0.司法修習までの事前準備

令和3年度司法試験の合格発表がありました。
合格された方はおめでとうございます。
残念な結果になった方で、また試験に挑戦される方は、その挑戦の成功を祈っています。

司法試験の合格発表から司法修習までは、わずか2ヶ月しかなく、さまざまな準備が必要です。
どのような準備をしておけばよいか、いくらか相談を受けたので、その回答を箇条書き風(?)にいくらか書いておきたいとおもいます。
もちろん、修習に関する諸手続を進めておかなくてはならないことは言うまでもないので、特に書いていません。
また、特にまだ経験していない部分がある起案等は、先輩の受け売りが多分に含まれます。

基本的には、Google検索して出てくる諸先輩方の意見と大いに被ります。
そちらもあわせて参照すべきですし、他の修習生が同様の趣旨のことを語り出すことも期待します。



1.修習地への引越しについて

修習の開始までは、概ね次のようなタイムスケジュールになっています。

①10月8日:修習地等が記載された採用内定通知が発送
②11月15日〜12月7日:導入修習(75期はオンライン実施)開始
③12月8日〜13日:移動日(修習は基本なし)
④12月14日:実務修習開始
①あたりで修習地が分かり、実家から通えない距離に修習地がある場合には、遅くとも④実務修習開始までに修習地への引越しが済んでいる必要があります。
一応公式に③移動日が設けられており、その間に引越しをすることも考えられますが、6日間で修習地での生活を立ち上げることができるかは何ともいえないところです。
今年は導入修習がオンラインで実施されることもあり、②導入修習中や、それ以前に修習地に引っ越すこともありえると思います。
私は②導入修習が始まる前に修習地に引っ越しました。身の回りの人は導入修習前後でそれぞれちょうど二分されるような感じだったと思います。

以上のことを踏まえると、引越しに関連して準備をしておくこととしては、
○実務修習地発表前
・いつ引っ越すかを考えておく
・(なんらかの理由で修習地の見通しがつくなら)賃貸情報サイト等で家の希望条件を探しておく
・持っていく物を考えて、引越し代の見積もりを立てる
○実務修習地発表後
・現地に内見に行くかどうかを決め、行くならその段取りを決める
・住民票等の扱いを考える
・(可能なら)同修習地の先輩を探して住むエリアを相談する
・(導入修習前に引っ越し、インターネットが即日使える家でなければ)修習中のオンライン授業を受講するインターネット環境の確保を検討する

あたりがあると思います。

2.修習中の金策について

修習中やその前後には何かとお金がかかります。
その全容を掴んだ上で、今までの貯金と毎月もらえる13.5万円+3.5万円だけでなんとかなるのかどうか、検討しておく必要があります。

○修習関連でかかるお金の代表例
・引越し費用×2
・家賃等、毎月の生活費
・毎日の交通費(弁護士会の都合で裁判所から遠隔地での修習になるような場合でなければ、毎日の修習先への交通費は出されません)
・就活のための交通費
・各種保険の支払い
・弁護士登録費
・修習の翌年に支払う税金(修習中にもらうお金は雑所得です)

これ以外にも、遊興費や書籍代等、毎月変動する出費があるはずです。

○お金の工面について検討すること
・修習専念金(国からの月10万円の無利子の借金)を借りるかどうか
・アルバイトをするか(司法研修所の許可が必要。法律資格系だと許されがちらしい)
・就職先でいつから給料がもらえるか

このあたりのことを検討しておくと、何かと安心な気がします。
私は毎月貯金を切り崩しながら生活していて、大変です。

3.事前課題・即日起案について(事前の予習のことについて)

修習をなんとかやっていくために、どれくらい勉強をしておくかを悩んでいる人が多々いるように思います。
修習での試験関連のトピックとしては、

①10月上旬の白表紙(修習中の教科書類)及び事前課題の発送
②導入即日起案(導入修習中にあるテスト)
③即日起案(各実務修習先及び集合修習でのテスト)
④二回試験

あたりがあるでしょうか。
事前課題とは、導入修習が始まるまでに答案を作成して提出するタイプの課題です。
この事前課題を解くために必要な白表紙が指定されており、これを読まなければ適切な解答は困難です。
逆にいえば、これらの白表紙を読んでおけば、形式的には解答らしい解答が完成します。

白表紙は、あまりに質素なデザインであまり勉強する気にならないというような否定的な意見もあるように思いますが、個人的には必要な内容がぎゅっと詰まったいいテキストが多いように思います。
修習向けの勉強は、白表紙が届いてから、事前課題を解くのに必要な範囲でそれらを通読しておくとスムーズにデビューができますし、それで十分です。
(というとなんだか勉強量が少ないように思えますが、白表紙が届いてからの1ヶ月で、重要なものに絞っても10冊弱の白表紙の内容に目を通すのはけっこう大変です)
配布される白表紙が74期と同じなら、目を通すと有用な白表紙としては、

・新問題研究 要件事実
・紛争類型別の要件事実(73期までは配布されていなかったようですが、74期では配布がありました)
・事例で考える民事事実認定
・プラクティス刑事裁判
・プロシーディング刑事裁判
・刑事事実認定ガイド
・検察終局処分起案の考え方
・検察講義案(これは二回試験でも参照が認められている(はず)なので、他の白表紙ほど暗記が必要という感じはない気がします)
あたりがありそうです。
まずは事前課題を解くのに必要な範囲で目を通して、時間ができたら適宜挙げられているものを読んでいくのでいいと思います。

導入即日起案以降は、試験中の白表紙の参照は、一部の例外を除いてできないので、この中身を頭に叩き込んでいくのが修習向けの学習の第一歩になりそうだ、というのが今のところの所感です。

任官任検を狙っており、起案の成績を確保したい人でなければ、ひとまず白表紙を読んでおけば十分だと思いますが、修習前の段階でもう一歩用意するとしたら、次のような書籍が考えられます。また、予備試験に合格している人なら、予備試験の口述向けの学習がそのまま有効なように思います。
(参照:予備試験口述式試験の対策として行ったこと)
さらに、司法試験レベルの知識は十分な前提で修習のプログラムや起案が進んでいくこともあるので、民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法については、司法試験対策時代の教材を何かしら取っておいてもよさそうです。

ただ、何度も繰り返すように、まずは白表紙をきちんと読み込むことが大事そうです。


以上をふまえて、検討しておくこととして、
○白表紙が届くまで
・司法試験対策の教材のうち、どれを捨てずにおくか
・白表紙が届いてから最低5日間くらい事前課題を検討する日を用意できるかどうか
・予備校の司法修習講座を取るかどうか(基本的には不要です)
○白表紙が届いてから引っ越すまで
・白表紙全部にくわえて、自分が持っていきたい教材はどれか
・六法の準備(二回試験で使用できるのはデイリー六法だが、起案によっては判例六法の使用が認められていることもある)

がとりあえず挙げられそうです。

4.その他


あまり類型化していませんが、その他に検討しておくことを適当に列挙しておくと、
・名刺は必須ではない。が作っておくと親戚とか友人が喜ぶ。私は、実用的な用途では友人の結婚式で交換する場面があり恥をかかずに済んだくらいしか使っていない。
作るなら修習生の名刺を作り慣れているここのサイトがよい。
・修習生の先輩(できれば同じ修習地)を探しておく。修習に関する情報は持っておけば持っておくほどよい。特に、起案に関する情報は代々有用なまとめノートがあったりなかったりするらしい。刑法各論の定義集的なやつ。
あとたぶん74期と75期の修習期間が一部かぶるので、先輩から家電とかをもらえる。
・1年間は本来あっという間だけれどぼーっと過ごすには長い期間なので、何かしら目標があると楽しいかも。「絶対任官するから全部の起案でいい評価をとる」「友だちを100人作る」「修習外の活動でめちゃくちゃ実績を残す」とか、なんでもよい。

・パソコンを持っていなければ、買うべき。少なくとも導入修習と裁判修習は個人のパソコンが使えることを前提にして進む。必要に応じてイヤホンやマイクも購入。




以上です。何か思いついたら加筆をしますし、もっと良いまとめがあればリンクを貼るので74期の方を中心に是非なにか書いてください。
実りある修習になることを願っています。
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