ABCにっき(司法試験受験ブログ)

司法試験合格を目指している受験生のブログです。2019年予備試験合格

カテゴリ: 書評

0.質問箱の回答

質問箱に来ていた質問に回答しています。
私の質問箱は、以下のリンクにあるのでまたよかったら教えてください。
https://peing.net/ja/abc_examinee


参照:質問箱の利用と記事募集

1.個別法の仕組み解釈を得意にしていくには

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司法試験・予備試験の行政法で得点できるかの一つの鍵として、「個別法の仕組み解釈」ができるか否かがありそうです。
が、結局どのような方法で準備をするのが適切かよくわからないまま本番を迎えることになりました。



個人的には、「個別法の仕組み解釈」ができるようになろうとしたというよりは、試験で実際にどのような分析が必要かに着目をして準備をしました。
具体的には、試験で個別法の理解が問われる典型的な場面としては、処分性や原告適格等の訴訟要件、裁量の有無、手続違法の有無、実体違法の有無があります。
たとえば裁量の有無を判断するには、目的規定、根拠法令、処分の性質を示す関連規定を見ればよい、というようなことです。
素材はなんでもよいですが、ひとまず手持ちの事例問題集や、司法試験や予備試験の過去問を用いるので足りると思います(完全独学でも可能だと思います)。


これにくわえて、司法試験や予備試験の事例問題を解くときは、すべての設問について答案構成をしたのちに、まだ使っていない条文で、定義規定や委任規定のように個別法の仕組みとの関わりが薄そうなもの(組織法の理解が問われる問題等、例外もあるのでこう書くのは不適切なのですが)を除いたものがあれば、適宜各設問の構成に振り分けて解いていました。


これは「個別法の仕組み解釈」ができるようになったことにはなっていないため、不十分ですし、そのような自覚もありました。
しかし、この程度の準備で他の受験生に劣らない出来になったので、あまり深追いしないことにしました。
(参考:順位アップ(成績返却、伊藤塾第二回司法試験模試 会場+在宅)



私も「個別法の仕組み解釈」ができるためにはどうしたらよいか悩んで、扱ってみた書籍もありました。
その一つに『重要判例とともに読み解く 個別行政法』がありました。
よく問題となる45件の個別法について、重要判例とともに解説を付した参考書です。
おもしろいなあと思いましたし、個別法の読み方の向上に一定程度寄与しているだろうなとも思いますが、一般的な「個別法の仕組み解釈」の方法が示されたり、それを自分で体得するには至りませんでした。
(また、正直に申し上げればここで扱われている個別法が本番でも出題されるようなラッキーパンチを狙っていましたが、R1予備試験、R2司法試験のどちらでもここ記載の個別法は出題されませんでした。)





このように、「個別法の仕組み解釈」を得意にしていく試みはあまりうまくいかず、ひとまず設問に対応できるような状態を目指したというところで試験がきました。
回答になっているかよくわかりません。


2.えんしゅう本をオススメできるか

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えんしゅう本は周りで使っている人をあまり見ませんでしたが、私は行政法を使っていました。
えんしゅう本は、重要なテーマについて、簡単な(有名判例を簡単にしたような)事例をいくつか選び、その解答筋と解答例が載っているという参考書です。


予備校が出しているような論文の問題集と比べるとそう難しくない問題ですが、重要なテーマについて確認するにはちょうどいい参考書だと思います。
先ほど挙げたようなわりと高度な参考書を読む前に、または読んでいて学習が迷子になってきたときに、基礎的で体系的な理解を確認するのに役立ちました。





とはいえ、体系だって個別のテーマについて問題が並んでいて、役割が被る重問をすでに解いている場合に追加して買うかどうかは悩みどころです。
私は、日頃の論文の学習の題材に旧司の過去問を使っていたため、旧司の過去問が存在しない行政法の学習を補うために採用していました。
今思えば素直に行政法の重問を買っておけばよかったなあというような気がします。
(参考:アガルートアカデミー 重要問題習得講座








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0.知的財産法の勉強方法

司法試験の論文式試験では、全受験生共通の7科目の他に、8科目のうちから1科目を選んで解答する選択科目があります。
私は、選択科目として知的財産法を選びました。
私が受験した年では選択人数にして3位と、根強い人気のある選択科目です。


以前から知的財産法の勉強の仕方について質問があったので、私が用いた講座や書籍について書いておきます。

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後述の通り私は予備校で入門講座や過去問の解説講座を取っていたため、自分の勉強計画について触れたのち、有用そうだと思った書籍について書いてみることとします。



なお、なぜ知的財産法を選択したかについて等は機会があれば別途触れることにします。




1.知的財産法の勉強のタイムライン

予備試験に最終合格した2019年の冬学期に大学で知的財産法の授業を取っていましたが、その講義を受けていたのを除くと、だいたい以下のようなスケジュールで勉強をしていました。


◎11月・12月:アガルートの知的財産法総合講義を聴く・論証集を1周する・演習書を1周読む
11月7日に予備試験の最終合格を確認したので、さっそくアガルートで知的財産法の入門講座を取ることにしました。
私が受験した年には、アガルート以外で知的財産法の満足な入門講義を見つけることができなかったので、迷うことなくアガルートの総合講義の受講を決めました。
勉強しやすく、知的財産法を選択することにしたのならまよわず受講をオススメできる入門講座だと感じました。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 総合講義

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(視聴履歴を見返してみると、11月15日に勉強を開始していました。翌年の8月12日の受験まで、大体9ヶ月ほどの準備期間があったことになります)

論証の講義も、同じくアガルートで取りました。
最後まで同講座の論証集に勉強した内容を書き足していったので、かなり重宝しました。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 論証集の「使い方」

過去問を解くまえに、なにかしら問題集を挟みたかったので、演習ノートを購入しました。
難易度も適当で、初見ではちょうど解けない程度の内容だったので、毎回新しい学びがあり、きわめていい書籍だったと思います。



予備試験に合格すると、その直後の冬に様々な法律事務所が開催しているウィンターインターンに参加することができるため、12月は少しバタバタしていました。
それでも1ヶ月強でインプットをあらかた終えることができたため、よく言われるほどは分量の多い科目ではないように感じます。




◎1月・2月:アガルートの過去問解析を全問見る・辰已の選択科目集中答練を受講する
あらかたインプットを終えたため、さっそく問題を解く機会を増やし始めました。


過去問もアガルートの解説講座を利用しました。
ここまでで書いた3講座のセットがややおトクだったので、セットで購入していたのですが、これもよい講座でした。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 過去問解析講座

過去問は、他にあまり何度も繰り返す用の教材が用意できなかったことから、伊藤塾の問題研究やアガルートの重問のように、何度も答案構成をするための教材として用いることにしていました。


答練としては、辰已の選択科目集中答練を利用しました。
他予備校でも、選択科目の答練を用意しているところはあるのですが、レギュラーの答練に付随して2回分だけ、のような講座が多く、満足できる演習を積むことができないように思えました。
その点、選択科目集中答練は計8回あり、レギュラーの論文答練であるスタ論の2回とあわせて10回の演習の機会を積むことができることから、選択科目に自信がつけられるものと思い、受講しました。

このような状況は他の選択科目についても同様のようで、選択科目集中答練は全科目につき用意されているため、受講を検討するのがオススメです。
参考:辰已法律研究所 選択科目集中答練



3月からの模試に向け、順調に練習ができたように思います。


◎3月以降:論証の聞き込み・答練と演習ノートの復習・過去問の周回
2月までの学習であらかた基礎が完成したため、あとは精度を高めるための学習に徹しました。
具体的には、論証の聞き込みと、すでに解いた問題を何度か解くことにしました。


上述の論証集の「使い方」講座は、受講すると音声データがダウンロードできるため、移動中や休憩中などに永遠に聞いていました。
本番も講師の丸野先生の声が呼び起こされ、そのまま答案に書くことができた箇所もありました。


このように、かなり早期にあらかた対策が終わったため、負担感が少ない科目だったように感じます。


◎8月:上記に加え、気になる点の基本書での確認
直前期には、今まであまりわからないままスルーしていた内容について、1日1トピックをめどに基本書で確認することにしていました。
あまりヤマを張る行為は好きではありませんでしたが、不安なトピックが減っていくというのは安心感に繋がり、悪くない対策だったように思います。


この確認の以前から辞書のように使っていた基本書として、小泉先生のものがありました。
他にも様々な基本書がありましたが、身の回りの受験生も愛用しており自分もかなり有用だと感じていたため、オススメです。



2.成績の推移

このように書いてくると順調に勉強ができていたように見えますが、いかんせんスタートが遅いのでキャッチアップは大変でした。

2月:TKC第1回模試
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(上から点数、偏差値、順位、ランク、全体人数、平均点)

968位/1,695人
最初は平均点を下回るような有様でした。
お世辞にも順調とはいえない状態です。
なお、全て知財以外の選択科目も含めての順位です。

3月:辰已第1回模試
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(上から点数、得点割合、偏差値、順位、全体人数、ランク)

33位/384人
扱っていた教材の復習を終え、他の受験生に遅れを取らないくらいになってきます。


7月:伊藤塾第2回模試
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(上から点数、偏差値、順位、ランク、全体人数、平均点)

40位/596人

一度ある程度完成してからは、他科目の対策に力を入れていたのですが、それでもある程度の順位をキープできました。
条文による解決をする問題が多い知的財産法だからこそ、ある程度時間をおいても、実力が大きく落ちることなくキープできました。


このように、最初は学習開始が早くなくとも、ある程度早期にすでに学習を進めていた人にキャッチアップできる科目であるように感じました。

3.予備校講座を取らない場合のオススメの参考書

私は学習段階で予備校講座を取っていたため、予備校講座を取らない場合に利用できそうな参考書についても触れておきます。


◎入門書
そもそも知的財産法を選択するかどうか迷っているときや、学習初期には、初学者が読むことも想定している入門書を読むことがオススメです。
なお、N様のブログで同趣旨のわかりやすい記事があるため、リンクを貼っておきます。
参考:知的財産法の基本書、演習書等と使用法


同記事でも触れられていますが、有斐閣ストゥディアシリーズはかなりオススメです。
通読しやすい薄さでありながら、司法試験で出題のメインとなる法律論にも一部踏み込んでおり、選択科目としたときのイメージがわかりやすいように思います。



また、個人的には茶園先生の本もオススメです。




いずれも改正対応がイマイチですが、全体像を掴むのには十分でしょう。


◎インプット教材・基本書
上述した小泉先生の基本書が個人的にはオススメです。
というより、ある程度改正を追っているもので受験生が利用する書籍としては他にあまり候補がないような気がします。


◎論証集
市販のものとしては、辰已が出している1冊だけで知的財産法くらいでしょうか。


......が、かなり古く、わざわざこちらを購入する理由は特にないように思います。
少し値が張ってもアガルートの論証集の「使い方」を受講することを強くオススメします。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 論証集の「使い方」 


◎演習書
上述の演習ノートのほかだと、論点解析やロジスティクス知的財産法を愛用している方をよく見ます。
いずれも網羅性がありいい書籍なのですが、古いため改正対応が微妙です。


個人的には演習ノートの方がオススメできるように思います。
小泉先生の基本書を利用する場合、著者が共通するため解説も共通する箇所が多く勉強しやすいです。

4.おわりに

このように、ある程度勉強方法が確立されていて(というより候補が少なくて)、そう長くない期間の勉強で実戦レベルにすることができる、いい科目です。
知財を選択してくれる方が増えると嬉しいですし、その方々にこの記事が参考になっていれば幸いです。





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0.質問箱の回答

質問箱に来ていた質問に回答しています。
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参照:質問箱の利用と記事募集

1.基本刑法ユーザーがなぜ多いか

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基本刑法はかなり根強い人気がある参考書であるように思います。
私も予備口述対策でかなり中心に据えて利用して以降、愛用していました。


魅力はいくつかありますが、まずはその「適度な」網羅性でしょうか。
およそ司法試験・予備試験で問われそうな問題意識(かそれに関連する話題・論点)は網羅されているように思いますし、理解に必要な程度の説明も付されています。
それでいて通読が著しく困難な分量ではないですし、あまりに詳細にすぎると思われるような箇所も目立ちません。
刑法でわからないところがあるときに調べる辞書的な書籍が欲しい、というニーズに、とりあえずは応えてくれるような参考書だと思います。


個人的には、典型事例が載っている点が気に入っていました。
法律の参考書に付されている事例は、往々にして判例になるような限界事例だけが載っていることが多く、ある条文や法律構成が問題となる典型的な場面がどのようなものなのかが見えづらいことがあります。
基本刑法は、典型事例も含めて設問例を載せているところが特徴的で、様々な論点の問題意識がよくわかるようになりました。
(なお、既に購入済みの方にも教えたい小ネタとして、その設問例が無料でダウンロードできることが挙げられます。問題集として便利に使えそうです。参考:日本評論社該当ページ


あとは、ユーザーが多いこと自体がユーザーが多いことの理由になっているようにも思います。
基本刑法が人気の参考書であることから、基本刑法に書いていること以上のことはほとんどの受験生は知らない、として勉強を進めることができます。
そういう意味で、勉強範囲の限界がわかることから、他の受験生に使われている参考書であること自体が人気の理由になっているようにも思います。
(とはいえ、このことは他の有名な参考書にもいえることであるほか、先述の通り網羅性の高い基本刑法の範囲で知識の上限が定まっているということがどれだけの意味を持つのかは、冷静に考えるとあまりよくわかりません)

このことは、以前論文式答案が書けるようになるまでについて触れた下記リンクの記事で触れています。
(参考:司法試験・予備試験の論文式試験の答案が書けるようになるまで(質問箱回答)



これらの利点は他の参考書と比べても秀でていると思いますし、私自身は学習の中心に据えていたわけではなく信憑性は怪しいですが、おそらくは呉先生の教科書と比べてもそうだと言えると思っています。
一方で呉先生の教科書は、予備校本的な良さ(通読することを前提に書かれている、受験生が知りたいと思う情報に特に手の届く構成となっている、等)があり、その点には差がありそうです。



両者は、その性質や役割において重なる面もあれば異なる面もありそうなので、見比べて採用する方を選んだり、勉強のフェーズにあわせて両方を使い分けたりするのでもよさそうに思えます。











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0.法律科目基礎科目(刑事)の対策について

予備試験論文式試験の科目として、法律基礎科目が存在します。
法律基礎科目は全体の2割である100点分を占めます。

法律科目基礎科目は民事系と刑事系からなります。
それぞれが50点分相当の配点からなることになり、他の法律科目と同様の配点であることになります。
そのため、当然他の科目と同様の重要性があると言えるでしょう。
それにもかかわらず、基礎講座が相対的にあまり充実していないからか、他の科目と同等の対策をする受験生はあまり多くないのが実際です。


今回はその刑事系部分(刑事実務基礎、刑実)について書いていきます。
私は刑実を得意にしており、答練や模試でも得点源にしていたこともあり、本番でも最高評価のA評価を得ることができました。
そこで、勉強の参考になることが書ければ幸いです。





1.刑事実務基礎の定石(定石本)

大仰な書き出しでしたが、実質的には「刑事実務基礎の定石」という参考書の書評です。
1冊で特定の科目の対策が終了する参考書はなかなかありませんが、この1冊は後述の通り刑事実務基礎対策のほぼ全てを網羅します。
記事読了後にはぜひ書店等でその内容を確認してみるとよいでしょう。
本記事でも折に触れて引用します(ページ数や記載は初版のものです)。




なお、ちょうど本日(2020年6月23日)に発売となった基本刑事訴訟法も、後述する手続理解等の面で優れていると話題になっています。
私が受験した時点では発売されていなかったため言及は避けていますが、こちらも書店等で確認してみるとよいかもしれません。




2.刑事実務基礎の出題方式・傾向

近年の刑事実務基礎の出題は、大きく分けて①事実に即した条文の適用②刑事手続の仕組みの摘示③法曹倫理の3つからなされます。

【事実】に現れた証拠や事実,手続の経過を適切に把握した上で,法曹三者それぞれの立場から,主張・立証すべき事実,その対応についての思考過程や問題点を解答することを求めており,刑事事実認定の基本構造,刑事手続についての基本的知識の理解及び基礎的実務能力を試すものである。 (令和元年 出題趣旨より)



論文式試験の試験科目となっている刑法・刑事訴訟法と同様、この2つの法律を中心に用いて事例を解決していくこととなります。
それにもかかわらず、刑法・刑事訴訟法という科目とは別に刑事実務基礎が試験科目として用意されているのは、異なる能力が問われているからです。

大ざっぱに比較すると、刑法・刑事訴訟法は、法律科目であることから、事例問題の解決を通して理論面の理解を問うものといえます。
その一方、刑事実務基礎は、「実務」の名を冠するとおり、その実際の適用についての理解を問う傾向にあります。
そのため、試験問題も、事実を適切に条文に当てはめられるか、刑事手続がどのように進むか理解しているかについての設問が並んでいます。

平成27年以降の問題をどれか1年分見てみれば、そのことがわかるでしょう。
(参照:令和元年試験問題)






3.考慮要素の暗記と実践

まず、事実に即した条文の適用ができるようになるには、どのような用意をしていけばよいでしょうか。


試験問題を見れば、たくさんの参考になる事実があるため、これをその場で適宜評価していき、妥当な解決を目指す、という解法もあるでしょう。
実際の事例の解決にあたっては、事実にできる限り向き合う姿勢が重要になるでしょうから、このような態度が間違っているとはいえません。

しかし、試験時間がかなりタイトで、緊張感も高まる本番で安定したパフォーマンスが発揮できるとは限りません。
本番だけうまく力が発揮できずに不合格となるようなことがあってはなりませんから、できる限り不確定要素は排除すべきです。


そこで行うことが考えられる対策が、その条文適用に用いる考慮要素をあらかじめ大方おさえておくことです。


何より具体例を見るのがいいでしょう。
令和元年の刑事実務基礎の設問1の問題文は、以下の通りです。
下線部㋐に関し,裁判官が,Aにつき,刑事訴訟法第207条第1項の準用する同法第81条の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断した思考過程を,その判断要素を踏まえ,具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断する思考過程が問われています。
刑事訴訟法にも刑事訴訟規則にも具体的な思考過程は書いていないため、自分なりに事実を評価して、要件を満たすかどうかを考えていきます。



......というような現場思考の問題ではありません。
このような事実認定の思考枠組みや考慮要素は、あらかた決まっているものです。
具体的には、次のような思考過程を経ることになります。

  1. 罪証隠滅行為の対象
  2. 証拠に対する働きかけの態様
  3. 客観的に罪証隠滅が可能かどうか、実効性があるか
  4. 被疑者に罪証隠滅の意図があるか
これらを順に考えていくこととなっています。


このことを覚えておけば、この問題はかなり機械的に解決できます。
上の4項目について、基礎付ける事実を抜き出して、それぞれ肯定する評価を付すれば終了です。


このように、事実認定の思考枠組みや考慮要素を暗記、ないし意識して理解しておくだけで、事実認定の問題は対処することができます。


とはいえ、あらゆる条文のあらゆる要件に関する考慮要素を暗記することは現実的ではありません。
そこで、ある程度の範囲の限定が必要です。
考えられる範囲の一例として、刑事事実認定重要判決50選や刑事事実認定入門を読む、というような対策があるでしょう。
むろん効果的なのは間違いないでしょうが、簡単に対策ができる、という今回の記事の趣旨からしても、試験対策の意味でも、やや過剰な感が否めません。






そこで、おすすめなのが最初に触れた「刑事実務基礎の定石」です。
この書籍には、重要な事実認定の考慮要素等について端的にまとまっており、かつ過不足ない記述があります。
たとえば先ほどの「罪証隠滅のおそれ」についても、勾留の要件としてですが、記載があります。
過去問に登場する事実認定問題のほとんど(私が記憶する限りではすべて)に適切な解説が載っています。
そして数が多いわけではなく、十分暗記可能な量に厳選されています。



定石本の記載を暗記ないし理解しておけば、事実認定問題については間違いなく他の受験生に負けることのない論述ができるものと考えています。


4.刑事手続の理解

次に、刑事手続に関する問題です。
刑事訴訟法の科目でも、刑事手続の理解は問われますが、どちらかというと法理論面に関する理解が問われるものです。
一方で、刑事実務基礎においては、刑事手続自体への理解が問われる出題が多くなされます。
先ほどの勾留の要件のようなものもあれば、短答でも問われるような公判前整理手続の流れに関する理解や、ときには刑事訴訟規則に関しても記述が求められます。

平成29年の設問3が好例でしょうか。
下線部ⓒに関し,弁護人は,刑事訴訟法第316条の15第3項の「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」を「Vの供述録取書」とし,証拠の開示の請求をした。同請求に当たって,同項第1号イ及びロに定める事項(同号イの「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」は除く。)につき,具体的にどのようなことを明らかにすべきか,それぞれ答えなさい。

刑事訴訟法第316条の2以下は、公判前整理手続に関する条文が並んでいます。
公判前整理手続で設けられている証拠開示手続のうちの一つである、類型証拠開示手続についての理解が問われている問題です。
(その場で要件を見てぼんやり対応することもできるのでしょうが)あらかじめ公判前整理手続の流れについて学んでいることが前提となっている問題であるといえるでしょう。


このように、刑事訴訟の手続に関する規律の理解を問う問題が例年問われています。
これらについて学習することが、主たる対策の一つといえます。


ほかにも、証人尋問に関するルール(多くが刑事訴訟規則で定められています)であるとか、訴因に関連する手続について、理解していることを問うてきます。
このような規定に関する学習は、論文の刑事訴訟法の科目では正面からは問われないことから、テキストで詳細にわたって解説がなされないこともあるでしょう。
また、そのわりには短答でも(ひいては口述でも!)頻出であるため、都度学習しておかったと感じることが多いでしょう。


そこで、簡潔にまとまったテキストを利用するのがオススメです。
刑事実務基礎の定石は、この点についても必要十分な記述があるため、通読して一度条文を確認するだけで、書き負けないだけの知識がつくものと考えます。
短答対策のために、過去問で出てきた知識を単発で暗記するというのではなくて、論文でも使う知識なのだと考え、まとまって学習しておくのがよいのではないかと思います。

5.法曹倫理

最後に、法曹倫理です。
「法曹倫理とは?」となった方も多いかもしれません。
学習用の六法には掲載されていないこともある弁護士職務基本規程に関する理解を問う問題です。
例年民事実務基礎科目か刑事実務基礎科目のいずれかで問われており、一定の対策が必要です。

令和元年の設問4が好例でしょうか。
......A は,「本当は,Vの態度に腹が立って,VやWが言っているとおりの暴行を加えた。しかし,自分は同種前科による執行猶予中なので,もし認めたら実刑になるだろうし,少しでも暴行を加えたことを認めてしまうと,Vから損害賠償請求されるかもしれない。検察官には供述録取書記載のとおり話してしまったが,裁判では,犯行現場にはいたものの,一切暴行を加えていないとして無罪を主張したい。」旨話した。......

......Aの弁護人が無罪を主張したことについて,弁護士倫理上の問題はあるか,司法試験予備試験用法文中の弁護士職務基本規程を適宜参照して論じなさい。
このように、素人目にも弁護士としてどうすればよいのか悩ましいような問題について、弁護士職務基本規程を用いて解決するものです。


まずは、弁護士職務基本規程を手に入れないことには対策がしづらいところです。
検索をして全文を印刷する等の方法が考えられるでしょう。
また、予備試験用六法には付属しているため、これを用いるのもあり得るでしょう。
(参照:司法試験・予備試験用六法の入手・活用)
主要なものだけでいいと割り切るのであれば、概説書にたいてい説明の対象となる条文は引用されているため、それを見るにとどめるのもありかもしれません。


法曹倫理については、たいてい実務基礎科目の講義に付属して講義がなされていると思います。
たとえば、伊藤塾では他の実務基礎科目と名目上は独立した法曹倫理という科目を用意しているものの、単品だけではなくセットでの販売もなされています。
(参照:基礎マスター 法律実務基礎科目(伊藤塾) )


内容としては、だいたいの場合主要な条文について、論点となる話を紹介して終了、のような構成になっているかと思います。
他の科目との重要性から考えると妥当な扱いなのでしょう。
刑事実務基礎の定石においてもおおむね同様の扱いがなされており、有名な論点だけ条文を正しく引いておけるようになっておけば十分なのだなあ、と気がつくと思います。


なんにせよ、多くの時間をかけるのではなく、条文の存在を把握しておき、現場で柔軟に妥当な結論を出してやれればよいことになるでしょう。


民事実務基礎科目でも法曹倫理が出題されることや、ロースクール在学生は授業でも扱うことから差がつきうること、口述試験でも出題範囲となっていることから、そこそこに対策をしたい、と感じる方もいるかもしれません。
私自身はそこまで必要性を感じませんでしたが、一冊くらいケースメソッド系の本を読むのもありなのかもしれません。



6.おわりに


以上の通り、あてはめ、手続の理解、法曹倫理の3つについて理解をする意識でいるだけで終了する科目です。
しかも、なんども申し上げている通り、これは刑事実務基礎の定石を通読するだけで実現する状態です。
ぜひ通読して、即座に得意科目を作り上げてみてください。



実務基礎科目は、対策の方向性がそう複雑でないのに、一般教養科目にならんで対策が遅れがちな科目です。
充実した対策をして、本番を迎える助けができたなら幸いです。



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