用意することをオススメします。
私は後者を用いていて、適宜タイプして補筆をしています。






これで準備は完成です。

5.おわりに

このように、iPadを導入することで、法学部生の重たいカバン問題を解決するどころか、より便利な学習環境が達成されます。
「法学部生はなんだか重いカバンを持っている」という時代は2020年までで終わりにして、スマートに学習する時代を共に築いていきましょう。



ありがとうございました。


★関連記事
論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験)


にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

0.予備試験浪人をしました
はじめましての方ははじめまして。そうでない方は再び読んでくださりありがとうございます。
昨年の予備試験の論文式試験を受験してから、あまり考えもまとまらず、特に更新もしないまま一年間が過ぎました。



昨年学部四年として受けた予備試験の論文式試験に不合格となったあと、留年し、二度目の学部四年生(五回生)として再び予備試験を受験していました。
留年をしたのは、民間企業に就職するのではなく専願受験生となることを決意した頃には、法科大学院の入試の出願が不可能になっていたことが主たる理由でした。


幸運なことに、今年の予備試験に最終合格しました。
それを機に、大学の後輩を中心に、予備浪人について話を聞きたいと声を掛けられるようになりました。

また、質問箱にもそれ関連の質問が溜まっていて、全部答えるよりは一つ記事を書く方がまとまってよいな、と考え、いろいろと書いてみることにしました。

 


とりたてて私から言えることがあるわけではないのですが、たしかに予備浪人に関する情報を見つけるのは困難であるように感じます。
一方で、現実には法科大学院(ロー)に進学したり卒業したり就職したりせず、留年の選択をする(余儀なくされる)人は少なくありません。
私自身が大学に残り予備試験を受験する選択をしたのも、同様の選択をした先輩のロールモデルを見ていたからでした。

もし身の回りにそのような選択をする人がいなければ、同様の進路を選択できなかったでしょう。

 


そこで、簡単にではありますが、予備浪人についての私の体験を書いておくことにしました。
「時間ができてよい」「絶望するほど悪くはない」以外のことは特に書いていないのですが、それでもこれから進路を考える方の参考になったり、同様の選択をすることにした方の応援になったりすれば幸いです。


1.定義等


特に定義なく予備浪人という言葉を使っていました。
念頭に置いているのは、「大学四年次に、ローへの進学や就職をすることなく、留年・休学により予備試験を受験することに専念する時間を用意する」状態です。
のちに詳述しますが、定義から明らかなように、予備浪人の最大のメリットは可処分時間が最大となることにあります。
そのため、留年・休学それ自体になんらかの意味があると考えているわけではありません(大学を卒業することを除いているのは、学生の身分を残すことにより就活等になんらかの影響があることを見越してのことですが、現段階ではよくわからないので詳述しませんし、補筆するかもわかりません)
そのような意味では、順調に単位を揃えており、大学にあまり通わないこともできる四年生以下の学部生や、休職している社会人の方等にも参考になる点はあるかもしれません。

また、予備試験に向けた対策によってロー入試の対策も兼ねることができると言われており、私見としてもそう考えるので、予備試験を受験することに専念する、と書きました。
特に留年後にローを受験することを排除する意図ではないので、留意していただければと思います。



また、自発的に予備浪人を選択する人はそう多くなく、この選択肢を意識している方の大半は、希望していた他の選択肢がかなわず、留年等の選択を余儀なくされている状況であると考えています。
そこで、予備浪人をするに至った経緯等についてはこれ以上特に書かず、ローに進学した場合等と比較した場合の予備浪人の特徴を踏まえて、どのような学習をすることにしたかの記録に紙面を割いています。





2〜4は、抽象的で、かつ私見が多分に含まれているので、何を勉強していたのか等が知りたい方は、5以降だけ目を通してくださればいいのかなと思います。
特に、予備浪人を決心した(余儀なくされた)人を激励することを目的としている側面があることから、どちらかというと予備浪人を選択する方に肩入れしている部分があります。
ある程度割り引いて読んでもらえれば、と思います。





2.敗因分析


前提として、私が昨年予備論文に不合格だったときの状態について書いておきます。
私が昨年不合格となったときは、東大の四年生として受験をしていました。
合計点は210点前後で順位は2551人中1000位ほど、成績評価としては、B2つ、C1つ、D1つ、E2つ、F3つでした。
特に公法系と刑事系はふるわず、いずれの科目もEF評価となりました。

悪い評価がついていた科目の評価の理由は明らかで、判例の規範の理解・暗記があいまいで、他の受験生がハッキリと書いていた部分で差をつけられてしまいました。
また、全科目を通じて、規範と事実を分けることも不十分で、いわゆる法的三段論法を意識した記述ができていたとは言えませんでした。
そこで、次の受験までの大きな目標は、規範の正確な暗記と法的三段論法の会得の二つとなりました。
また、自分の試験の手応えと実際の評価の乖離から、この試験は正しいことを書く試験である以上に、相対評価を制する試験なのだと考えるようになりました。




3.予備論文と相対評価について


先に進む前に、予備論文が相対評価の試験であるということをよりよく理解してもらうために、採点方法に関する考察記事のリンクを貼っておきます。

ロボたいしょう様 (司法試験予備試験の順位ランクと推定される点数について http://sitake.seesaa.net/article/470956709.html

graph5-6df38-thumbnail2



上記はロボたいしょう様が作成された、各科目においてすべて同ランクを取った際の、合格点を基準とした点数の期待値の表です。
例えば10科目につきA(上位300位まで)の評価を受けた場合は、6.5×10=65となり、合計点は合格最低点を65点上回る点数となることが予想される、のように見ることができます。
これを参考にすると、D評価1つがB評価1つに対応する、A評価1つでD評価1つとE評価1つを挽回することができる、といったようなことが考えられそうです。




次に問題となるのは、どれほどの答案を書けばどれほどの位置に来るのか、ということです。
しかし、これは毎年問題が異なるほか、採点主体も受験生も毎年変化するため、明確な基準は立て難いところです。
手がかりとなるのは、
多くの受験生が利用し、基準としている参考書(伊藤塾や辰已、アガルートの論証集等)の記述
ここに書かれていることは受験生が共通して覚えていることとなる
ぶんせき本等の先輩の答案集
受験生の上位の答案や平均的な答案を読みながら、例年の試験の相場観がわかる
予備校の答練
受験生の点数分布が出されるものなら、全体の中での自分の立ち位置がわかる
のような教材や講座です。
不合格になってからは、このあたりの教材を元に、勉強の指針を立てることとしていました。


4.予備浪人の特徴


予備浪人を考えている方にとって、比較する先の選択肢は、ローへの進学大学の卒業就職 あたりではないかと考えています。
それぞれとの比較の中で、予備浪人の特徴に関する私見を書いておきます。



ローへの進学との比較

ローへの進学と比較すると、予備浪人には、

メリット:定期試験対策や授業出席がなく時間が取れる・形式的には学部で予備合格したことになる・(ローで予備試験を受けない場合は)司法試験を早く受けうる

デメリット:履歴書に留年の事実が残る・一回で予備試験に受からなければローで受験する場合と司法試験を受けるタイミングは変わらない(か遅くなる)・ローの授業を受けることができない
といった特徴があります。
特にデメリットの2点目は重要で、次の機会で予備試験に受からなければ、予備試験を受験する人の多くがメリットと感じる「早く司法試験を受けることができる」という利益を享受できなくなることになります。
司法試験を受験できなければ元も子もないので、進学可能なローがあるのに進学しないことは、一般的には、そこそこの賭けだと言ってよいでしょう。


一方で、先ほど掲げたメリットはいずれも魅力的なものです。
それらに強く惹きつけられた場合には、予備浪人をするというのもありなのかもしれません。



まず、定期試験対策や授業出席がなく、試験直前に時間が取れるというのは、あまり指摘されませんが圧倒的なメリットです。
特に、短答の時期にゆっくり時間が取れるのは、かなり強烈なメリットだと考えます。

ローに進学するか留年して学部に残るか考えている方は、ある程度法律の学習を進めており、学部時代の期末試験やロー入試等を経て論文型の試験にも対応できるようになりつつある方なのだろうと思います。
そのため、そのような層の方の中には、論文式試験を受験さえできれば、かなり善戦できる方が多くいるはずです。


しかし、いわゆる上位ローの既習2年の方でも、短答で不合格になってしまう方は少なくありません。
その理由として、論文試験で問われるよりは細かな条文知識等を詰める時期にローのイベントや授業が多くあることがあげられるようです。
たしかにローでの新生活が始まり、他の新入生との交流があるのは避けがたいですし、そのような交流自体は知見を広げてくれる等、法律を学ぶ環境を豊かにする素晴らしいことだと思います。
また、ローでの授業は法的思考力を養う上ではきわめて有意義なものだと伺うことも多く、羨ましいばかりです。
とはいえ、予備試験に合格することになんらかの理由で意義を見出している者にとっては、試験前の学習のペースを乱すものとして、必ずしも有益なだけとは限らない場合もあるのでしょう。

一方で、予備浪人をした場合には、そのような心配はありません。
生活をする上で不可欠なアルバイト等や家事を除けば、試験の直前期にも多くの時間を予備試験の勉強に費やすことができます。
もちろん多くの時間を割けば合格が確実になるというわけでもありませんが、想定外の事態を避けやすくはなるはずです。
また、短答試験直前の4月に集中して短答対策をすることができると分かっていれば、それまでの期間を思い切って論文対策に割くことができる等、学習のペースも掴みやすいはずです。
そこで、先述したような相対評価で負けないようにするために考えられる方策をすべて実践する等のパワープレイも可能になりうるのです。



また、形式的にでも予備試験に学部で合格した者と履歴書に書くことのできることのメリットは、意外と侮れません。
自分の中で留年・休学をしたという事実をどう消化するかは別として、体面は学部合格者と同様に扱ってもらうことができます。
例えば就活の履歴書においては、大学の入学年度と卒業見込み年度しか問われないため、どのタイミングでいかなる理由で留年・休学したかを申告することは求められません。
その状態では、留学や起業等の積極的な理由のために大学を離れていた可能性があるため、留年・休学の一点をもって決定的に悪い評価をされることはないと言っていいでしょう。
また、法律事務所の人事を担当している方は、旧司法試験を受験していた層の方がほとんどです。
その時代は試験を理由とした留年が横行していた環境にあったからか、そういった事情に理解を示してくださる傾向にあるようです。
事実私やまわりの予備浪人をした方もインターンの申し込み等の場面で不利な扱いを受けた形跡はないようで、人事担当の方に同様の話をすると「昔の人みたいだね」と笑って済ませてくださいました。
学部時代の同期で東大ローに進学した方の中には、ローの成績等を加味してかインターンの参加を断られている者もおり、大学での成績を主たる要素として斟酌しないとされている学部合格者とは異なる取り扱いがあるのではないか、とうかがわれることもあります。
(なお、私の法学部でのGPA2.5を切っており、学部成績を重視しているならインターン等に呼ばれるはずがないのです)
また、夏のインターンについては、学部生とロー生とで、募集枠も内容も異なるので、どちらに参加したいか、という点も違いとなりそうです。



このように、ローに進学せず予備浪人をすることにも一定のメリットが存在しないわけではありません。
とりわけ「時間がある」というメリットについては、意識しながら勉強するのが良いと思っています。


大学()を卒業し、卒後として予備試験を受ける場合との比較

卒後となることと比べると、予備浪人には、
メリット:学生の身分がある、学部生合格になる
デメリット:学費が一部かかる、留年経験が履歴書上残る
という特徴があります。
生活実態は変わらないので、勉強可能な時間等には大きな違いはないはずです。
そこで、差は学費と外聞(とりわけ就活における)と考えてよいでしょう。

学費については、半期休学が可能な大学であれば、半年分の学費さえ払えばよいことになります。
そこで、半年分の学費で外聞を買う(表現は悪いですが)ことに価値があるかどうかが問題になるでしょう。


・・・が、これに関してはよくわかりません。
「フリーターになって司法試験浪人をしているらしい」というのと、「留年して司法試験を目指しているらしい」というので、どれほどの差があるのかはわかりません。
一つ申し添えておくとすると、この冬の就活イベントで100人ほどの予備試験合格者にお会いしましたが、学部生でもロー生でもない方は、医者をやりながら予備試験に合格した1人の方のみだったという事実があります。
これが何を示すのかはよくわかりませんが、私は予備浪人をすることの方がよいものとして即座に留年・休学届を出したので、あまり参考になることは書けなさそうです。

また、卒後か留年・休学かを問わず存在する予備試験・司法試験の不合格のリスクについては、次のところでも触れています。



就職した場合との比較
就職して予備試験を受験する場合との比較では、予備浪人には、
メリット:試験前に時間が取れる、学部生合格になる、就活をせずに済む
デメリット:学費がかかる、地位が不安定になるリスクを負う(、ローの社会人受験枠を得られない)
という特徴があります。

要するに、勉強に専念する時間を捻出する代わりに地位が不安定になるリスクを負うか、社会人の地位を得る代わりに勉強する時間を限定するか、の二択であるといえます。
他の選択肢と比べると、二つの選択肢で司法試験に対する向き合い方自体が大きく変わることとなります。

この比較から考えてもらいたいのは、予備浪人をするということは、試験に一生受からないかもしれないというおそろしい事態が高度に起こりうる環境に足を突っ込むことである、ということです。
道半ばである私に語れることはほとんどないので、この点について有名な記事のURLを引用するにとどめます。
NOA様 司法試験に受からないということー司法試験情報局 https://ameblo.jp/getwinintest/entry-11396070454.html

一方で、出願時大学生・ロー生を除いた方の予備試験合格率がわずか1.5%であることからすると、社会人として予備受験生を続けることがいかに困難であるかも伺えます。
(数字については Schulze様 http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52244744.html 参照)
若者の予備試験合格後の司法試験合格率の高さも、合格後に十分な勉強時間があることを前提にしていると思うと、社会人受験生の方に同様に妥当する議論なのかはいかんとも言えないところです。





以上のことから、予備浪人は、司法試験の受験資格も定職も得られないままとなるリスクを取ることで、集中して予備試験の勉強をする時間を捻出するとともに、学部で予備試験に合格したという肩書きを得る行為である、ということが言えそうです。



5.実際の過ごし方



以上をふまえて、勉強方針については、以下のように考えていました。

多くの受験生が利用し、基準としている参考書(伊藤塾や辰已、アガルートの論証集等)の記述


ぶんせき本等の先輩の答案集
予備校の答練
を、時間が許す限り扱う。
短答は、肢別を用いて45月に集中的に勉強することとして、その期間以外は論文試験対策を行う。
新しい参考書等には極力手を出さない(実際、ほとんどやる時間もありませんでした)。

時期ごとに分けると、概ね次のように過ごしていました。


10
12
辰已法律研究所の予備スタ論(答練)を受講しました。
週ごとに科目が変わるので、そのときの科目を予復習するようにしました。
実際に答案を書かず、答案構成だけを行うという方法もあったかもしれませんが、私は毎週答練会場で答案を書くようにしていました。
スタ論は、相対的に優秀な答案は参考答案として配布されるので、それに掲載されることを目標に学習するようにしていました。

この期間の答練の平均点数は27点ほどでした。

また、新しい教材にチャレンジしやすい期間でもあったので、いくつかの科目で新しい教材を試していました。
憲法判例の射程・行政法のえんしゅう本・民法(改正前)の北大本等です。
いずれも具体的な事例や判例を題材に、それについてどのように考えるかを示すものでした。
そこで、ある事例を前にしてどのように考えるかを試すいい訓練になりました。
一方で、具体的な事例の解決が分かるだけでは学びにしづらいように感じることもありました。
解き終わったのちは、メインに使っていた論証集(辰已法律研究所の趣旨規範ハンドブックを使っていました)に解説の要点を書き込んだり、演習書の要約を作ってぱらぱらと見返せるようにしておきました。

1
週間のうち3日ほどを論証の復旧と旧司法試験過去問を用いた論述の確認・1日を答練の復習・3日を新しいインプットにあてる、というような学習をしていました。


 



予備浪人の一年を通して、一番精神的に負担があったのは、この時期だったように思います。
実際に留年・休学をすることを決意することは、他に選択肢があったか否かに関係なく、かなりエネルギーを使うことでした。
また、身の回りの人がローや他の大学院に進学することを決めていたり、就職を前に学生生活最後の時間を謳歌していたりするのを目の前にして、自分の将来の不透明さに不安が募りました。
私自身は浪人や留年を経験していなかったので、いわゆるストレートでなくなることにも、恐怖がなかったといえば嘘になります。


しかし結果的には、この時期に将来のことを考え、一定の決断を下せた(と自己評価ができた)ことは、以降に心が折れそうなときに支えになりました。
自分が決めたことなのだ、と主体的に進路を決定したと思い込めたことで、最後まで自分の選択に責任を取ろうと奮起して勉強を続けられたと思います。


その頃につけていた日記を読み返していると、当時からそのような明るい予感はあったようでした。

 

「ただ予備試験に落ちただけのことで、人生が終わったかのようなきもちになった。しかし逆に、不合格だったことで、予備試験と、自分の将来と、かえって真剣に向き合うことができるようになったように思う。自らで選択をした以上は、いつか留年をしてでも予備試験にこだわったことを誇れるように勉強をしていきたい。」

 

強がっていた向きも相当にあるのですが、このような思いを胸に抱いて、勉強と向き合うようにしていました。

 




1
3
年が明けてからも、同じように辰已法律研究書の予備スタ論を受講しました。
このときも基本的には学習方針は変わりませんでした。
10
12月のスタ論が毎週1科目ずつ扱われるのに対し、13月のスタ論は本番(公法系・私法系・刑事系のように複数科目が同じ時間の中で行われる)と同様のスケジュールで行われます。
そこで、この時期からは1週間で触れる科目が増えました。
毎週複数の科目に触れるようになるうちに、科目間での差が浮き彫りになってきました。

商法や刑法、実務基礎科目については50点中30点以上の点数が安定して取れるようになり、手応えが生じてきました。

一方、民法等についてはなかなか進展がなく、点数が伸び悩んでいました。

そのような状況だったこともあり、自分が合格できると思える日とそうでない日が交互に訪れて、不安定でした。

全科目での平均点は27点ほどで、秋からあまり伸びない点数でした。

とはいえ、この時期から科目ごとにどのように事例を考え、答案で表現するかあり方が見えてくるようになり、一番実力がついた時期だったと振り返っています。



スタ論中心の学習が2期目だったこともあり、学習予定にはだいぶ余裕がありました。
私は前年度の予備スタ論も受講しており、演習する問題もかなりストックがありました。
そこで、この時期には過去のスタ論の問題の答案構成をし、解説を読むことで問題演習の機会を確保するようにしていました。
同時に、前年に一度は解いていた予備試験の過去問についても、もう一度答案構成をしはじめたのはこの時期でした。



また、この時期あたりから短答の問題を130分ほどだけ解くようにしていました。
とはいえ、前述のとおり、短答は4月から集中して勉強することにしていたため、まだ本格的に扱うという感覚はありませんでした。

この時期は多くの大学は試験期間や冬休みに入っているため、予備浪人をしている人とそうでない人との間で生活の実態に差があるようには見えません。

しかし、このように、4月に短答の勉強をする時間を潤沢に用意できることを前提に、論文の勉強に重きを置くことができる、というように勉強の中身に変化が出ます。

 

 

大学の同期は卒業する年だったので、この頃は卒業旅行シーズンでした。

私も卒業はしませんでしたが、予備浪人を決める前にチケットを取っていたこともあり、混ぜてもらい、計1ヶ月ほど旅行をしていました。

同行者が寝たのちに旧司の答案構成を1時間ほどしたり、飛行機等の移動の間に参考書に目を通したりしながら最低限の勉強は続けていたので、知識が抜け落ちてしまうことはありませんでした。

が、試験対策との兼ね合いではオススメするかはなんとも言えないところです。

期間の長さは勉強の進め具合と要相談だと思います。

 

 

 

4・5月(短答前まで)

大学の前期は休むこととし、予備浪人が名実ともに始まりました。

そして、ここで一気に短答対策に舵を切り始めました。

前年度に短答は受かっていたこともあり、比較的余裕をもって学習ができました。

短答の勉強は4月以降に集中して行うと決めていたこともあり、メリハリをつけて学習ができたと思います。

社会人デビューで慌ただしくも華やかな生活を始めている大学同期たちをSNSで見て焦ってはいなかったと言うと嘘になりそうですが、働きながら勉強を続けるのは相当困難だっただろうな、という気持ちが勝っていました。

 

 

予備浪人を真に肯定的に捉えられるようになったのは、この時期でした。

今までは学校の授業やアルバイト、サークル等が生活のそこそこの割合を占めていました。

2程度のアルバイトは続けていたものの、親や周りの方の協力もあり、生活のほとんどを勉強に注ぐことができました。

期間を限定してインテンシブに目標を見据えて行動する経験があまりなく、かなり有意義な期間だという実感がありました。

周りの誰よりも勉強時間を確保できる、という強みを活用してやろう、と自発的に学習に取り組めていた期間だったと思います。

 

 

 

特に短答の答練等は取らず、過去問を辰已法律研究所の肢別本を通じて学ぶようにしていました。

選択肢単位で勉強しており、問題演習は1500肢を目安にしていました。

一度解いていれば、500肢は4時間程度で解き切ることができたので、残りの時間は論文対策にも通ずるインプットに時間を割くことにしました。

47月はずっと時間に余裕があること、後述の通り67月はとにかく問題を解きまくろうと考えていたことを前提にすると、45月はインプットに集中するのが正しいように思われました。

そこで、判例百選や六法の条文を読み漁り、知識を十全にできるように心がけていました(といっても、今までの穴ぼこだらけの知識を多少補強する、くらいの仕上がりになってしまいましたが)。

特に、民法と会社法の条文をゆっくり引く勉強ができたのは、かなりよかったと思います。

論文の本番でも、民法397条や会社法1344号を意識して答案が書けたのは、この時期に六法を意識的に参照していたからだと思います。

本来六法を積極的に参照するのは当たり前のことですが、自然に実践ができるようになったのは、予備浪人の時期になってからでした。

大量の時間が用意できることで、今まで怠ってきたような習慣づけができるようになりました。

 

そういうわけで、肢別をとき、条文を読み、テキストや判例百選を読み、論文も衰えないように旧司法試験の過去問をパラパラ見る、というのが1日の勉強の内容でした。

 

 

ただどうしても勉強ばかりで人とも会わない時期が続くのは、精神的に負荷がかかりうることだなあと予想していました。

そこで、この時期にジムの契約をし、ほぼ毎日ランニングをするようにしていました。

不思議なことに、早寝早起きをして、脂っこい食事や飲酒は避け、定期的に運動をするという、模範的な生活ができるようになりました。

点数という形以外では自分のなんらかの正しさを確認できない環境だったため、「丁寧な生活をすることができている」と自認できたことは、精神の安定に繋がりました。

 

 

短答の実力をチェックするために、伊藤塾と辰已法律研究所の短答模試は受験しました。

いずれも180点台で、合格できるだろうという自信になりました。

基準はわかりませんが、短答模試でしっかりした点数が取れると直前論文答練の割引がなされる場合があるようなので、目標にするとよさそうです。

 

 

 

試験当日も、緊張しなかったとまでは言いませんが、模試や去年の結果、何より誰よりも時間をかけて準備ができたという自信があり、落ち着いて解くことができました。

結果も、模試通りの180点台となり、高得点とはなりませんでしたが、1ヶ月の準備にしては十分だろうと感じるものになりました。

 

 

5月〜7月(短答後)

短答の自己採点が終わると合否が概ね分かるので、急ピッチで論文試験の準備に取り掛かりました。

早速辰已法律研究所の論文直前答練を用いて、論文答案を書く練習をしました。

冬の間の答練で学んだことや、短答の期間にまとまってインプットできたことがうまく噛み合い、この頃には納得のいく答案が書けることも多くなりました。

答練の平均点は31点ほどとなり、参考答案として掲載されることも複数ありました。

この感覚を得られたことが本番に向けて自信となりました。

 

 

春までの間にインプット教材や過去問等をある程度やりきってしまっていたこともあり、かなり余裕をもって勉強の計画を立てることができました。

具体的には、全科目の過去問の答案構成(一部書き直し)と、自分が書いた全ての答練の復習とをするのに並行して、論証集と旧司法試験を全科目3周ずつすることとしていました。

1810時間ほど勉強することにすると、それでもなお時間があるため、思いきって伊藤塾の直前答練も受講することとしました。

短答発表後に直前答練の奨学生試験があり、そこで7割の免除を得ることができたので、思いきって受講しました。

知人の予備浪人をしている方にも両方の塾で答練を取っている人がちらほらいたため、予備浪人をして時間があるなら答案作成の練習の機会を積極的に用意するのもありなのだろうと考えました。

こちらは平均30点ほどになりました。

点数もさることがながら、多くの問題を書いたというのが自信に繋がりました。

 

 

短答から論文までは60日もなく、くよくよと不安になっている暇もなく過ぎ去っていきます。

そんな中で、1日をフルに勉強のために使いうることがいかに有利なことか痛感することになると思います。

私は4月から続けていたジム通いをこの時期もずっと続けていて、気晴らしも十分に用意することができていました。

 

 

論文模試も伊藤塾と辰已法律研究所の両方で受けました。

いずれも上位30%ほどで、倍率が20%ほどの論文試験を受けることを考えると十分な成績ではなかったと思います。

それでも必要以上に不安になることがなかったのは、誰よりもゆったりとインプット・アウトプットの時間を用意できたという自信があったからです(そろそろ時間があって嬉しい、の言い換えに窮してきました)。

 

 

 

論文当日の手応えはあまりよくありませんでした。

ずっと一緒に勉強をしてきた友人と「来年も頑張るか」などと試験会場で話をしていたのを覚えています。

とはいえ、論文試験をもう一度受けるためだけに過ごしてきた1年間でした。

終わったのちは強い開放感があったのを今も覚えています。

 

 

 

7月〜10(論文後から論文結果発表まで)

予備試験を受けるためだけに時間を費やすと決めて予備浪人をした以上、論文試験が一度終わるとやることが何もなくなります。

気持ちに余裕があれば様々な法律事務所が用意しているサマーインターンや他の業界のインターン等に参加して時間を過ごすのが良いのでしょう。

 

 

私はというと、もう日本語はもう見たくないと思い、英語と大学の教養数学の参考書を買って、法律以外の勉強をして時間を潰していました。

趣味の旅行にも何度も行きました。

予備試験のことを考えなくともよい時間が、本当に愛おしく感じたのを覚えています。

 

 

夏休みの時期には私立ローの受験があるのですが、論文試験の対策をしている人にとってはあまり問題にならないでしょう。

慶應ローだけ受験し、合格しました。

 

 

論文試験の発表の少し前に大学に復学し、後期には授業に通うようになりました。

ここからは予備浪人をしたか否かで他の学生と過ごし方は特に変わらないのですが、心情はかなり異なります。

試験の結果で一年間の覚悟の価値が決まるのだと思うと、なかなかに気持ちが重くなるものです。

発表の前日には正体を失うまで飲んで、合格発表の16時まで寝ていたのを覚えています。

合格を知ったときの安堵は、生涯忘れられないものでした。

 

 

10月・11(論文結果発表後)

論文試験の結果発表から口述試験までは2週間強しかなく、急ピッチで対策をすることとなります。

結果発表までは、慶應ローの前に多少論証を確認した以外には法律からすっかり離れていたため、なかなか慌ただしい日々になりました。

前年以前に予備試験に合格していた知人にお願いし、毎日口述試験の練習をしました。

口述試験の模試は伊藤塾と辰已法律研究所のものを2つを受け、練習をしました。

かなりのプレッシャーがかかり、毎日緊張しづっぱりだったはずですが、本当に一瞬で過ぎてしまうため、あまり記憶に残っていないところです。

 

 

1科目目が会心の出来で、合格を確信して2科目目に挑むことができたため、かなりよい気持ちで試験を終えました。

合格発表も特に緊張せずに迎えられましたが、合格を知り、ずっと応援してくださった方々に報告をしていくうちに感謝の念やら自らの覚悟の価値がわかった喜びやらで、涙が止まらなくなりました。

発表後に学友とともに泣きながら撮った写真は、一生の宝物になりました。

 

 

6.試験結果


実際の試験の結果は、

短答:180点台(500位前後)

論文:270点台(2桁後半位、A4B2C2D1)

口述:120(210)

となりました。

論文は1000位ほど順位が上がり、運もあったといえど一年間の努力の甲斐があったものだと感じられるものとなりました。

 

7.おわりに


予備浪人とはどういうことなのか、どのような一年間になるのかついてイメージが湧いたでしょうか。

来年からの予備試験の形式が変わることや、法曹コースの設置によって、ここに書いたようなことがそのまま妥当しなくなることもあるかもあるでしょう。

それでも、少なくとも今の制度上はそれなりの数の人が現実に選択している予備浪人というあり方について知ってもらえればひとまず幸いです。

 

 

前述の通り、質問箱にまとめて回答したような形をとったものなので、木に竹を接ぐような文になりましたし、その割に内容がないものになってしまっています。

もし何か質問や意見があれば、コメント欄でもツイッター(@abc_sakana)DM等でもよいので、連絡をくださると幸いです。

 

 

未来の予備試験受験生のご武運をお祈りします。



にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加



■予備試験論文のランク
予備試験の論文試験(以下、「予備論文」とします)は、その名の通り論述試験です。
各科目B4表裏両面(一般教養科目のみ片面)の解答用紙が与えられ、解答します。

予備論文は、
○憲法・行政法
○民法・民事訴訟法・商法
○刑法・刑事訴訟法
○一般教養科目
○法律実務基礎科目(民事・刑事)
の2+3+2+1+2=10科目につき試験が行われます。
一つの○で括った科目は同じ時間制限内で解く事になります。
各科目50点で、合計500点満点の試験です。

直近5年の最低点は210→210→235→245→245と推移しており、だいたい半分くらいの点数を全科目でとれば受かるんじゃないか、という気持ちになります。

そこで気になるのが、どれくらいの出来だとこの「だいたい半分くらい」になるのか、ということです。
これに関して、予備試験を主催している司法試験委員会は、二つの面白い資料を毎年出しています。


まず一つ目が「予備論文の各科目の順位ランク」という指標です。
予備論文受験者全員に、受験後に試験結果が開示されるそうなのですが、そこに各科目に相対評価のランクが付されています。
  • A  300位まで
  • B  301位から600位まで
  • C  601位から900位まで
  • D  901位から1,200位まで
  • E  1,201位から1,500位まで
  • F  1,501位以下
このような6段階のランクが全科目についてそれぞれ付けられます。
予備論文の受験人数は2,100±200人くらいで推移していることと併せて考えると、イメージがつくでしょう。

「E、Fランクを取る科目がないようにしろ」というのは予備試験対策で昔から言われていることのようですが、下位900人(母数を2,100人として下位42.9%)に入るな、という意味になりますね。
また、「全科目Cランクを取ると合格する試験である」というのもよく聞く言葉です。これは本当なのでしょうか。



そしてもう二つ目が「司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準について」という資料です。
どのように採点を行なっているかの目安が公表されています。

あくまで目安なのであまり大真面目に捉えると的外れな方向に向かいそうですが、大まかにいうと次のようなことが書いてあります。
  • 全答案を4つに分類すると、以下のような割合になる
04
  • 一人の答案の各小問につき、複数人の採点官により採点がなされ、その平均点が点数となる
  • 採点官ごとの点数差が出ないよう、得点調整がなされる(→小数点以下の点数が生じうる)


一番気になるのはこの「優秀」などの分布に関する情報でしょう。
この分布の情報と、ランクの情報を併せて考えると、いくつかの当たり前の事実に数字がくっついて浮かび上がります。
  • 上位600人(A, Bランク)は上位28.6%を指し、概ね「優秀」「良好」答案と一致する
  • Cランク(601位〜900位)は「一応の水準」答案の上位三分の一と推定される
  • Dランク・Eランクはそれぞれ「一応の水準」答案の中位・下位三分の一と推定される
  • 下位600人(Fランク)は下位28.6%を指し、概ね「不良」答案と一致する
以上のことと、全体の平均点が210点弱だったことを併せて考えると、Cランク答案→25点くらいの答案だと思って読むことができます。
すると例えば全科目Cランク答案の場合は合計250点となり見事合格します。


(追記)なお、この点について具体的に計算をしている方のページを見つけました。
あわせてご参照ください。
(参照: ロボたいしょう様 司法試験予備試験の順位ランクと推定される点数について)




・・・具体的な点数はおいておくとしても、Cランク答案(上位30%〜45%)で全科目揃えると合格可能である という得点観はそう間違っていなさそうです。
A・B・Cランクで揃えるというのは意外と妥当な目標かもしれない、ということが見えてきました。




Cランク答案がどれほどかはわからなくない?という指摘が入りそうですが、世の中には「ぶんせき本」というとても魅力的な過去問集が存在します。
Aランク答案とCランク答案が載っているという参考書です。
このような参考書を用いて相対感を把握していくことになります。

司法試験予備試験論文本試験科目別・A答案再現&ぶんせき本〈平成30年度版(2019年対策)〉
辰已法律研究所
2019-05-01





また、各種予備校が実施している答練を利用することも考えられます。
答練では、他の受験生との比較で自分がどれくらいの位置にいるのかが把握できます。
そのため、絶対的にどの程度問題が解けるかのほかに、相対的に自分がどのような評価がなされるのかを知ることができます。




今日は以上です。ありがとうございました。


にほんブログ村に参加しています。
↓クリックよろしくお願いします。↓
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
    このエントリーをはてなブックマークに追加

このページのトップヘ