0.予備試験浪人をしました
はじめましての方ははじめまして。そうでない方は再び読んでくださりありがとうございます。
昨年の予備試験の論文式試験を受験してから、あまり考えもまとまらず、特に更新もしないまま一年間が過ぎました。



昨年学部四年として受けた予備試験の論文式試験に不合格となったあと、留年し、二度目の学部四年生(五回生)として再び予備試験を受験していました。
留年をしたのは、民間企業に就職するのではなく専願受験生となることを決意した頃には、法科大学院の入試の出願が不可能になっていたことが主たる理由でした。


幸運なことに、今年の予備試験に最終合格しました。
それを機に、大学の後輩を中心に、予備浪人について話を聞きたいと声を掛けられるようになりました。

また、質問箱にもそれ関連の質問が溜まっていて、全部答えるよりは一つ記事を書く方がまとまってよいな、と考え、いろいろと書いてみることにしました。

 


とりたてて私から言えることがあるわけではないのですが、たしかに予備浪人に関する情報を見つけるのは困難であるように感じます。
一方で、現実には法科大学院(ロー)に進学したり卒業したり就職したりせず、留年の選択をする(余儀なくされる)人は少なくありません。
私自身が大学に残り予備試験を受験する選択をしたのも、同様の選択をした先輩のロールモデルを見ていたからでした。

もし身の回りにそのような選択をする人がいなければ、同様の進路を選択できなかったでしょう。

 


そこで、簡単にではありますが、予備浪人についての私の体験を書いておくことにしました。
「時間ができてよい」「絶望するほど悪くはない」以外のことは特に書いていないのですが、それでもこれから進路を考える方の参考になったり、同様の選択をすることにした方の応援になったりすれば幸いです。


1.定義等


特に定義なく予備浪人という言葉を使っていました。
念頭に置いているのは、「大学四年次に、ローへの進学や就職をすることなく、留年・休学により予備試験を受験することに専念する時間を用意する」状態です。
のちに詳述しますが、定義から明らかなように、予備浪人の最大のメリットは可処分時間が最大となることにあります。
そのため、留年・休学それ自体になんらかの意味があると考えているわけではありません(大学を卒業することを除いているのは、学生の身分を残すことにより就活等になんらかの影響があることを見越してのことですが、現段階ではよくわからないので詳述しませんし、補筆するかもわかりません)
そのような意味では、順調に単位を揃えており、大学にあまり通わないこともできる四年生以下の学部生や、休職している社会人の方等にも参考になる点はあるかもしれません。

また、予備試験に向けた対策によってロー入試の対策も兼ねることができると言われており、私見としてもそう考えるので、予備試験を受験することに専念する、と書きました。
特に留年後にローを受験することを排除する意図ではないので、留意していただければと思います。



また、自発的に予備浪人を選択する人はそう多くなく、この選択肢を意識している方の大半は、希望していた他の選択肢がかなわず、留年等の選択を余儀なくされている状況であると考えています。
そこで、予備浪人をするに至った経緯等についてはこれ以上特に書かず、ローに進学した場合等と比較した場合の予備浪人の特徴を踏まえて、どのような学習をすることにしたかの記録に紙面を割いています。





2〜4は、抽象的で、かつ私見が多分に含まれているので、何を勉強していたのか等が知りたい方は、5以降だけ目を通してくださればいいのかなと思います。
特に、予備浪人を決心した(余儀なくされた)人を激励することを目的としている側面があることから、どちらかというと予備浪人を選択する方に肩入れしている部分があります。
ある程度割り引いて読んでもらえれば、と思います。





2.敗因分析


前提として、私が昨年予備論文に不合格だったときの状態について書いておきます。
私が昨年不合格となったときは、東大の四年生として受験をしていました。
合計点は210点前後で順位は2551人中1000位ほど、成績評価としては、B2つ、C1つ、D1つ、E2つ、F3つでした。
特に公法系と刑事系はふるわず、いずれの科目もEF評価となりました。

悪い評価がついていた科目の評価の理由は明らかで、判例の規範の理解・暗記があいまいで、他の受験生がハッキリと書いていた部分で差をつけられてしまいました。
また、全科目を通じて、規範と事実を分けることも不十分で、いわゆる法的三段論法を意識した記述ができていたとは言えませんでした。
そこで、次の受験までの大きな目標は、規範の正確な暗記と法的三段論法の会得の二つとなりました。
また、自分の試験の手応えと実際の評価の乖離から、この試験は正しいことを書く試験である以上に、相対評価を制する試験なのだと考えるようになりました。




3.予備論文と相対評価について


先に進む前に、予備論文が相対評価の試験であるということをよりよく理解してもらうために、採点方法に関する考察記事のリンクを貼っておきます。

ロボたいしょう様 (司法試験予備試験の順位ランクと推定される点数について http://sitake.seesaa.net/article/470956709.html

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上記はロボたいしょう様が作成された、各科目においてすべて同ランクを取った際の、合格点を基準とした点数の期待値の表です。
例えば10科目につきA(上位300位まで)の評価を受けた場合は、6.5×10=65となり、合計点は合格最低点を65点上回る点数となることが予想される、のように見ることができます。
これを参考にすると、D評価1つがB評価1つに対応する、A評価1つでD評価1つとE評価1つを挽回することができる、といったようなことが考えられそうです。




次に問題となるのは、どれほどの答案を書けばどれほどの位置に来るのか、ということです。
しかし、これは毎年問題が異なるほか、採点主体も受験生も毎年変化するため、明確な基準は立て難いところです。
手がかりとなるのは、
多くの受験生が利用し、基準としている参考書(伊藤塾や辰已、アガルートの論証集等)の記述
ここに書かれていることは受験生が共通して覚えていることとなる
ぶんせき本等の先輩の答案集
受験生の上位の答案や平均的な答案を読みながら、例年の試験の相場観がわかる
予備校の答練
受験生の点数分布が出されるものなら、全体の中での自分の立ち位置がわかる
のような教材や講座です。
不合格になってからは、このあたりの教材を元に、勉強の指針を立てることとしていました。


4.予備浪人の特徴


予備浪人を考えている方にとって、比較する先の選択肢は、ローへの進学大学の卒業就職 あたりではないかと考えています。
それぞれとの比較の中で、予備浪人の特徴に関する私見を書いておきます。



ローへの進学との比較

ローへの進学と比較すると、予備浪人には、

メリット:定期試験対策や授業出席がなく時間が取れる・形式的には学部で予備合格したことになる・(ローで予備試験を受けない場合は)司法試験を早く受けうる

デメリット:履歴書に留年の事実が残る・一回で予備試験に受からなければローで受験する場合と司法試験を受けるタイミングは変わらない(か遅くなる)・ローの授業を受けることができない
といった特徴があります。
特にデメリットの2点目は重要で、次の機会で予備試験に受からなければ、予備試験を受験する人の多くがメリットと感じる「早く司法試験を受けることができる」という利益を享受できなくなることになります。
司法試験を受験できなければ元も子もないので、進学可能なローがあるのに進学しないことは、一般的には、そこそこの賭けだと言ってよいでしょう。


一方で、先ほど掲げたメリットはいずれも魅力的なものです。
それらに強く惹きつけられた場合には、予備浪人をするというのもありなのかもしれません。



まず、定期試験対策や授業出席がなく、試験直前に時間が取れるというのは、あまり指摘されませんが圧倒的なメリットです。
特に、短答の時期にゆっくり時間が取れるのは、かなり強烈なメリットだと考えます。

ローに進学するか留年して学部に残るか考えている方は、ある程度法律の学習を進めており、学部時代の期末試験やロー入試等を経て論文型の試験にも対応できるようになりつつある方なのだろうと思います。
そのため、そのような層の方の中には、論文式試験を受験さえできれば、かなり善戦できる方が多くいるはずです。


しかし、いわゆる上位ローの既習2年の方でも、短答で不合格になってしまう方は少なくありません。
その理由として、論文試験で問われるよりは細かな条文知識等を詰める時期にローのイベントや授業が多くあることがあげられるようです。
たしかにローでの新生活が始まり、他の新入生との交流があるのは避けがたいですし、そのような交流自体は知見を広げてくれる等、法律を学ぶ環境を豊かにする素晴らしいことだと思います。
また、ローでの授業は法的思考力を養う上ではきわめて有意義なものだと伺うことも多く、羨ましいばかりです。
とはいえ、予備試験に合格することになんらかの理由で意義を見出している者にとっては、試験前の学習のペースを乱すものとして、必ずしも有益なだけとは限らない場合もあるのでしょう。

一方で、予備浪人をした場合には、そのような心配はありません。
生活をする上で不可欠なアルバイト等や家事を除けば、試験の直前期にも多くの時間を予備試験の勉強に費やすことができます。
もちろん多くの時間を割けば合格が確実になるというわけでもありませんが、想定外の事態を避けやすくはなるはずです。
また、短答試験直前の4月に集中して短答対策をすることができると分かっていれば、それまでの期間を思い切って論文対策に割くことができる等、学習のペースも掴みやすいはずです。
そこで、先述したような相対評価で負けないようにするために考えられる方策をすべて実践する等のパワープレイも可能になりうるのです。



また、形式的にでも予備試験に学部で合格した者と履歴書に書くことのできることのメリットは、意外と侮れません。
自分の中で留年・休学をしたという事実をどう消化するかは別として、体面は学部合格者と同様に扱ってもらうことができます。
例えば就活の履歴書においては、大学の入学年度と卒業見込み年度しか問われないため、どのタイミングでいかなる理由で留年・休学したかを申告することは求められません。
その状態では、留学や起業等の積極的な理由のために大学を離れていた可能性があるため、留年・休学の一点をもって決定的に悪い評価をされることはないと言っていいでしょう。
また、法律事務所の人事を担当している方は、旧司法試験を受験していた層の方がほとんどです。
その時代は試験を理由とした留年が横行していた環境にあったからか、そういった事情に理解を示してくださる傾向にあるようです。
事実私やまわりの予備浪人をした方もインターンの申し込み等の場面で不利な扱いを受けた形跡はないようで、人事担当の方に同様の話をすると「昔の人みたいだね」と笑って済ませてくださいました。
学部時代の同期で東大ローに進学した方の中には、ローの成績等を加味してかインターンの参加を断られている者もおり、大学での成績を主たる要素として斟酌しないとされている学部合格者とは異なる取り扱いがあるのではないか、とうかがわれることもあります。
(なお、私の法学部でのGPA2.5を切っており、学部成績を重視しているならインターン等に呼ばれるはずがないのです)
また、夏のインターンについては、学部生とロー生とで、募集枠も内容も異なるので、どちらに参加したいか、という点も違いとなりそうです。



このように、ローに進学せず予備浪人をすることにも一定のメリットが存在しないわけではありません。
とりわけ「時間がある」というメリットについては、意識しながら勉強するのが良いと思っています。

(2020.9.27追記 予備浪人と法律事務所就活(質問箱回答))

大学()を卒業し、卒後として予備試験を受ける場合との比較

卒後となることと比べると、予備浪人には、
メリット:学生の身分がある、学部生合格になる
デメリット:学費が一部かかる、留年経験が履歴書上残る
という特徴があります。
生活実態は変わらないので、勉強可能な時間等には大きな違いはないはずです。
そこで、差は学費と外聞(とりわけ就活における)と考えてよいでしょう。

学費については、半期休学が可能な大学であれば、半年分の学費さえ払えばよいことになります。
そこで、半年分の学費で外聞を買う(表現は悪いですが)ことに価値があるかどうかが問題になるでしょう。


・・・が、これに関してはよくわかりません。
「フリーターになって司法試験浪人をしているらしい」というのと、「留年して司法試験を目指しているらしい」というので、どれほどの差があるのかはわかりません。
一つ申し添えておくとすると、この冬の就活イベントで100人ほどの予備試験合格者にお会いしましたが、学部生でもロー生でもない方は、医者をやりながら予備試験に合格した1人の方のみだったという事実があります。
これが何を示すのかはよくわかりませんが、私は予備浪人をすることの方がよいものとして即座に留年・休学届を出したので、あまり参考になることは書けなさそうです。

また、卒後か留年・休学かを問わず存在する予備試験・司法試験の不合格のリスクについては、次のところでも触れています。



就職した場合との比較
就職して予備試験を受験する場合との比較では、予備浪人には、
メリット:試験前に時間が取れる、学部生合格になる、就活をせずに済む
デメリット:学費がかかる、地位が不安定になるリスクを負う(、ローの社会人受験枠を得られない)
という特徴があります。

要するに、勉強に専念する時間を捻出する代わりに地位が不安定になるリスクを負うか、社会人の地位を得る代わりに勉強する時間を限定するか、の二択であるといえます。
他の選択肢と比べると、二つの選択肢で司法試験に対する向き合い方自体が大きく変わることとなります。

この比較から考えてもらいたいのは、予備浪人をするということは、試験に一生受からないかもしれないというおそろしい事態が高度に起こりうる環境に足を突っ込むことである、ということです。
道半ばである私に語れることはほとんどないので、この点について有名な記事のURLを引用するにとどめます。
NOA様 司法試験に受からないということー司法試験情報局 https://ameblo.jp/getwinintest/entry-11396070454.html

一方で、出願時大学生・ロー生を除いた方の予備試験合格率がわずか1.5%であることからすると、社会人として予備受験生を続けることがいかに困難であるかも伺えます。
(数字については Schulze様 http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52244744.html 参照)
若者の予備試験合格後の司法試験合格率の高さも、合格後に十分な勉強時間があることを前提にしていると思うと、社会人受験生の方に同様に妥当する議論なのかはいかんとも言えないところです。





以上のことから、予備浪人は、司法試験の受験資格も定職も得られないままとなるリスクを取ることで、集中して予備試験の勉強をする時間を捻出するとともに、学部で予備試験に合格したという肩書きを得る行為である、ということが言えそうです。



5.実際の過ごし方



以上をふまえて、勉強方針については、以下のように考えていました。

多くの受験生が利用し、基準としている参考書(伊藤塾や辰已、アガルートの論証集等)の記述


ぶんせき本等の先輩の答案集
予備校の答練
を、時間が許す限り扱う。
短答は、肢別を用いて45月に集中的に勉強することとして、その期間以外は論文試験対策を行う。
新しい参考書等には極力手を出さない(実際、ほとんどやる時間もありませんでした)。

時期ごとに分けると、概ね次のように過ごしていました。


10
12
辰已法律研究所の予備スタ論(答練)を受講しました。
週ごとに科目が変わるので、そのときの科目を予復習するようにしました。
実際に答案を書かず、答案構成だけを行うという方法もあったかもしれませんが、私は毎週答練会場で答案を書くようにしていました。
スタ論は、相対的に優秀な答案は参考答案として配布されるので、それに掲載されることを目標に学習するようにしていました。

この期間の答練の平均点数は27点ほどでした。

また、新しい教材にチャレンジしやすい期間でもあったので、いくつかの科目で新しい教材を試していました。
憲法判例の射程・行政法のえんしゅう本・民法(改正前)の北大本等です。
いずれも具体的な事例や判例を題材に、それについてどのように考えるかを示すものでした。
そこで、ある事例を前にしてどのように考えるかを試すいい訓練になりました。
一方で、具体的な事例の解決が分かるだけでは学びにしづらいように感じることもありました。
解き終わったのちは、メインに使っていた論証集(辰已法律研究所の趣旨規範ハンドブックを使っていました)に解説の要点を書き込んだり、演習書の要約を作ってぱらぱらと見返せるようにしておきました。

1
週間のうち3日ほどを論証の復旧と旧司法試験過去問を用いた論述の確認・1日を答練の復習・3日を新しいインプットにあてる、というような学習をしていました。


 



予備浪人の一年を通して、一番精神的に負担があったのは、この時期だったように思います。
実際に留年・休学をすることを決意することは、他に選択肢があったか否かに関係なく、かなりエネルギーを使うことでした。
また、身の回りの人がローや他の大学院に進学することを決めていたり、就職を前に学生生活最後の時間を謳歌していたりするのを目の前にして、自分の将来の不透明さに不安が募りました。
私自身は浪人や留年を経験していなかったので、いわゆるストレートでなくなることにも、恐怖がなかったといえば嘘になります。


しかし結果的には、この時期に将来のことを考え、一定の決断を下せた(と自己評価ができた)ことは、以降に心が折れそうなときに支えになりました。
自分が決めたことなのだ、と主体的に進路を決定したと思い込めたことで、最後まで自分の選択に責任を取ろうと奮起して勉強を続けられたと思います。


その頃につけていた日記を読み返していると、当時からそのような明るい予感はあったようでした。

 

「ただ予備試験に落ちただけのことで、人生が終わったかのようなきもちになった。しかし逆に、不合格だったことで、予備試験と、自分の将来と、かえって真剣に向き合うことができるようになったように思う。自らで選択をした以上は、いつか留年をしてでも予備試験にこだわったことを誇れるように勉強をしていきたい。」

 

強がっていた向きも相当にあるのですが、このような思いを胸に抱いて、勉強と向き合うようにしていました。

 




1
3
年が明けてからも、同じように辰已法律研究書の予備スタ論を受講しました。
このときも基本的には学習方針は変わりませんでした。
10
12月のスタ論が毎週1科目ずつ扱われるのに対し、13月のスタ論は本番(公法系・私法系・刑事系のように複数科目が同じ時間の中で行われる)と同様のスケジュールで行われます。
そこで、この時期からは1週間で触れる科目が増えました。
毎週複数の科目に触れるようになるうちに、科目間での差が浮き彫りになってきました。

商法や刑法、実務基礎科目については50点中30点以上の点数が安定して取れるようになり、手応えが生じてきました。

一方、民法等についてはなかなか進展がなく、点数が伸び悩んでいました。

そのような状況だったこともあり、自分が合格できると思える日とそうでない日が交互に訪れて、不安定でした。

全科目での平均点は27点ほどで、秋からあまり伸びない点数でした。

とはいえ、この時期から科目ごとにどのように事例を考え、答案で表現するかあり方が見えてくるようになり、一番実力がついた時期だったと振り返っています。



スタ論中心の学習が2期目だったこともあり、学習予定にはだいぶ余裕がありました。
私は前年度の予備スタ論も受講しており、演習する問題もかなりストックがありました。
そこで、この時期には過去のスタ論の問題の答案構成をし、解説を読むことで問題演習の機会を確保するようにしていました。
同時に、前年に一度は解いていた予備試験の過去問についても、もう一度答案構成をしはじめたのはこの時期でした。



また、この時期あたりから短答の問題を130分ほどだけ解くようにしていました。
とはいえ、前述のとおり、短答は4月から集中して勉強することにしていたため、まだ本格的に扱うという感覚はありませんでした。

この時期は多くの大学は試験期間や冬休みに入っているため、予備浪人をしている人とそうでない人との間で生活の実態に差があるようには見えません。

しかし、このように、4月に短答の勉強をする時間を潤沢に用意できることを前提に、論文の勉強に重きを置くことができる、というように勉強の中身に変化が出ます。

 

 

大学の同期は卒業する年だったので、この頃は卒業旅行シーズンでした。

私も卒業はしませんでしたが、予備浪人を決める前にチケットを取っていたこともあり、混ぜてもらい、計1ヶ月ほど旅行をしていました。

同行者が寝たのちに旧司の答案構成を1時間ほどしたり、飛行機等の移動の間に参考書に目を通したりしながら最低限の勉強は続けていたので、知識が抜け落ちてしまうことはありませんでした。

が、試験対策との兼ね合いではオススメするかはなんとも言えないところです。

期間の長さは勉強の進め具合と要相談だと思います。

 

 

 

4・5月(短答前まで)

大学の前期は休むこととし、予備浪人が名実ともに始まりました。

そして、ここで一気に短答対策に舵を切り始めました。

前年度に短答は受かっていたこともあり、比較的余裕をもって学習ができました。

短答の勉強は4月以降に集中して行うと決めていたこともあり、メリハリをつけて学習ができたと思います。

社会人デビューで慌ただしくも華やかな生活を始めている大学同期たちをSNSで見て焦ってはいなかったと言うと嘘になりそうですが、働きながら勉強を続けるのは相当困難だっただろうな、という気持ちが勝っていました。

 

 

予備浪人を真に肯定的に捉えられるようになったのは、この時期でした。

今までは学校の授業やアルバイト、サークル等が生活のそこそこの割合を占めていました。

2程度のアルバイトは続けていたものの、親や周りの方の協力もあり、生活のほとんどを勉強に注ぐことができました。

期間を限定してインテンシブに目標を見据えて行動する経験があまりなく、かなり有意義な期間だという実感がありました。

周りの誰よりも勉強時間を確保できる、という強みを活用してやろう、と自発的に学習に取り組めていた期間だったと思います。

 

 

 

特に短答の答練等は取らず、過去問を辰已法律研究所の肢別本を通じて学ぶようにしていました。

選択肢単位で勉強しており、問題演習は1500肢を目安にしていました。

一度解いていれば、500肢は4時間程度で解き切ることができたので、残りの時間は論文対策にも通ずるインプットに時間を割くことにしました。

47月はずっと時間に余裕があること、後述の通り67月はとにかく問題を解きまくろうと考えていたことを前提にすると、45月はインプットに集中するのが正しいように思われました。

そこで、判例百選や六法の条文を読み漁り、知識を十全にできるように心がけていました(といっても、今までの穴ぼこだらけの知識を多少補強する、くらいの仕上がりになってしまいましたが)。

特に、民法と会社法の条文をゆっくり引く勉強ができたのは、かなりよかったと思います。

論文の本番でも、民法397条や会社法1344号を意識して答案が書けたのは、この時期に六法を意識的に参照していたからだと思います。

本来六法を積極的に参照するのは当たり前のことですが、自然に実践ができるようになったのは、予備浪人の時期になってからでした。

大量の時間が用意できることで、今まで怠ってきたような習慣づけができるようになりました。

 

そういうわけで、肢別をとき、条文を読み、テキストや判例百選を読み、論文も衰えないように旧司法試験の過去問をパラパラ見る、というのが1日の勉強の内容でした。

 

 

ただどうしても勉強ばかりで人とも会わない時期が続くのは、精神的に負荷がかかりうることだなあと予想していました。

そこで、この時期にジムの契約をし、ほぼ毎日ランニングをするようにしていました。

不思議なことに、早寝早起きをして、脂っこい食事や飲酒は避け、定期的に運動をするという、模範的な生活ができるようになりました。

点数という形以外では自分のなんらかの正しさを確認できない環境だったため、「丁寧な生活をすることができている」と自認できたことは、精神の安定に繋がりました。

 

 

短答の実力をチェックするために、伊藤塾と辰已法律研究所の短答模試は受験しました。

いずれも180点台で、合格できるだろうという自信になりました。

基準はわかりませんが、短答模試でしっかりした点数が取れると直前論文答練の割引がなされる場合があるようなので、目標にするとよさそうです。

 

 

 

試験当日も、緊張しなかったとまでは言いませんが、模試や去年の結果、何より誰よりも時間をかけて準備ができたという自信があり、落ち着いて解くことができました。

結果も、模試通りの180点台となり、高得点とはなりませんでしたが、1ヶ月の準備にしては十分だろうと感じるものになりました。

 

 

5月〜7月(短答後)
参照:合格年の予備試験短答後の論文向けの勉強計画

短答の自己採点が終わると合否が概ね分かるので、急ピッチで論文試験の準備に取り掛かりました。

早速辰已法律研究所の論文直前答練を用いて、論文答案を書く練習をしました。

冬の間の答練で学んだことや、短答の期間にまとまってインプットできたことがうまく噛み合い、この頃には納得のいく答案が書けることも多くなりました。

答練の平均点は31点ほどとなり、参考答案として掲載されることも複数ありました。

この感覚を得られたことが本番に向けて自信となりました。

 

 

春までの間にインプット教材や過去問等をある程度やりきってしまっていたこともあり、かなり余裕をもって勉強の計画を立てることができました。

具体的には、全科目の過去問の答案構成(一部書き直し)と、自分が書いた全ての答練の復習とをするのに並行して、論証集と旧司法試験を全科目何周もすることとしていました。

1810時間ほど勉強することにすると、それでもなお時間があるため、思いきって伊藤塾の直前答練も受講することとしました。

短答発表後に直前答練の奨学生試験があり、そこで7割の免除を得ることができたので、思いきって受講しました。

知人の予備浪人をしている方にも両方の塾で答練を取っている人がちらほらいたため、予備浪人をして時間があるなら答案作成の練習の機会を積極的に用意するのもありなのだろうと考えました。

こちらは平均30点ほどになりました。

点数もさることがながら、多くの問題を書いたというのが自信に繋がりました。

 

 

短答から論文までは60日もなく、くよくよと不安になっている暇もなく過ぎ去っていきます。

そんな中で、1日をフルに勉強のために使いうることがいかに有利なことか痛感することになると思います。

私は4月から続けていたジム通いをこの時期もずっと続けていて、気晴らしも十分に用意することができていました。

 

 

論文模試も伊藤塾と辰已法律研究所の両方で受けました。

いずれも上位30%ほどで、倍率が20%ほどの論文試験を受けることを考えると十分な成績ではなかったと思います。

それでも必要以上に不安になることがなかったのは、誰よりもゆったりとインプット・アウトプットの時間を用意できたという自信があったからです(そろそろ時間があって嬉しい、の言い換えに窮してきました)。

 

 

 

論文当日の手応えはあまりよくありませんでした。

ずっと一緒に勉強をしてきた友人と「来年も頑張るか」などと試験会場で話をしていたのを覚えています。

とはいえ、論文試験をもう一度受けるためだけに過ごしてきた1年間でした。

終わったのちは強い開放感があったのを今も覚えています。

 

 

 

7月〜10(論文後から論文結果発表まで)

予備試験を受けるためだけに時間を費やすと決めて予備浪人をした以上、論文試験が一度終わるとやることが何もなくなります。

気持ちに余裕があれば様々な法律事務所が用意しているサマーインターンや他の業界のインターン等に参加して時間を過ごすのが良いのでしょう。

 

 

私はというと、もう日本語はもう見たくないと思い、英語と大学の教養数学の参考書を買って、法律以外の勉強をして時間を潰していました。

趣味の旅行にも何度も行きました。

予備試験のことを考えなくともよい時間が、本当に愛おしく感じたのを覚えています。

 

 

夏休みの時期には私立ローの受験があるのですが、論文試験の対策をしている人にとってはあまり問題にならないでしょう。

慶應ローだけ受験し、合格しました。

 

 

論文試験の発表の少し前に大学に復学し、後期には授業に通うようになりました。

ここからは予備浪人をしたか否かで他の学生と過ごし方は特に変わらないのですが、心情はかなり異なります。

試験の結果で一年間の覚悟の価値が決まるのだと思うと、なかなかに気持ちが重くなるものです。

発表の前日には正体を失うまで飲んで、合格発表の16時まで寝ていたのを覚えています。

合格を知ったときの安堵は、生涯忘れられないものでした。

 

 

10月・11(論文結果発表後)

論文試験の結果発表から口述試験までは2週間強しかなく、急ピッチで対策をすることとなります。

結果発表までは、慶應ローの前に多少論証を確認した以外には法律からすっかり離れていたため、なかなか慌ただしい日々になりました。

前年以前に予備試験に合格していた知人にお願いし、毎日口述試験の練習をしました。

口述試験の模試は伊藤塾と辰已法律研究所のものを2つを受け、練習をしました。

かなりのプレッシャーがかかり、毎日緊張しづっぱりだったはずですが、本当に一瞬で過ぎてしまうため、あまり記憶に残っていないところです。

 

 

1科目目が会心の出来で、合格を確信して2科目目に挑むことができたため、かなりよい気持ちで試験を終えました。

合格発表も特に緊張せずに迎えられましたが、合格を知り、ずっと応援してくださった方々に報告をしていくうちに感謝の念やら自らの覚悟の価値がわかった喜びやらで、涙が止まらなくなりました。

発表後に学友とともに泣きながら撮った写真は、一生の宝物になりました。

 

 

6.試験結果


実際の試験の結果は、

短答:180点台(500位前後)

論文:270点台(2桁後半位、A4B2C2D1)

口述:120(210)

となりました。

論文は1000位ほど順位が上がり、運もあったといえど一年間の努力の甲斐があったものだと感じられるものとなりました。

 

7.おわりに


予備浪人とはどういうことなのか、どのような一年間になるのかついてイメージが湧いたでしょうか。

来年からの予備試験の形式が変わることや、法曹コースの設置によって、ここに書いたようなことがそのまま妥当しなくなることもあるかもあるでしょう。

それでも、少なくとも今の制度上はそれなりの数の人が現実に選択している予備浪人というあり方について知ってもらえればひとまず幸いです。

 

 

前述の通り、質問箱にまとめて回答したような形をとったものなので、木に竹を接ぐような文になりましたし、その割に内容がないものになってしまっています。

もし何か質問や意見があれば、コメント欄でもツイッター(@abc_sakana)DM等でもよいので、連絡をくださると幸いです。

 

 

未来の予備試験受験生のご武運をお祈りします。



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