0.予備試験・司法試験論文答練の採点・添削

予備試験・司法試験を受けるにあたり、論文式試験に向けての練習の機会が重要なのは、明らかです。
そしてその練習の機会として予備校が提供しているのが、答練(答案練習会)です。


予備試験・司法試験の両方で有名な答練として、伊藤塾と辰已法律研究所のものがあります。
基本的には自分が基礎講座(法律の基本的な知識を学ぶ講座)を受けた予備校で答練も受ける人が多いようですが、両者にはそこそこに差があります。
私は縁あって両方の答練を参加したため、その簡単な比較ができれば幸いです。


論文答練の比較シリーズのうちの一記事です。
(参照: 論文答練は取るべき?比較・おすすめ(司法試験・予備試験))
今回は、一旦答練の採点や添削に絞って紹介・比較します。






1.比較対象・内容

伊藤塾と辰已にはそれぞれ独自の有名な答練が存在します。
伊藤塾はコンプリ(コンプリート論文答練)、辰已にはスタ論(スタンダード論文答練)と呼ばれるものが有名です。
それらをはじめとするそれぞれの答練について比較してみることにしましょう。


前提として、いずれの答練も添削や採点は人によりけりで、コメントの内容等も予備校間で差があるというよりは、添削者ごとに異なるというような印象です。
そこで、添削内容や採点自体を比較しようにも、予備校間の差を感じることはあまりありません。

そのため、今回は採点の制度を比較していくこととします。


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人生で初めて書いた予備試験型の答練の添削です(赤字)。とても丁寧なコメントをくださり、奮起したのを覚えています。

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一方、到底真面目に読んでいるとは思えないようなものもあります。予備校ごとに悪名高い採点者がおり、そこは答練のリスクともいえるところなのかもしれません。


2.辰已(スタンダード論文答練等)の特徴

まずは、辰已法律研究所の答練の採点表です。
辰已の答練の採点表の特徴は、とにかく細かい採点項目が決まっていることです。

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(規範定立・具体的なあてはめの両点において具体的な検討内容が示されています。2019年度スタンダード論文答練より)

写真のように、1点単位で採点基準が細かく定められています。
そのため、採点者ごとの裁量があまりなく、機械的に点数が出される傾向にあるのが特徴といえるでしょう。
また、自分でも容易に自己採点ができるのが特徴であるほか、辰已の採点表に沿って日頃の答案構成をすることが可能になるため、緻密な答案構成ができるようになる効果も見込めるでしょう。


予備試験型であれば50点満点中40点分の採点基準が用意されており、残りの10点のうち5点が基礎点、もう5点が裁量点となっています。
司法試験型であればいずれもが倍になります。
裁量点の部分で、採点表で拾いきれなかった加点要素を加味することもあり、個別の点数調整がなされるようになっています。


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(模範解答と異なる解答筋に対して1+2点が与えられている。2020年スタンダード論文答練より)

厳密に採点表が用意されているとはいえ、硬直的な採点がなされるとは限らず、このように別筋の解答が一切評価されないわけではありません。
ただし、採点者によってこのような採点を行うかどうかには差があるようで、あまり柔軟でない採点に不満を感じる方はいるかもしれません。


このように、厳密な採点基準が用意されているのが強みである一方、個別の事情をどこまで斟酌してくれるかわからない点に弱みがあると言いうるでしょう。

3.伊藤塾(コンプリート論文答練等)の特徴

次に、伊藤塾の答練の採点表です。
伊藤塾の答練の採点表の特徴は、ファジーな採点基準と双方向性にあります。

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(配点がおおざっぱに振られています。また、自己評価(黒ペン)と採点者評価(赤ペン)がABCの3段階でなされています。司法試験過去問答練より)

論点単位で配点が振られており、それぞれの配点が大きいことがわかります。
例として出したのが司法試験過去問でしたが、予備試験においても同様です。
どのような記載により減点・加点がされたかが一見してはわかりませんが、実際には個別の事情を書いたか否かで採点されているとは限らず、本番の採点に即しているとの見方もあるでしょう。

予備試験型であれば50点満点中30点分の採点基準が用意されており、残りの20点のうち10点が基礎点、もう10点が裁量点となっています。
司法試験型であれば100点満点中70点分の採点基準が用意されており、残りの30点のうち10点が文章表現力、10点が答案構成力、もう10点が裁量点です。
このように、採点全体を通して採点者の裁量を重視しており、採点者の個性が色濃く出ることとなります。


もう一つの特徴が自己評価を答案と一緒に提出すると、採点者評価が付されて返却されることです。
画像のように、ABCの3段階で自己評価・採点者評価がなされます。
これにより自分が書けたと思っている主観とどのように書けているのかの客観の差が浮き彫りとなり、復習のきっかけとなります。

4.比較

採点の制度には概ね上記のような特徴がありました。
厳密な辰已と、裁量の伊藤塾、というようなところでしょうか。
採点の内容がはっきりとわかることを重視する場合は辰已、様々な解答筋を多様に認めてもらいたい場合は伊藤塾、というように傾向の差が生じるところでしょう。

また、双方向性を重要視したい場合には伊藤塾にすることも考えられますが、コメントを書き込んでおくと辰已においても添削の内容としてコメントが返されることがあるため、ここについてはあまり差がなさそうです。

5.おわりに

上記のように、採点の制度を見るだけで両答練の態度の差が浮かび上がってきます。
また折に触れて他の観点からの比較も試みてみることとします。

読んでくださりありがとうございました。


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