ABCにっき

元司法試験受験生、現在LLM準備中の者のブログです。R1予備試験、R2司法試験、弁護士。(一部PRを含みます)

カテゴリ: 書評

0.質問箱の回答

質問箱に来ていた質問に回答しています。
私の質問箱は、以下のリンクにあるのでまたよかったら教えてください。
https://peing.net/ja/abc_examinee


参照:質問箱の利用と記事募集

1.司法試験後に読んだ本でオススメのもの

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あまり読書家ではないので、そんなに幅広い本を読んでいるわけではありませんが、いくつか簡単に紹介します。
テーマはありませんでしたが、弁護士になるにあたって恥ずかしくないように、、、という意識で読んでいた本が多かったと思います。

2.他の選択科目に関する本

選択科目を選ぶ際に迷った他の科目について学んでみたいと思っていたほか、労働法と倒産法についてわかっていないと実務家として話にならないよ!とよく言われていたことから、大枠だけでも学んでおこうと考えていました。
(参考:なぜ司法試験・予備試験の選択科目として知的財産法を選んだか、オススメできるか


まず、私は有斐閣ストゥディアシリーズが大好きなので、有斐閣ストゥディアのものをいくつか読みました。
同シリーズは、初学者を念頭に、各法律の大枠を解説してくれるものです。

労働法と倒産法、環境法については、ストゥディアで読みました。
もちろん実務家としてやっていくためにはこれでは知識は足りないのですが、法律の仕組みがわからずリサーチの第一歩も踏み出せないというような状況は脱せたのではないかな、と信じています。




また、司法試験が終わった段階で興味があった租税法と国際私法については、多くの受験生がするような強度で勉強をしてみたいなと考えていました。
具体的には、租税法については入門用のテキストとして圧倒的に有名なスタンダード所得税法とスタンダード法人税法、演習書として演習ノート租税法を、国際私法については松岡先生の基本書を読みました。



この中だと、スタンダード所得税法が一番印象的なテキストでした。
基本的な枠組みの解説、ポイントの摘示、実例、応用論点等のバランスがあまりに素晴らしく、正直この本が面白かったたために租税法が面白いと感じていただけなのでは?と感じさせれました。


経済法と国際公法については、興味があったのにどういうわけか読み忘れていました。
司法修習中の宿題にしようかな、という気持ちになっています。

3.弁護士としての将来を考えるための本

私は企業法務に携わる弁護士として活躍することをずっと希望していたため、司法試験受験直後からすぐに就活がありました。
そこで、一般的な就活でいう本採用の面接に相当する個別訪問の前後には、企業法務弁護士のキャリアに関連する本についていくつか読んでいました。
また、ちょうど司法試験受験前後に関連する面白いテーマの本が発売されていたため、読みました。

まず、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー -西村あさひ法律事務所の挑戦-』を推薦します。



企業法務とはなんぞや?というイメージが湧いてもいないような状況ではなかなか適切な振る舞いができないことも多いように思うので、著名な先生方の働きについて知るのは、有意義であったように思います。
四大法律事務所の一つである西村あさひ法律事務所の著名なパートナーの先生方が登場するので、同所のプログラムに参加する場合には、より面白く読めそうです。

また、最近話題になっていた良著として、『弁護士になった「その先」のこと。』と『新・弁護士の就職と転職――キャリアガイダンス72講』を推薦します。



この2冊は、弁護士のキャリアについて、どのような点が問題になりうるのか、自分の疑問をかなり氷解させてくれた(または、適切な形で浮かび上がらせてくれた)書籍として、かなりオススメです。
特に後者について、大規模事務所・中小規模事務所・インハウスのそれぞれに属することを考えるにあたっての材料をたくさん得られたので、勉強になりました。

4.世の風潮や自分の疑問と向き合ってみるための本

近年の反知性主義の台頭について、どのように説明ができるのかに興味をもったため、関連する書籍を読んでいました。
厳密には司法試験前に一度読んだものを読み返したものも含まれるので、司法試験後に読んだ本と言えるのかは微妙ですが、面白かったのでシェアをします。

『大衆の反逆(岩波文庫)』『「みんなの意見」は案外正しい』『専門知は、もういらないのか』『ポストトゥルース』の4冊です。




記載の順に書かれていて、それぞれの年代の「大衆」や「専門家でない人たち」がどのように位置付けられていたのか、考察することができました。
これまでの議論の蓄積を楽しむことができ、共通するテーマについて触れながらそれぞれの書籍が示唆に富む結論を提示しており、興味深く読めました。
また、これからの世界がどのように記述されていくのかにも興味が持てる点で、面白い機会でした。
たとえば、00年代を専門家への不信の時代、10年代を専門知に対する反知性主義の台頭の時代と捉えられるのに対して、20年代が正常性への復帰の時代と語られることになるのかどうか、楽しみにしながら生きていけることになります(バイデン大統領の勝利は、そのような文脈で語られることが多くあったように思います)


自分の疑問を起点に、過去の議論についてさらってみることがこれだけ面白いのか、と気付かされる経験になったので、これからも試みようと思います。

5.経済関連の本

日頃読むようなジャンル以外の本を読むことは、幅広い知識を得られることはもちろんですが、そのほかに、異なる語り方に触れられる点でいいなあと感じました。
具体的には、司法試験の学習で用いるような基本書や参考書は、網羅性や体系を重視しており、それぞれの章で一定の内容をじゅんぐりに解説していく、というような書かれ方がしています。



一方で、アメリカの経済学者が書くHarvard Business School Pressの書籍をいくつか読むと、異なる語り口になっていることに気がつきました。
序盤で特定の問いに対して一定の結論を示した上で、それ以降は関連する問題を徹底的に論証していくというような書き方がなされています。
論文ではなく一般書でそのような書かれ方をしている本をあまり読んだことがなかったように思うので、面白く感じました。

上でリンクを貼った『イノベーションのジレンマ』は、内容にも興味を持ちました。
なぜ成功していた企業が適切な判断を積み重ねていく結果として失敗に終わるのか、という直感や文理に反するように思える事態に陥るのか、ということについて、クリアに解説がなされており、爽快な読了感がありました。





書いていて面白かったので、これからもリクエスト(?)があればたまに書いてみようと思います。






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0.質問箱の回答

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参照:質問箱の利用と記事募集

1.『憲法判例の射程』を用いる

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『憲法判例の射程』は、憲法の参考書として定評がありますし、私も気に入っているので、折に触れて紹介している書籍です。
一方、予備校本ではない参考書にはよくあることのように思いますが、参考書で学んだ(はずの)理解をどれだけ答案に反映できるかは、また別の問題のように感じます。
とりわけ、賛否両論がありそうなところですが、憲法の論証集は使えない、といわれるように、そもそも用意しておいた記述がそのままは活かしづらいと言われがちな憲法の参考書なので、なおさらです。
(参考:憲法の論証集は使えないのか)


以前司法試験対策の勉強のところ等でも触れたのですが、私は憲法の見返す教材として、『憲法判例の射程』をまとめたものを使っていたため、その紹介をすることで、回答に代えたいと思います。
(参考:予備試験合格後の司法試験対策の勉強
なお、私が司法試験を受験する前後で、同書の新版である第2版が出ているので、購入時は気をつけてください。
今回引用・要約する際には、特に断りがなければ初版のページ数等を示しています。

2.「憲法判例の射程」へのアプローチ方法

『憲法判例の射程』の紹介は、同書籍がとる判例の射程へのアプローチ方法に関する箇所を引用すれば足りるでしょう。

同書籍は、判例へのアプローチ方法として、メイン型、対比型、通覧型の3つを採用しています。
メイン型とは、「ある問題・論点につき、裁判所の基本的な考え方が明確に示されたと思われる主要な判例の『射程』を、それと関連する他の判例との比較・対比などを通じて明確にするとともに、『限界事例』を明らかにしていくという方法」です(同書9頁)。
対比型とは、「事案や問題構造の類似性にもかかわらず、異なった判断枠組みが用いられた判例を取り上げて、両判例を対比させながら、場合によっては別の判例への言及もしつつ、それぞれの判例が示した判断枠組みが適用される場面を明確にして、その『射程』を明らかにしていく方法」です(同書10頁)。
通覧型とは、「ある憲法上の権利ないし問題領域に関する判例を『通覧』することで、判例の考え方を浮かび上がらせるという方法」です(同書11頁)。


このように、複数の論点について、判例の状況をふまえて、3つのアプローチを用いて解説をしているのが同書籍です。

3.『憲法判例の射程』のまとめ

上記のような同書籍の特徴・アプローチ方法を捉えて、まとめていきました。
具体的には、問題の所在・参考判例の要旨・判例枠組みのまとめを1枚にしていました。

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(同書第6章 選挙権のまとめ)

このように、復習の際には、参考判例を適宜参照しながら、判例枠組みのまとめを読み、適切な判断枠組みとしてどのようなものが挙げられるかを読み返していました。
(なお、このような「判例の立場の批判的吟味やその射程の検討を経ることなくそのまま用いたりする」ようなまとめ方は、同書4頁以下で適切でないものとして触れられているものとも思えます。本書を2,3周読み、一定の理解をした上でこのようにしているのだ、ということで自分の中では落ち着けていました)


具体的には、以下のように、アプローチの手法にあわせて、意識すべき点に注意しながら、まとめていました。
メイン型については、触れられている判例がどのような論理である判断枠組みを提示しているか、違憲審査にあたってはどのような事実に触れるのが適切かをまとめることになります。
画像の選挙権のまとめ(厳密には、問題の所在にもある通り選挙権の行使の制限に関する判断枠組み)は、メイン型の例です。


対比型については、複数の判断(とも思える)枠組みからどのようにいずれかを選ぶことになるかについての考慮要素をまとめることになります。

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(同書第8章 政教分離に関する事案のまとめ)

代表的な例が、目的効果基準と総合考慮基準のいずれによって判断するかを考えるようなものです。

通覧型は、複数の、場面が少し異なる判例がある論点に関するものなので、どのような場面に分けて考えられるかに着目してまとめていました。
代表的な例として、同書第4章の、「個人の私生活上の自由」の保障に関して、情報収集・保管・発信の場面に分けて判例を整理したものがあります。

4.どのように実際の答案に活かすか

このようにまとめられたとして、実際に答案に活かすにはどのようにすればよいでしょうか。

私もあまり詰め切れなかったのですが、一つ活かす方法があると考えています。
それは適切な答案の枠組みを組み立てるための道しるべにすることです。
具体的には、『憲法判例の射程』に紹介されている35の問題意識に関しては、判例について大まかに理解できている状態になっています。(初版では29のみでした、増えた!)
同書で読んだ理解をもとに、まとめたような枠組みで判断すれば足るか、判例との事案の差から異なる枠組みにより判断することか、論ずる用意ができているということです。
少なくとも正しそうな枠組みを提示することができるし、判例との距離から適切な理由づけができれば、司法試験レベルなら通用する憲法論のできあがりです。


あまりだらだらと答案に書くのもどうかと思いつつ、私がはっきりと答案に活かした例を簡単に触れておきます。
たとえばR1予備論文憲法で、目的効果基準と総合考慮基準のいずれを用いるかについて、藤田補足意見と調査官解説について明示して論じ、その点についての評価は知りえませんが、A評価を得ることができました。
R2司法試験論文憲法では、まとめで読み、薬事法判決の文言をそのまま書いた上で、事例にあわせて規範を変えていました。
Aではあったものの、せいぜい上位5~10%くらいの答案かなあと思っています。







このように、まずは判例の枠組みについて、その内容とそれを導いた理由についてしっかり理解するための教材とするのがいいのかな、と考えています。
質問の答えになっているかは怪しいので、また適宜追加で聞いてください。








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0.年末のご挨拶

2020年も終わります。
今年はコロナ禍で、例年とはまったく異なる大変な一年でした。
個人的には司法試験の受験もあり、そういう意味でも記憶に残る一年になりそうです。

年末なので、ブログの大掃除と今年買った司法試験教材で一番よかったものを選んでみることとしました。

1.ブログの大掃除をしました

大掃除といっても、特に過去記事をいじったりはしていません。
カテゴリがだいぶ使いづらくなっていたので、少し整理してみました。
今までは司法試験と予備試験を別カテゴリにしていたのですが、実務基礎や選択科目、一般教養の話をしない限りだいたい重なるので、区分けする必要が薄かった、のようなことがありました。
読んでいる分には特に変化はないと思うのですが、言われてみればこいつそんな話しかしてないな。と感じそうなので、カテゴリの変化を楽しんでみてください(?)

2.個人的ベストバイ

今年は、夏の司法試験受験に向けてそこそこ教材を買い足したのですが、その中にはいくつもいい教材・講座がありました。
どれか一冊を選ぶのはかなり難しいですが、一冊選ぶとしたら憲法演習ノートでしょうか。




今年の司法試験委員だった宍戸先生が編者となっている本です。
きわめて良質な演習問題が21問あり、いずれにも先生方が作成した解答(一部は司法試験の解答として真似るかはなんとも言えないものも含まれますが)がついています。
そして、各問題には、直近の重要判例を題材とした関連問題がついており、素材判例の判旨や解説を読みながら理解を深めることができます。


とりあえず三段階審査をして目的手段基準をしておけば憲法は守れる!のような風潮に、個人的には疑問を持っています。
現時点ではかなり多くの受験生の答案もそうなっているから問題にならなくとも、予備校講義や各種演習書の充実から、そう遠くない将来には、憲法の答案の要求水準は上がっていくのではないかなあと感じています。
憲法演習ノートは、そのような答案のレベルアップに確実に寄与する一冊だと感じており、ぜひ書店で手にとってほしいなあ、と感じます。
(参照:司法試験・予備試験における三段階審査以外の違憲審査の手法

3.おわりに

今年もなかなか大変な一年でした。
読んでくださりありがとうございました。
来年もたまに更新していこうと思うので、またよろしくお願いいたします。






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0.予備試験口述式試験の対策

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かなり気が早いような気がしますが、口述式試験の対策について書いておくことにしました。
私は予備論文の合格発表後から対策をはじめたので、概ね2週間くらいで以下のような対策をしていました。




1.口述の出題内容

口述の出題内容は、例年おおまかには決まっており、
民事:訴訟物・請求の趣旨・要件事実・執行保全の知識・立証方法・法曹倫理
刑事:構成要件の理解・学説対立・刑事手続・法曹倫理
あたりです。

そのため、以上の内容について覚えていきました。

2.民事の対策

まずは、過去問を読み、おおまかな出題内容を把握しました。
あとは、その内容・形式に合わせて回答ができるように暗記を進めるようにしました。

具体的には、訴訟物・請求の趣旨・要件事実の暗記のためには、いわゆる大島本で扱われている内容を全て丸暗記していました。



また、執行保全の知識・立証方法・法曹倫理については、辰已の赤本を利用していました。



このあたりで知識量としては十分だったと思います。
総じて、予備論文の民事実務基礎科目の対策で用いたものを扱ってやれば良いように思いました。

3.刑事の対策

こちらも、まずは過去問を読み、大まかな出題内容を把握しました。
あとは、前述の出題内容についての理解を深められるようにしていきました。


とはいえ、こちらも予備論文の刑事実務基礎科目の対策で用いたものを扱うので基本的には足りました。
(参照:予備試験の刑事実務基礎科目の対策・解き方)
具体的には、刑事実務基礎の定石を読み込むような勉強をしていたように思います。




予備論文向けの対策と異なる対策をした箇所があるとすれば、学説対立が問題となりそうな箇所を重点的に学んだことが挙げられるでしょうか。
口述刑事で問題となりがちな事例問題は、複数の立場から検討すると異なる結論が導かれるようなものが多かったため、そのような対策をすることにしました。
具体的には、基本刑法を用いて主要な学説対立が問題となるトピックを検討しました。
自分があまり詳しく理解していないトピックが書かれた箇所に付箋を貼りながら1周通読をし、あとは付箋の箇所だけ2周目を読む、というように勉強をしました。
(参考:基本刑法ユーザーはなぜ多いか(質問箱回答))


4.模試の受験・合格者との練習

予備口述は不思議な試験で、正しい答えをいかに導くかを求められているかというよりは、適切な受け答えができるかに主眼が置かれているかのように思えます。
すると、上述のような知識の確認ももちろん重要なのですが、それと同等に、法律の会話ができることが重要になります。

私は辰已と伊藤塾の口述模試を受験したほか、昨年度以前の合格者の方に頼んで、2016~2018年の過去問や過去の模試を素材に練習をつけてもらいました。


そんなに予備合格者の知り合いはいないよ、頼みやすい知り合いは少ないよ、と思われるかもしれませんが、予備合格者は皆口述の対策が大変だったことを覚えているため、気前よく練習を受けてくれることが多いのではないかと感じます。





だいたいこのあたりでしょうか。
2週間でできる量はせいぜいこのくらいでしたし、これで十分だったなあと感じています。


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司法試験を終えて、就活も一段落したことで、自分の特徴について再度考えたくなってみました。
そこで、ストレングスファインダーをやってみることにしました。 
参照:クリフトンストレングスオンライン才能テスト


ストレングスファインダーは、自分の強みを知るためのテストとして、定評のあるものです。


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書籍についたクーポンコードを用いるか、上記サイトの「ストア」で購入するかのいずれかの方法で、テストが受けられます。
テストは、よくある性格診断のようなもので、2択のうちより自分に当てはまるものを選択していくものです。
テストに答えると、34の資質や行動アイデアから、自分に当てはまるものを教えてくれます。
私は、2,000円くらいの書籍を買って、それについたクーポンコードを用いて、上位5つの資質や行動アイデアを示してくれるものをやってみました。



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(画像を載せておいて何ですが、恥ずかしいので2位以下を隠してしまいました。)
するとこのように上位5つが提示されます。


自分で自覚している点や、意外な点が見つかって、勉強になりました。
勧められている職業に、目指している弁護士が挙げられていて、ちょっぴりホッとしました。


いい経験になったので、もしよければ是非やってみることをオススメします。





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0.質問箱の回答

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1.個別法の仕組み解釈を得意にしていくには

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司法試験・予備試験の行政法で得点できるかの一つの鍵として、「個別法の仕組み解釈」ができるか否かがありそうです。
が、結局どのような方法で準備をするのが適切かよくわからないまま本番を迎えることになりました。



個人的には、「個別法の仕組み解釈」ができるようになろうとしたというよりは、試験で実際にどのような分析が必要かに着目をして準備をしました。
具体的には、試験で個別法の理解が問われる典型的な場面としては、処分性や原告適格等の訴訟要件、裁量の有無、手続違法の有無、実体違法の有無があります。
たとえば裁量の有無を判断するには、目的規定、根拠法令、処分の性質を示す関連規定を見ればよい、というようなことです。
素材はなんでもよいですが、ひとまず手持ちの事例問題集や、司法試験や予備試験の過去問を用いるので足りると思います(完全独学でも可能だと思います)。


これにくわえて、司法試験や予備試験の事例問題を解くときは、すべての設問について答案構成をしたのちに、まだ使っていない条文で、定義規定や委任規定のように個別法の仕組みとの関わりが薄そうなもの(組織法の理解が問われる問題等、例外もあるのでこう書くのは不適切なのですが)を除いたものがあれば、適宜各設問の構成に振り分けて解いていました。


これは「個別法の仕組み解釈」ができるようになったことにはなっていないため、不十分ですし、そのような自覚もありました。
しかし、この程度の準備で他の受験生に劣らない出来になったので、あまり深追いしないことにしました。
(参考:順位アップ(成績返却、伊藤塾第二回司法試験模試 会場+在宅)



私も「個別法の仕組み解釈」ができるためにはどうしたらよいか悩んで、扱ってみた書籍もありました。
その一つに『重要判例とともに読み解く 個別行政法』がありました。
よく問題となる45件の個別法について、重要判例とともに解説を付した参考書です。
おもしろいなあと思いましたし、個別法の読み方の向上に一定程度寄与しているだろうなとも思いますが、一般的な「個別法の仕組み解釈」の方法が示されたり、それを自分で体得するには至りませんでした。
(また、正直に申し上げればここで扱われている個別法が本番でも出題されるようなラッキーパンチを狙っていましたが、R1予備試験、R2司法試験のどちらでもここ記載の個別法は出題されませんでした。)





このように、「個別法の仕組み解釈」を得意にしていく試みはあまりうまくいかず、ひとまず設問に対応できるような状態を目指したというところで試験がきました。
回答になっているかよくわかりません。


2.えんしゅう本をオススメできるか

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えんしゅう本は周りで使っている人をあまり見ませんでしたが、私は行政法を使っていました。
えんしゅう本は、重要なテーマについて、簡単な(有名判例を簡単にしたような)事例をいくつか選び、その解答筋と解答例が載っているという参考書です。


予備校が出しているような論文の問題集と比べるとそう難しくない問題ですが、重要なテーマについて確認するにはちょうどいい参考書だと思います。
先ほど挙げたようなわりと高度な参考書を読む前に、または読んでいて学習が迷子になってきたときに、基礎的で体系的な理解を確認するのに役立ちました。





とはいえ、体系だって個別のテーマについて問題が並んでいて、役割が被る重問をすでに解いている場合に追加して買うかどうかは悩みどころです。
私は、日頃の論文の学習の題材に旧司の過去問を使っていたため、旧司の過去問が存在しない行政法の学習を補うために採用していました。
今思えば素直に行政法の重問を買っておけばよかったなあというような気がします。
(参考:アガルートアカデミー 重要問題習得講座








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0.知的財産法の勉強方法

司法試験の論文式試験では、全受験生共通の7科目の他に、8科目のうちから1科目を選んで解答する選択科目があります。
私は、選択科目として知的財産法を選びました。
私が受験した年では選択人数にして3位と、根強い人気のある選択科目です。


以前から知的財産法の勉強の仕方について質問があったので、私が用いた講座や書籍について書いておきます。

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後述の通り私は予備校で入門講座や過去問の解説講座を取っていたため、自分の勉強計画について触れたのち、有用そうだと思った書籍について書いてみることとします。



なお、なぜ知的財産法を選択したかについて等は機会があれば別途触れることにします。




1.知的財産法の勉強のタイムライン

予備試験に最終合格した2019年の冬学期に大学で知的財産法の授業を取っていましたが、その講義を受けていたのを除くと、だいたい以下のようなスケジュールで勉強をしていました。


◎11月・12月:アガルートの知的財産法総合講義を聴く・論証集を1周する・演習書を1周読む
11月7日に予備試験の最終合格を確認したので、さっそくアガルートで知的財産法の入門講座を取ることにしました。
私が受験した年には、アガルート以外で知的財産法の満足な入門講義を見つけることができなかったので、迷うことなくアガルートの総合講義の受講を決めました。
勉強しやすく、知的財産法を選択することにしたのならまよわず受講をオススメできる入門講座だと感じました。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 総合講義

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(視聴履歴を見返してみると、11月15日に勉強を開始していました。翌年の8月12日の受験まで、大体9ヶ月ほどの準備期間があったことになります)

論証の講義も、同じくアガルートで取りました。
最後まで同講座の論証集に勉強した内容を書き足していったので、かなり重宝しました。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 論証集の「使い方」

過去問を解くまえに、なにかしら問題集を挟みたかったので、演習ノートを購入しました。
難易度も適当で、初見ではちょうど解けない程度の内容だったので、毎回新しい学びがあり、きわめていい書籍だったと思います。



予備試験に合格すると、その直後の冬に様々な法律事務所が開催しているウィンターインターンに参加することができるため、12月は少しバタバタしていました。
それでも1ヶ月強でインプットをあらかた終えることができたため、よく言われるほどは分量の多い科目ではないように感じます。




◎1月・2月:アガルートの過去問解析を全問見る・辰已の選択科目集中答練を受講する
あらかたインプットを終えたため、さっそく問題を解く機会を増やし始めました。


過去問もアガルートの解説講座を利用しました。
ここまでで書いた3講座のセットがややおトクだったので、セットで購入していたのですが、これもよい講座でした。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 過去問解析講座

過去問は、他にあまり何度も繰り返す用の教材が用意できなかったことから、伊藤塾の問題研究やアガルートの重問のように、何度も答案構成をするための教材として用いることにしていました。


答練としては、辰已の選択科目集中答練を利用しました。
他予備校でも、選択科目の答練を用意しているところはあるのですが、レギュラーの答練に付随して2回分だけ、のような講座が多く、満足できる演習を積むことができないように思えました。
その点、選択科目集中答練は計8回あり、レギュラーの論文答練であるスタ論の2回とあわせて10回の演習の機会を積むことができることから、選択科目に自信がつけられるものと思い、受講しました。

このような状況は他の選択科目についても同様のようで、選択科目集中答練は全科目につき用意されているため、受講を検討するのがオススメです。
参考:辰已法律研究所 選択科目集中答練



3月からの模試に向け、順調に練習ができたように思います。


◎3月以降:論証の聞き込み・答練と演習ノートの復習・過去問の周回
2月までの学習であらかた基礎が完成したため、あとは精度を高めるための学習に徹しました。
具体的には、論証の聞き込みと、すでに解いた問題を何度か解くことにしました。


上述の論証集の「使い方」講座は、受講すると音声データがダウンロードできるため、移動中や休憩中などに永遠に聞いていました。
本番も講師の丸野先生の声が呼び起こされ、そのまま答案に書くことができた箇所もありました。


このように、かなり早期にあらかた対策が終わったため、負担感が少ない科目だったように感じます。


◎8月:上記に加え、気になる点の基本書での確認
直前期には、今まであまりわからないままスルーしていた内容について、1日1トピックをめどに基本書で確認することにしていました。
あまりヤマを張る行為は好きではありませんでしたが、不安なトピックが減っていくというのは安心感に繋がり、悪くない対策だったように思います。


この確認の以前から辞書のように使っていた基本書として、小泉先生のものがありました。
他にも様々な基本書がありましたが、身の回りの受験生も愛用しており自分もかなり有用だと感じていたため、オススメです。



2.成績の推移

このように書いてくると順調に勉強ができていたように見えますが、いかんせんスタートが遅いのでキャッチアップは大変でした。

2月:TKC第1回模試
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(上から点数、偏差値、順位、ランク、全体人数、平均点)

968位/1,695人
最初は平均点を下回るような有様でした。
お世辞にも順調とはいえない状態です。
なお、全て知財以外の選択科目も含めての順位です。

3月:辰已第1回模試
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(上から点数、得点割合、偏差値、順位、全体人数、ランク)

33位/384人
扱っていた教材の復習を終え、他の受験生に遅れを取らないくらいになってきます。


7月:伊藤塾第2回模試
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(上から点数、偏差値、順位、ランク、全体人数、平均点)

40位/596人

一度ある程度完成してからは、他科目の対策に力を入れていたのですが、それでもある程度の順位をキープできました。
条文による解決をする問題が多い知的財産法だからこそ、ある程度時間をおいても、実力が大きく落ちることなくキープできました。


このように、最初は学習開始が早くなくとも、ある程度早期にすでに学習を進めていた人にキャッチアップできる科目であるように感じました。

3.予備校講座を取らない場合のオススメの参考書

私は学習段階で予備校講座を取っていたため、予備校講座を取らない場合に利用できそうな参考書についても触れておきます。


◎入門書
そもそも知的財産法を選択するかどうか迷っているときや、学習初期には、初学者が読むことも想定している入門書を読むことがオススメです。
なお、N様のブログで同趣旨のわかりやすい記事があるため、リンクを貼っておきます。
参考:知的財産法の基本書、演習書等と使用法


同記事でも触れられていますが、有斐閣ストゥディアシリーズはかなりオススメです。
通読しやすい薄さでありながら、司法試験で出題のメインとなる法律論にも一部踏み込んでおり、選択科目としたときのイメージがわかりやすいように思います。



また、個人的には茶園先生の本もオススメです。




いずれも改正対応がイマイチですが、全体像を掴むのには十分でしょう。


◎インプット教材・基本書
上述した小泉先生の基本書が個人的にはオススメです。
というより、ある程度改正を追っているもので受験生が利用する書籍としては他にあまり候補がないような気がします。


◎論証集
市販のものとしては、辰已が出している1冊だけで知的財産法くらいでしょうか。


......が、かなり古く、わざわざこちらを購入する理由は特にないように思います。
少し値が張ってもアガルートの論証集の「使い方」を受講することを強くオススメします。
参考:アガルートアカデミー 知的財産法 論証集の「使い方」 


◎演習書
上述の演習ノートのほかだと、論点解析やロジスティクス知的財産法を愛用している方をよく見ます。
いずれも網羅性がありいい書籍なのですが、古いため改正対応が微妙です。


個人的には演習ノートの方がオススメできるように思います。
小泉先生の基本書を利用する場合、著者が共通するため解説も共通する箇所が多く勉強しやすいです。

4.おわりに

このように、ある程度勉強方法が確立されていて(というより候補が少なくて)、そう長くない期間の勉強で実戦レベルにすることができる、いい科目です。
知財を選択してくれる方が増えると嬉しいですし、その方々にこの記事が参考になっていれば幸いです。





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0.質問箱の回答

質問箱に来ていた質問に回答しています。
私の質問箱は、以下のリンクにあるのでまたよかったら教えてください。
https://peing.net/ja/abc_examinee


参照:質問箱の利用と記事募集

1.基本刑法ユーザーがなぜ多いか

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基本刑法はかなり根強い人気がある参考書であるように思います。
私も予備口述対策でかなり中心に据えて利用して以降、愛用していました。


魅力はいくつかありますが、まずはその「適度な」網羅性でしょうか。
およそ司法試験・予備試験で問われそうな問題意識(かそれに関連する話題・論点)は網羅されているように思いますし、理解に必要な程度の説明も付されています。
それでいて通読が著しく困難な分量ではないですし、あまりに詳細にすぎると思われるような箇所も目立ちません。
刑法でわからないところがあるときに調べる辞書的な書籍が欲しい、というニーズに、とりあえずは応えてくれるような参考書だと思います。


個人的には、典型事例が載っている点が気に入っていました。
法律の参考書に付されている事例は、往々にして判例になるような限界事例だけが載っていることが多く、ある条文や法律構成が問題となる典型的な場面がどのようなものなのかが見えづらいことがあります。
基本刑法は、典型事例も含めて設問例を載せているところが特徴的で、様々な論点の問題意識がよくわかるようになりました。
(なお、既に購入済みの方にも教えたい小ネタとして、その設問例が無料でダウンロードできることが挙げられます。問題集として便利に使えそうです。参考:日本評論社該当ページ


あとは、ユーザーが多いこと自体がユーザーが多いことの理由になっているようにも思います。
基本刑法が人気の参考書であることから、基本刑法に書いていること以上のことはほとんどの受験生は知らない、として勉強を進めることができます。
そういう意味で、勉強範囲の限界がわかることから、他の受験生に使われている参考書であること自体が人気の理由になっているようにも思います。
(とはいえ、このことは他の有名な参考書にもいえることであるほか、先述の通り網羅性の高い基本刑法の範囲で知識の上限が定まっているということがどれだけの意味を持つのかは、冷静に考えるとあまりよくわかりません)

このことは、以前論文式答案が書けるようになるまでについて触れた下記リンクの記事で触れています。
(参考:司法試験・予備試験の論文式試験の答案が書けるようになるまで(質問箱回答)



これらの利点は他の参考書と比べても秀でていると思いますし、私自身は学習の中心に据えていたわけではなく信憑性は怪しいですが、おそらくは呉先生の教科書と比べてもそうだと言えると思っています。
一方で呉先生の教科書は、予備校本的な良さ(通読することを前提に書かれている、受験生が知りたいと思う情報に特に手の届く構成となっている、等)があり、その点には差がありそうです。



両者は、その性質や役割において重なる面もあれば異なる面もありそうなので、見比べて採用する方を選んだり、勉強のフェーズにあわせて両方を使い分けたりするのでもよさそうに思えます。











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0.法律科目基礎科目(刑事)の対策について

予備試験論文式試験の科目として、法律基礎科目が存在します。
法律基礎科目は全体の2割である100点分を占めます。

法律科目基礎科目は民事系と刑事系からなります。
それぞれが50点分相当の配点からなることになり、他の法律科目と同様の配点であることになります。
そのため、当然他の科目と同様の重要性があると言えるでしょう。
それにもかかわらず、基礎講座が相対的にあまり充実していないからか、他の科目と同等の対策をする受験生はあまり多くないのが実際です。


今回はその刑事系部分(刑事実務基礎、刑実)について書いていきます。
私は刑実を得意にしており、答練や模試でも得点源にしていたこともあり、本番でも最高評価のA評価を得ることができました。
そこで、勉強の参考になることが書ければ幸いです。





1.刑事実務基礎の定石(定石本)

大仰な書き出しでしたが、実質的には「刑事実務基礎の定石」という参考書の書評です。
1冊で特定の科目の対策が終了する参考書はなかなかありませんが、この1冊は後述の通り刑事実務基礎対策のほぼ全てを網羅します。
記事読了後にはぜひ書店等でその内容を確認してみるとよいでしょう。
本記事でも折に触れて引用します(ページ数や記載は初版のものです)。




なお、ちょうど本日(2020年6月23日)に発売となった基本刑事訴訟法も、後述する手続理解等の面で優れていると話題になっています。
私が受験した時点では発売されていなかったため言及は避けていますが、こちらも書店等で確認してみるとよいかもしれません。




2.刑事実務基礎の出題方式・傾向

近年の刑事実務基礎の出題は、大きく分けて①事実に即した条文の適用②刑事手続の仕組みの摘示③法曹倫理の3つからなされます。

【事実】に現れた証拠や事実,手続の経過を適切に把握した上で,法曹三者それぞれの立場から,主張・立証すべき事実,その対応についての思考過程や問題点を解答することを求めており,刑事事実認定の基本構造,刑事手続についての基本的知識の理解及び基礎的実務能力を試すものである。 (令和元年 出題趣旨より)



論文式試験の試験科目となっている刑法・刑事訴訟法と同様、この2つの法律を中心に用いて事例を解決していくこととなります。
それにもかかわらず、刑法・刑事訴訟法という科目とは別に刑事実務基礎が試験科目として用意されているのは、異なる能力が問われているからです。

大ざっぱに比較すると、刑法・刑事訴訟法は、法律科目であることから、事例問題の解決を通して理論面の理解を問うものといえます。
その一方、刑事実務基礎は、「実務」の名を冠するとおり、その実際の適用についての理解を問う傾向にあります。
そのため、試験問題も、事実を適切に条文に当てはめられるか、刑事手続がどのように進むか理解しているかについての設問が並んでいます。

平成27年以降の問題をどれか1年分見てみれば、そのことがわかるでしょう。
(参照:令和元年試験問題)






3.考慮要素の暗記と実践

まず、事実に即した条文の適用ができるようになるには、どのような用意をしていけばよいでしょうか。


試験問題を見れば、たくさんの参考になる事実があるため、これをその場で適宜評価していき、妥当な解決を目指す、という解法もあるでしょう。
実際の事例の解決にあたっては、事実にできる限り向き合う姿勢が重要になるでしょうから、このような態度が間違っているとはいえません。

しかし、試験時間がかなりタイトで、緊張感も高まる本番で安定したパフォーマンスが発揮できるとは限りません。
本番だけうまく力が発揮できずに不合格となるようなことがあってはなりませんから、できる限り不確定要素は排除すべきです。


そこで行うことが考えられる対策が、その条文適用に用いる考慮要素をあらかじめ大方おさえておくことです。


何より具体例を見るのがいいでしょう。
令和元年の刑事実務基礎の設問1の問題文は、以下の通りです。
下線部㋐に関し,裁判官が,Aにつき,刑事訴訟法第207条第1項の準用する同法第81条の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断した思考過程を,その判断要素を踏まえ,具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断する思考過程が問われています。
刑事訴訟法にも刑事訴訟規則にも具体的な思考過程は書いていないため、自分なりに事実を評価して、要件を満たすかどうかを考えていきます。



......というような現場思考の問題ではありません。
このような事実認定の思考枠組みや考慮要素は、あらかた決まっているものです。
具体的には、次のような思考過程を経ることになります。

  1. 罪証隠滅行為の対象
  2. 証拠に対する働きかけの態様
  3. 客観的に罪証隠滅が可能かどうか、実効性があるか
  4. 被疑者に罪証隠滅の意図があるか
これらを順に考えていくこととなっています。


このことを覚えておけば、この問題はかなり機械的に解決できます。
上の4項目について、基礎付ける事実を抜き出して、それぞれ肯定する評価を付すれば終了です。


このように、事実認定の思考枠組みや考慮要素を暗記、ないし意識して理解しておくだけで、事実認定の問題は対処することができます。


とはいえ、あらゆる条文のあらゆる要件に関する考慮要素を暗記することは現実的ではありません。
そこで、ある程度の範囲の限定が必要です。
考えられる範囲の一例として、刑事事実認定重要判決50選や刑事事実認定入門を読む、というような対策があるでしょう。
むろん効果的なのは間違いないでしょうが、簡単に対策ができる、という今回の記事の趣旨からしても、試験対策の意味でも、やや過剰な感が否めません。






そこで、おすすめなのが最初に触れた「刑事実務基礎の定石」です。
この書籍には、重要な事実認定の考慮要素等について端的にまとまっており、かつ過不足ない記述があります。
たとえば先ほどの「罪証隠滅のおそれ」についても、勾留の要件としてですが、記載があります。
過去問に登場する事実認定問題のほとんど(私が記憶する限りではすべて)に適切な解説が載っています。
そして数が多いわけではなく、十分暗記可能な量に厳選されています。



定石本の記載を暗記ないし理解しておけば、事実認定問題については間違いなく他の受験生に負けることのない論述ができるものと考えています。


4.刑事手続の理解

次に、刑事手続に関する問題です。
刑事訴訟法の科目でも、刑事手続の理解は問われますが、どちらかというと法理論面に関する理解が問われるものです。
一方で、刑事実務基礎においては、刑事手続自体への理解が問われる出題が多くなされます。
先ほどの勾留の要件のようなものもあれば、短答でも問われるような公判前整理手続の流れに関する理解や、ときには刑事訴訟規則に関しても記述が求められます。

平成29年の設問3が好例でしょうか。
下線部ⓒに関し,弁護人は,刑事訴訟法第316条の15第3項の「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」を「Vの供述録取書」とし,証拠の開示の請求をした。同請求に当たって,同項第1号イ及びロに定める事項(同号イの「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」は除く。)につき,具体的にどのようなことを明らかにすべきか,それぞれ答えなさい。

刑事訴訟法第316条の2以下は、公判前整理手続に関する条文が並んでいます。
公判前整理手続で設けられている証拠開示手続のうちの一つである、類型証拠開示手続についての理解が問われている問題です。
(その場で要件を見てぼんやり対応することもできるのでしょうが)あらかじめ公判前整理手続の流れについて学んでいることが前提となっている問題であるといえるでしょう。


このように、刑事訴訟の手続に関する規律の理解を問う問題が例年問われています。
これらについて学習することが、主たる対策の一つといえます。


ほかにも、証人尋問に関するルール(多くが刑事訴訟規則で定められています)であるとか、訴因に関連する手続について、理解していることを問うてきます。
このような規定に関する学習は、論文の刑事訴訟法の科目では正面からは問われないことから、テキストで詳細にわたって解説がなされないこともあるでしょう。
また、そのわりには短答でも(ひいては口述でも!)頻出であるため、都度学習しておかったと感じることが多いでしょう。


そこで、簡潔にまとまったテキストを利用するのがオススメです。
刑事実務基礎の定石は、この点についても必要十分な記述があるため、通読して一度条文を確認するだけで、書き負けないだけの知識がつくものと考えます。
短答対策のために、過去問で出てきた知識を単発で暗記するというのではなくて、論文でも使う知識なのだと考え、まとまって学習しておくのがよいのではないかと思います。

5.法曹倫理

最後に、法曹倫理です。
「法曹倫理とは?」となった方も多いかもしれません。
学習用の六法には掲載されていないこともある弁護士職務基本規程に関する理解を問う問題です。
例年民事実務基礎科目か刑事実務基礎科目のいずれかで問われており、一定の対策が必要です。

令和元年の設問4が好例でしょうか。
......A は,「本当は,Vの態度に腹が立って,VやWが言っているとおりの暴行を加えた。しかし,自分は同種前科による執行猶予中なので,もし認めたら実刑になるだろうし,少しでも暴行を加えたことを認めてしまうと,Vから損害賠償請求されるかもしれない。検察官には供述録取書記載のとおり話してしまったが,裁判では,犯行現場にはいたものの,一切暴行を加えていないとして無罪を主張したい。」旨話した。......

......Aの弁護人が無罪を主張したことについて,弁護士倫理上の問題はあるか,司法試験予備試験用法文中の弁護士職務基本規程を適宜参照して論じなさい。
このように、素人目にも弁護士としてどうすればよいのか悩ましいような問題について、弁護士職務基本規程を用いて解決するものです。


まずは、弁護士職務基本規程を手に入れないことには対策がしづらいところです。
検索をして全文を印刷する等の方法が考えられるでしょう。
また、予備試験用六法には付属しているため、これを用いるのもあり得るでしょう。
(参照:司法試験・予備試験用六法の入手・活用)
主要なものだけでいいと割り切るのであれば、概説書にたいてい説明の対象となる条文は引用されているため、それを見るにとどめるのもありかもしれません。


法曹倫理については、たいてい実務基礎科目の講義に付属して講義がなされていると思います。
たとえば、伊藤塾では他の実務基礎科目と名目上は独立した法曹倫理という科目を用意しているものの、単品だけではなくセットでの販売もなされています。
(参照:基礎マスター 法律実務基礎科目(伊藤塾) )


内容としては、だいたいの場合主要な条文について、論点となる話を紹介して終了、のような構成になっているかと思います。
他の科目との重要性から考えると妥当な扱いなのでしょう。
刑事実務基礎の定石においてもおおむね同様の扱いがなされており、有名な論点だけ条文を正しく引いておけるようになっておけば十分なのだなあ、と気がつくと思います。


なんにせよ、多くの時間をかけるのではなく、条文の存在を把握しておき、現場で柔軟に妥当な結論を出してやれればよいことになるでしょう。


民事実務基礎科目でも法曹倫理が出題されることや、ロースクール在学生は授業でも扱うことから差がつきうること、口述試験でも出題範囲となっていることから、そこそこに対策をしたい、と感じる方もいるかもしれません。
私自身はそこまで必要性を感じませんでしたが、一冊くらいケースメソッド系の本を読むのもありなのかもしれません。



6.おわりに


以上の通り、あてはめ、手続の理解、法曹倫理の3つについて理解をする意識でいるだけで終了する科目です。
しかも、なんども申し上げている通り、これは刑事実務基礎の定石を通読するだけで実現する状態です。
ぜひ通読して、即座に得意科目を作り上げてみてください。



実務基礎科目は、対策の方向性がそう複雑でないのに、一般教養科目にならんで対策が遅れがちな科目です。
充実した対策をして、本番を迎える助けができたなら幸いです。



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