予備試験の論文式試験の合格発表が近かったことからすると、今年の予備論文に不合格だった方の投稿なのだと思います。
私も学部4回生の時に受けた予備論文に不合格となり、全てが終わったような気持ちになったことがあるので、なんとなく投稿された方の気持ちが分かるような気がします。
だからこそ、一番受かりたかった時に予備試験に落ちたからといって、全てが終わってしまうわけではない、ということを伝えられれば、と思いました。
投稿の文面からすると、投稿された方は、「四大法律事務所かそれに類する企業法務系事務所への入所を志望しており、その入所には学部予備合格が一番の近道だと思っていたが、それが叶わなかったどころか、若年で司法試験に合格できると思っていたのに想定より時間がかかってしまいそうだ」と思っていそうです。
いくつか慰めになりそうな話を書いてみることにします。
1.「学部予備合格が就活で強い」が真だとしても、「法科大学院に行くと就活に不利」とは限らない
学部予備合格が就活で強いとされていることには争いがないと思います。
だからといって、法科大学院に進学すると(四大)就活に決定的に不利かというと、そういうわけではないはずです。
四大をはじめとする多くの企業法務系事務所はロー生向けのサマーインターンを用意しています。
ロースクールによっては、有名な企業法務系事務所からの寄附講座が提供されていて、そのカリキュラムの一環として受講生に同事務所を訪問する機会を用意していることもあります。
四大のどの事務所も毎年一定の人数のロー卒の人を採用しています。
外資企業法務系事務所の中には公式HPリクルートサイトの弁護士紹介のページで、ロー卒のアソシエイトだけを掲載しているところもあります。
予備試験合格者向けのウィンタークラークには、予備試験に合格したロー生も当然申し込むことができ、このことは予備試験合格の資格ではなくロー卒資格で司法試験を受験する場合も変わりません。
これらのことから、ロー生・ロー修了生を、あなたが志望するような事務所が採用ターゲットとしていることは明らかです。
そのため、法科大学院に進学することになったから、あなたの目標の達成が著しく困難になった、ということはないと言えると思います。
人によっては、ロー生の就活で重視されると言われているGPAを高くすることに長けている等の理由で、むしろスムーズに就活を進められることすらあるのではないかと考えます。
予備試験合格と就活の関係については、西田先生のキャリア本にも複数箇所で触れられています。
2.「学部予備合格」にこだわるなら、それも可能(予備試験浪人をするということ)
とはいえ、大学生活を通じて、私はGPAを高くするような努力にあまり向いていないな、と感じていたため、ロー生としての就活を有利に進められる気があまりしていませんでした。
(直接の理由は別にありましたが、たぶん低GPAでロー生就活をすることへの恐怖が頭の片隅にはあって)私も学部4回生の時にはロー受験をしておらず、留年をして予備試験を受けることにしました。
その時のことは別に書いているので、そちらに任せることとします。
(参照:予備試験浪人をするということ)
学部5回生で予備試験に受かったので、形式的には(形式的にだけ)学部予備合格ということになったのですが、特に留年経験について詰められることもなく、就活で不利に取り扱われたことはないように思います。
また、一番受かりたかった時の予備試験に不合格になった、という失敗体験ともうまく付き合えるようになりました。
そういうわけで、「学部予備合格」ということにこだわるのであれば、別にロー進学をしない手段も存在するので、その手段を選択することも考えられると思います。
一方で、また予備試験に不合格になってしまうリスク等々のことを考えたら、予備試験のためだけに留年をするというのは、かなり思い切りの必要な選択なようにも感じます。
「そこまでじゃないなあ」と感じるなら、気持ちを切り替えて、次の目標に向け、また努力をしていくと良いです。
3.司法試験合格時の年齢が26歳となるのはふつう
司法試験の合格年齢の平均は28歳代です。
また、司法試験の合格者で一番多い属性は、ロー既修修了後1年目合格者です。
学校に通い、試験を受けているうちに20代が半分終わってしまう、ということに一切の不安がないかと言われれば嘘になりますが、そういう試験なので、何も引け目を感じるようなことではありません。
身の回りには、もしかするともっと若くに司法試験に合格した人がいらっしゃるのかもしれないし、そういう経験談ばかりたくさん回ってくるので、「学部予備合格じゃないと遅いのではないか」という感覚に陥ってしまうこと自体は理解できます。
しかし、その感覚は実態とは少しズレているように思います。
客観的な数値としても合格年次としてはまったく遅くありません。
その一方で、学部4年生までに予備試験に合格して、四大をはじめとする名門事務所に入所することが、一般的に語られるエリート像と親和性が高いことも理解します。
特に今まで高学歴等のステータスが高いとされる属性を有していた方は、自分がそのようなエリート像から離れてしまうのではないかという恐怖を感じるのは変なことではないように思います。
しかし、学部4年までに予備試験に合格しなかったくらいで自分の経歴が完全に破綻したと思うのは気が早いように感じますし、そもそも、これを気に自分がエリート街道とされるような経歴にしがみつきたいかどうかをゆっくり考え直すことも手かもしれません。
さらに、合格時の年齢が何歳であろうが、長い目で見れば関係がないということは、修習に来てからよく分かってきました。
業界全体として、そもそもある人が何歳であるかは重視しておらず、修習期で把握しあっているため、誰が何歳で司法試験に合格したか、ということに特段注意を向けていないように思われます。
そういうわけで、仕事の成果物の出来不出来と合格時の年齢が結びつけられて語られるようなこともあまりないのではないかと感じます。
特別な理由で、合格年齢が26歳になることで困ることがあるならまだしも、そうでないのなら、現状を受け入れ、合格を目指して勉強をし、26歳に司法試験の合格発表で自分の受験番号を見られるよう努力していくのが良いのだと思います。
4.では、どうすれば良いのか
先の投稿は、「どうしたらいいのか」と結ばれていたので、どうすればよいのか考えますが、答えはシンプルだと思います。
弁護士になろうという目標が変わらないのであれば、ひとまずは来年の予備試験、再来年以降の司法試験に合格できるように勉強を継続することです。
ロー生になったからといって四大に入る目標が潰えるわけではありませんし、勉強に励んだ人を適切に評価しないような事務所群でもないように思います。
客観的にはなんらまずい状況ではないので、あとは自分の気持ちと折り合いをうまくつけられるかが大事なのだろうと思いますが、これも同じことだと思います。
予備試験への未練は、予備試験や司法試験に合格することで解消するのが手っ取り早いと思うので、来年以降の試験に向け、またゆっくり再起できると良いです。
こうは書くものの、これらのことは簡単なことでは全くないです。
私も、10月上旬に予備論文の不合格を知ってから、当時内定を頂いていた企業に内定辞退を伝えるまでの間、現実でないような気持ちになって、しばらく腑抜けになっていたと思います。
なんとか持ち直したのは、家族や友人に、自分の状況についていろいろと話して、それを聞いてもらえたからです。
その時のことを今も心から感謝していますし、うまく機序を説明できるわけではありませんが、とにかく自分の現状を言葉にして、誰かに聞いてもらうことが、困った状況の打開に有効なように感じます。
身近な人でもいいですし、そういうことを話せそうな人がいないなら、私を含む見知らぬ先輩にでも話を投げてみるといいです。
目標を達成できなかった経験は、なかなか耐え難いものですが、また頑張ろうと思える日が来ることを願っています。
応援しています。
質問箱に来ていた質問に回答しています。
私の質問箱は、以下のリンクにあるのでまたよかったら教えてください。
https://peing.net/ja/abc_examinee
参照:質問箱の利用と記事募集
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