0.知財を選択科目にする

司法試験・予備試験(2022年試験から)の選択科目の1つに、知的財産法があります。
私は2020年司法試験の選択科目を知財にして受験しました。


知財は選択科目として一定の人気がある科目ですが、もっともメジャーというわけでもなさそうです。
個人的にはオススメの科目なので、その魅力を伝えられると嬉しいです。



1.選択科目をどう選ぶか

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そもそも、選択科目を選ぶときは、どのようなことを気にすればよいのでしょうか。
よく言われるのは、「自分が興味を持てる科目を選ぶ」という、あまり間違いのなさそうな選び方です。
興味の持ちづらい科目はなかなか勉強が進まず、その科目の特性が活かしきれないことがありえます。
そのため、これは従うべきアドバイスだと思い、私もそのようにしました。


興味を持てる科目が複数あるときに、さらにどのようなことを考慮すべきかについては、あまり説得的な議論に出会うことができませんでした。
そのため、以下のようなことをとりあえず考えていました。


・試験科目としてどのような性質があるかを重視する。
選択科目は、あくまで司法試験で受験する一科目にすぎません。
選択科目について調べていると、就活での影響や実務での重要度のようなことが触れられることがありました。
しかし、司法試験と実務では、各法分野で重要となる内容も異なり、その検討レベルも異なるはずです。
すると、司法試験で特定の科目を選んだからといって実務家としての資質が左右されるようなものではないのだろう、と思うようになりました。
就活での影響については少し心配していたのですが、ESで選択科目を書くことはあったものの、面接等で特に聞かれることもありませんでした。
そこで、特定の法分野に特化した事務所等でなければ、特に考慮しなくてよいのだろう、と考えます。


・受験勉強の環境が整備されていない科目は避ける。
いくら興味があっても、受験で用いる科目なので、勉強が著しく困難な場合には不利益が大きそうです。
そこで、受験者数が極端に少なかったり、教材が豊富でなかったりする科目は避けることにしました。
ただ、これは指導を受けられる先生がいらっしゃったり、意欲的な自主ゼミに参加していたりするような場合には、克服できる点かもしれません。


・利点に見える特徴がある科目も、それが相対評価の試験ではどのように影響するか考える。
司法試験の選択科目の点数のつけ方は、各選択科目の選択者の中で偏差値様の数字を出したのち、全選択科目でちらばりを調整するようなものです。
そこで、「簡単」「暗記量が少ない」といわれるような利点があっても、それはその選択科目を選択した受験生全員が享受する利益であることに注意するようにしました。
つまり、利点に見える特徴が、他の選択者に比べて特に自分にとって有利でなければいけません。

たとえば、暗記量が少ないということは、現場で考えることが多く点数が不安定になりうる、というようなことがありえます。
そのため、現場思考に自信がなければ、必ずしも最適な選択科目でないかもしれない、と考えることができます。


・点数が不安定になりそうで、科目足切りの危険性のある科目は避ける。
選択科目は、他の7法と異なり、その科目単体での科目足切りのある科目です(司法試験のみ)。
そこで、万が一の事故に備えて、点数が安定していそうなものを選びたいと思っていました。


このような視点から、選択科目を選んでいきました。

2.受験科目としての知財の特徴

受験科目としての知財の特徴としては、次のようなことが挙げられると思います。

・条文を用いて設問を解決 / 視野を広く持って条文を探すことになる
知財は、少なくない問題が条文の適用で解決できます。
そこで、多くの場合その要件解釈が適切にできれば、点数に繋がります。
しかし、条文を正しく引けなければ的外れな記述をすることになってしまうため、現場である程度視野を広く持って、適切な条文を探すことが要求される科目だと感じました。


・当てはめがあまりない / 法解釈で勝負することになる
知財は、第1問が特許法、第2問が著作権法の問題になっています。
特許法はその性質上、科学的な素養がなければ認定のできない事実が問題になる事案が少なくありません。
そのような背景からか、当てはめで差がつくような問題は、基本7法と比べると相対的に少ないように感じます。
すると、勝負は自然と法解釈の巧拙でつくことになります。


・ある程度定型的な議論が可能 / 答案を書く分量がかなり多い
特許法であれば特許権、著作権法であれば著作権がその主人公です。
たとえば著作権であれば、著作物性・著作者・支分権・制限規定の4段階が問題になりますが、このいずれにも一定の記述が必要となります。
そのため、この4段階についてそれぞれ考察を加えてやれば、大きく議論が迷子になることは少ない印象です。
一方、刑法ですべての行為について客観的構成要件・主観的構成要件・違法性阻却事由・責任等を論じることを想像してみれば分かると思いますが、かなりの分量となってしまいがちです。


・特許法と著作権法という毛並みの異なる法律を学べる / 試験時間中に頭の使い方が異なる
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(質問ありがとうございます!)
特許法と著作権法は、やや異なる考え方で問題を解くことになります。
そこで、どちらともが苦手ということにはなりづらく、勉強し始めてから決定的に困るということは少ない印象です。
ただ、試験時間中に異なる頭の使い方をすることになりえます。

とはいえ、違いは相対的なものですし(人によってはあまり違いを感じないこともあると思います)、他の選択科目においても起こる程度の差だと思います。
また、刑事訴訟法で捜査法と証拠法の問題を解いて頭が混乱することを懸念する方はいないように、実際に上記のような困り方をすることはないかなあ、と考えます。

3.私がどう選んだか

上記をふまえて、以下のように考えていました。

私が興味を持っていたのは、知的財産法・倒産法・租税法の3科目でした。
このうち、租税法は相対的に人数が少なく、身の回りに頼れる先生もいなかったため、最初に候補から外しました。

知的財産法は、事前に仕入れていた上記の特徴を見るに、特に自分にとって苦になりそうなデメリットがなかったため、選ぶ上での懸念がありませんでした。
一方、倒産法については、私法との関連が強いと聞いており、民法や民事訴訟法の理解にやや不安があった自分が、科目足切りを避けられるかどうかに確信を持てなかったため、避けることにしました。


その上で、他の選択人数が多い科目である労働法・経済法・国際私法についても若干検討しました。

労働法は、やや多い規範を丸暗記しておけば大方対応できると聞いていました。
しかし、私は予備試験で規範を暗記することへの苦手意識があり、積極的に選択するきもちにはなりませんでした。
(参考:できなかったと思って予備試験に受かった・その逆(質問箱回答)


経済法は、ほぼ興味がなかったというのが第一にありますが、問題とすべき条文の選択を間違えるとかなり苦しい戦いを強いられるということを聞いていたのがネックでした。
足切りリスクがあるように感じたためです。
(もっとも今から思えばこれは知財にもややあてはまることのようにも思います。経済法を選ばなかったのは何よりも興味がなかったことが原因のように思います)


国際私法は、暗記量もかなり少なく、簡単に実戦レベルになると聞いていました。
しかし、だからこそ何で勝負がつくのかが不透明で、もしそれが本番のひらめきのようなことであれば、足切りリスクを背負ったり、点数でハンデを背負ったりしかねないと考えました。



このようにして、知財を選択するに至りました。


他科目についての情報はまったく信用に足らないので、選択者の方にチェックしてほしいところです。

4.知財の勉強方法

このようにして選んだ知財の勉強方法については、別途まとめておいたため、参照してみてください。

参照:司法試験の知的財産法の勉強法・予備校講座・基本書と演習書について





以上、知財を選択した話でした。
選択科目を選んでいる方や、知財選択を後悔しそうになっている方等の参考になれば幸いです。



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