0.質問箱の回答
質問箱に来ていた質問に回答しています。私の質問箱は、以下のリンクにあるのでまたよかったら教えてください。
https://peing.net/ja/abc_examinee
参照:質問箱の利用と記事募集
1.「この点」を使わずに答案を書く

司法試験・予備試験の答案で「この点」という表現を利用する方をよく見ます。
私自身「この点、〜〜」という表現について何か申し上げた記憶はありません(ちゃんと確認していません)が、個人的には書きたい場面が特になかったため、書いたことはないと思います。
特に便利だとも思いません。
というのも、「この点」がどの点なのか分かりづらく、文章の可読性を損ねることが少なからずあると思うためです。
「法を学ぶ人のための文章作法」にも、次のように触れられています。
......「この点」は、特に改行後の段落の冒頭で用いられる際の害は大きい。前の段落の中の、どの文の意味内容を指して「この」であるかがわからなくなる......(同書第1版,2016,p.180)(なお、「法を学ぶ人のための文章作法」は、あの井田良先生と国語教育分野の研究者の先生がタッグを組んで、法律家としての基礎的な文章の書き方を指南している本です。時間があるときに一読してみると、学ぶ点が多いと思います。)
そのため、自分が論じたい重要な内容について、その指示内容が不明瞭になってしまうことを避けるために、論証で「この点」や類似の指示語を使うことを避けていました。
2.なぜ「この点」が広まっているのか・他の答案の型はあるか
もし「この点」という表現が常に害であるなら、これだけよく使われることはないように思います。それでも「この点」が広く使われている理由としては、第一には判例で用いられているというのもあるでしょうが、伊藤塾の講座の参考答案で用いられていることが挙げられるでしょう。
具体的には、事実Aが要件Bにあたるかが問題になるとき、伊藤塾の参考答案では次のような記述がなされることがあります。
1 事実Aが要件B(C条)にあたるか。要件Bの意義が問題となる。このように書く場合、先ほど述べた指示語の内容が分かりづらいという弊害は小さいように思います。
⑴この点につき、C条の趣旨は、〇〇にあるから、要件Bの意義は××と解する。
⑵本件で、事実Aは××であるといえる。
⑶そこで、事実Aは要件Bにあたる。
なぜなら、「この点」という表現で指しているのが「要件Bの意義」であることが明らかだからです。
すると、「この点」という表現を使うことが特に悪いことでないということがいえそうです。
このように書くという枠組みを設けておけば、自動的に法的三段論法が体に染み付いている人のような答案になるので、現場で答案の型を考える負担が軽くなるとも思えます。
しかし、大段落での関心事項は、「事実Aが要件B(C条)にあたるか」の一点です。
そこで、個人的には「要件Bの意義が問題となる」と宣言するのは不自然だと感じます。
(課題点を明示しているともいえるので、一つの書き方だとも思います 好きな方でいいと思います)
1 事実Aが要件B(C条)にあたるか。端的にこのように書いてやれば、大段落で解決すべき点に答えていることになり、字数も節約できます。要件Bの意義が問題となる。
⑴この点につき、C条の趣旨は、〇〇にあるから、要件Bの意義は××と解すべきである。
⑵本件で、事実Aは××であるといえる。
⑶そこで、事実Aは要件Bにあたる。
ぶんせき本(司法試験・予備試験の再現答案集)で合格者の答案をみると、様々な答案の型が見られて勉強になるため、参考にするとよいと思います。
3.一文で理由付けをして答案を書く場合
質問は、一文で理由づけをして答案を書く場合についてでした。一つの答えは、特に接続詞を入れず、下記のように書くことでしょうか。
1 事実Aが要件B(C条)にあたるか。特に接続詞を入れずとも、簡明な記述であれば可読性を損なわないので、気にしなくてよいように思います。
⑴C条の趣旨は、〇〇にあるから、要件Bの意義は××と解すべきである。
⑵本件で、事実Aは××であるといえる。
⑶そこで、事実Aは要件Bにあたる。
また、そもそも一文で理由づけして結論が出るような問題は、主要な論点でないこともありそうです。
そのような場合は、かなり簡潔に書いていたこともあります。
1 C条の趣旨〇〇から、要件Bは××を内容とするところ、事実Aは××であり、要件Bにあたる。特によく使っていたのは、ほとんど配点がなさそうな犯罪の成否を論ずる場面でしょうか。
1 住居権者の意思に反する立ち入りを内容とする「侵入」にあたる甲によるAの承諾なきA宅への立ち入りがなされており、住居侵入罪(刑法130条前段)が成立する。法的三段論法を意識できていると主張できるかギリギリの記述ですが、特に問題とならない点で分量を書いても仕方がないので、十分だと思います。
4.徐々に自分の答案の型を作る
長々と書いていますが、どの程度の記述であれば許されるかは、最初はよくわからないことだと思います。私も結局それを知ることができたとは思いませんが、一定の準備はした上で試験に臨むことができました。
最初のうちは予備校の参考答案を元にしながら、大学やロースクールの授業や試験、予備校の答練等を経て、徐々に自分の答案の型を作っていければ良いのだと思います。

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